患者が来ないクリニック|共通する5つの原因と集患立て直しの順番

この記事の結論

  • 集患不振は新患・再診・単価の3つに分解して原因を特定する
  • 多くは広告不足ではなく再診が続いていないことが原因
  • 立て直しは院内→既存患者→地域連携→広告の順番で進める

「患者が来ない」――開業して半年が過ぎても待合室に空席が目立つ、あるいは以前は混んでいたのに最近は明らかに減っている。クリニック経営のご相談の中で、私のもとに最も多く届くのがこのお悩みです。先に結論をお伝えします。患者が来ないクリニックの原因は、おおむね5つに整理できます。そして手を打つ順番が決まっており、ここを間違えて広告費から投じてしまうと、資金だけが減っていきます。私は現役の整形外科医として診療を続けながら、複数の法人経営と病院・クリニックの経営改善のお手伝いをしております。その現場で繰り返し見てきたことを、順番に沿ってお伝えします。

目次

集患不振とは何か|「患者が来ない」を3つに分解する

集患不振とは、想定していた来院数に実際の患者数が届かず、診療収入が損益分岐点を下回り続けている状態を指します。漠然と「患者が来ない」と捉えている限り、打ち手は決まりません。私はご相談を受けたとき、まず次の3つに分解していただいております。

診療収入は、おおまかに「新患数 × 再診の継続 × 患者単価」の掛け算で決まります。この3つのうちどこが欠けているかによって、やるべきことは全く違います。新患が月に5人しか来ていないのか、新患は40人来ているのに2回目の来院が半分以下なのか、来院数は十分でも1人あたりの単価が低いのか。ここを切り分けずに「集患対策」と一括りにしてしまうことが、遠回りの始まりだと考えております。

実際に数字を拝見すると、新患はそれなりに来ているのに次につながっていない、というケースが少なくありません。この場合、広告を増やしても穴の空いたバケツに水を足すことになります。

よくある受け止め方

患者が来ないのは、宣伝が足りないからだ。まず広告とホームページに投資しよう。

月に数十万円の広告費が固定費として積み上がりやすい

私が実際に多く見る形

新患は届いている。しかし初診の体験に課題があり、2回目以降が続いていない。

まず院内を直すほうが、費用をかけずに効果が出やすい

患者が来ないクリニックに共通する5つの原因

※写真はイメージです

私が経営改善に関わる中で、開業後に患者が来ないとご相談をいただくクリニックには、共通した原因が見られます。5つに整理し、それぞれ「症状の出方」と「最初の一手」を並べました。

原因 症状の出方 最初の一手
1. 認知不足 新患が極端に少ない。地域住民が存在を知らない Googleビジネスプロフィールの整備、内覧会・看板の見直し
2. 立地と診療時間のズレ 特定の曜日・時間帯だけ空いている 生活動線の再確認、平日夜間・土曜枠の検討
3. ネット上の情報が薄い・古い 院名で検索されても選ばれない 診療時間・駐車場・待ち時間・院長の考えを明記
4. 院内体験の問題 新患は来るが再診が続かない 待ち時間、受付対応、説明時間の実測と改善
5. 診療内容と地域ニーズのズレ 周囲の年齢構成・疾患構成と診療内容が合っていない 商圏の人口動態と近隣医療機関の役割を確認

原因1・2は「開業前の設計」が尾を引く

開業して患者が来ないというご相談のうち、立地と診療時間に起因するものは、開業前の設計段階でほぼ決まっています。駅からの距離ではなく、その地域の方が普段どう動いているか。買い物、通勤、送り迎え、その動線の途中にあるかどうかが効いてきます。すでに開業されている場合は立地は動かせませんので、診療時間と駐車場、入口の視認性で埋めていくことになります。

原因3は今日から直せる

費用をかけずに最も早く改善できるのがここです。診療時間が古いまま、休診情報が反映されていない、駐車場の有無が書かれていない。この3点だけでも、来院を検討していた方を取りこぼしている可能性があります。なお、医療機関のウェブサイトや広告は医療広告ガイドラインの対象です。体験談や治療前後の写真の扱いには制約がありますので、表現に迷う場合は行政や専門家にご確認いただくのが安全です。

原因4が、実は最も大きい

私の見立てでは、開業から1年以上経っても患者が増えないクリニックの多くは、ここに理由があります。待ち時間が長い、受付の対応が事務的、説明が短くて不安が残る。医師は診察室の中しか見えませんので、待合室で何が起きているかを把握できていないことが珍しくありません。院長とスタッフの関係が良好でない場合、この問題は表面化しないまま進みます。

原因を切り分ける3つの数字と、開業後の目安

感覚ではなく数字で切り分けます。毎月必ず確認していただきたいのは、次の3つです。

  1. 新患数:月あたり何人の初診があったか。前年同月と比較する
  2. 再診継続率:初診の方のうち、2回目の来院につながった割合
  3. 1日平均患者数:診療日数で割った実数。曜日別・時間帯別にも分ける

この3つに加えて患者単価まで見ると、収入がどこで詰まっているかがほぼ特定できます。単価については診療単価を上げる正しい方法|算定漏れを防ぐ5つのチェックで詳しく触れておりますので、来院数は悪くないのに収入が伸びない方はそちらもご覧ください。毎月見る数字の並べ方はクリニック経営の指標7つ|毎月見る数字表の作り方にまとめております。

開業からの経過月数と1日平均患者数(目安)

開業1〜3ヶ月10〜15人
4〜6ヶ月15〜20人
7〜12ヶ月20〜30人
2年目以降30〜40人

標榜科・立地・競合状況で大きく変わるため、あくまで目安です。私がご相談を受ける一般的な外来クリニックの水準感を示したものであり、統計値ではありません。

開業3ヶ月で20人に届かないことをもって「失敗した」と判断される院長先生がいらっしゃいますが、立ち上がりには時間がかかります。焦って判断せず、前月比で増えているか、増え方が鈍っていないかを見ていただくほうが実態に近いと考えております。

集患を立て直す順番|院内から始めて広告は最後

※写真はイメージです

ここが本題です。患者が来ないときに広告から着手すると、費用が増えるだけで改善しないことが多くあります。私がお勧めしているのは、費用がかからず効果が早い順に進める方法です。

  1. 院内体験を実測する
    受付から会計までの所要時間を1週間分計測します。待ち時間が30分を超える時間帯があれば、そこが離脱の発生点です。スタッフに「患者さんからよく言われること」を聞き取るだけでも、多くの情報が出てきます。
  2. 既存患者の再診を守る
    次回予約の声かけ、慢性疾患の方への受診間隔の説明、中断された方への案内。新患を1人増やすより、通っていた方に戻っていただくほうが、はるかに手間も費用も少なく済みます。
  3. ネット上の情報を最新にする
    診療時間、休診日、駐車場、対応疾患、院長の考え方。ここは今日中に手を付けられます。地図情報の写真が古いままになっていないかも確認してください。
  4. 地域とのつながりを作る
    近隣の医療機関、薬局、介護事業所、学校や企業。紹介の関係は時間がかかりますが、最も安定した流入経路になります。なお、紹介に対して金銭を支払う形は法規に触れますので、あくまで診療内容と情報共有で信頼を積む形にしてください。
  5. 最後に広告を検討する
    1〜4を終えてなお新患が足りない場合に限り、広告を検討します。この順番なら、広告で来た方が定着する土台ができています。

開業後に患者が来ない時期を、資金でどう乗り切るか

集患の立て直しには時間がかかります。院内改善が数字に表れるまで、私の実感では3ヶ月から6ヶ月ほどはかかります。その間に資金が尽きてしまえば、正しい打ち手も続けられません。

ですから患者が来ないと感じた時点で、集患と同時に資金の残り時間を確認していただきたいのです。手元資金が月々の支出の何ヶ月分あるか。金融機関への相談は、資金が減りきってからでは条件が厳しくなります。黒字化までの期間感についてはクリニック開業は何年目で黒字か|黒字化期間の目安と分岐点にまとめておりますので、今のご自身の位置を確認する材料にしていただければと思います。

なお、診療報酬や各種制度は改定によって変わります。2026年時点の情報をもとにお伝えしておりますが、実際の算定や届出は最新の改定内容をご確認ください。

今週中に確認していただきたいチェックリスト

最後に、明日から手を付けられる項目をまとめます。すべてに費用はかかりません。

  • 直近3ヶ月の新患数を月別に書き出した
  • 初診の方のうち再診につながった割合を計算した
  • 曜日別・時間帯別の患者数を出し、空いている枠を特定した
  • 受付から会計までの所要時間を1週間計測した
  • Googleビジネスプロフィールの診療時間・休診日・写真を更新した
  • ホームページに駐車場、対応疾患、待ち時間の目安を明記した
  • スタッフ全員に「患者さんから言われること」を聞き取った
  • 中断されている慢性疾患の患者さんのリストを作った
  • 近隣の医療機関・薬局・介護事業所を地図上で書き出した
  • 手元資金が支出の何ヶ月分あるかを確認した

患者が来ないという状況は、院長先生にとって非常に苦しいものです。ただ、原因が特定できれば打ち手は必ず見つかります。順番を守って、費用のかからないところから一つずつ進めていただければと思います。

よくある質問

Q. 開業後、患者が来ないのは何ヶ月まで様子を見てよいですか

A. 立ち上がりには時間がかかるため、開業3ヶ月での判断は早いと考えております。前月比で新患が増えているかを見て、6ヶ月経っても横ばいなら原因の切り分けに着手してください。

Q. 集患不振のとき、まず広告を出すべきでしょうか

A. 広告は最後で構いません。まず院内の待ち時間や再診の継続を確認し、次にネット上の情報を最新にする。この順番のほうが費用がかからず、効果も早く出やすいです。

Q. 新患は来るのに再診が続きません。何を確認しますか

A. 待ち時間、受付の対応、説明の分かりやすさ、次回予約の声かけの4点です。特に待ち時間が30分を超える時間帯があれば、そこが離脱の発生点になっている可能性があります。

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この記事を書いた人

佐藤雄亮(さとう ゆうすけ)。整形外科医、横浜市立大学医学部2016年卒。医師の不動産株式会社 代表取締役。複数の法人を経営しながら、病院・クリニックの経営改善・再生と事業承継の支援に取り組んでいます。毎月220名以上の医師が参加するコミュニティを運営。著書『初心者からはじめる医師の不動産投資』。

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