この記事の結論
- 集患は順番が9割。広告と業者は最後に置く
- 先に既存患者の離脱を止める増患対策から着手する
- 費用が安く効果が早い手から順に潰していく
クリニックの集患方法を調べていると、ホームページの刷新、リスティング広告、折込チラシ、SNSと、手段ばかりが増えていきます。何から手をつければよいのか判断がつかず、とりあえず業者に見積もりを取ってみた。そういう先生からのご相談を、毎月のようにいただきます。
先に結論をお伝えします。集患には取り組む順番があり、広告や業者への依頼は最後です。順番を飛ばすと、費用をかけた割に患者さんが増えない状態が続きます。私は現役の整形外科医として診療を続けながら、複数の法人の経営と、病院・クリニックの経営改善のお手伝いをしております。その現場で繰り返し見てきた順番を、この記事で整理してお伝えします。
クリニックの集患とは|集患対策と増患対策の違い
集患とは、自院を必要としている患者さんに存在を知っていただき、受診につなげ、必要な期間だけ適切に通い続けていただくための一連の取り組みのことです。「新しい患者さんを呼ぶこと」だけを指す言葉ではない、という点が出発点になります。
実務では、集患対策と増患対策を分けて考えると整理しやすくなります。集患対策は主に新患を増やす取り組み、増患対策はすでに来院された方の再診・継続・紹介を増やす取り組みです。ひと月の患者数は、おおまかに「新患数×その後の継続度合い」の掛け算で決まりますので、片方だけを伸ばそうとしても頭打ちになります。
| 項目 | 集患対策(新患を増やす) | 増患対策(既存の方を増やす) |
|---|---|---|
| 主な狙い | まだ自院を知らない方に届ける | 一度来院した方の離脱を防ぐ |
| 主な手段 | Googleビジネスプロフィール、ホームページ、看板、広告、地域連携 | 待ち時間の短縮、説明の質、次回予約、予約の取りやすさ、受付対応 |
| 費用の目安 | 数万円〜数十万円/月かかることが多い | ほぼ人件費のみで着手できる項目が多い |
| 効果が出るまで | 3〜6か月程度みておく(目安) | 翌月から数字に出ることもある |
| 着手の順番 | 後 | 先 |
費用が小さく、効果が早く、院長の裁量だけで動かせる。この三つが揃っているのが増患対策です。ですから、順番としては先になります。
なぜ広告から始める集患方法は失敗しやすいのか

広告から始めた先生の多くが、半年後に同じことをおっしゃいます。「新患は少し増えたが、忙しくなっただけで手元に残らない」。理由ははっきりしていて、底に穴の空いたバケツに水を注いでいるからです。
穴の正体は、たいてい院内にあります。待ち時間が長い、診察の説明が短く次に何をするか伝わっていない、次回の受診時期を誰も声に出していない、電話がつながらない、予約が取りづらい、受付での応対が事務的になっている。どれも派手さのない項目ですが、患者さんが「もう一度ここに来よう」と思うかどうかを決めているのは、この部分です。
仮に広告で新患が月30人増えたとしても、初診のみで終わる方が大半であれば、増えるのは初診の負荷だけです。逆に、既存の患者さんの継続を少し改善できれば、広告費ゼロで延べ患者数が動きます。私が経営改善に入るときも、最初の1〜2か月は院内の動線と声かけの整理に使うことがほとんどです。
よくある進め方
まず広告費を月20万円投じ、ホームページも刷新する。新患は増えるが、初診で終わる方が多く、スタッフの残業だけが増える。
費用は毎月かかり続ける
順番を入れ替えた場合
先に待ち時間・次回予約の声かけ・電話対応を整え、継続受診の取りこぼしを止める。そのうえで、足りない分を広告で補う。
広告費は「不足分だけ」で済む
もう一点だけ添えます。患者数だけを追うと、現場は際限なく疲れていきます。同じ売上でも、算定漏れを止めて単価を適正化するほうが早い場合が少なくありません。数を増やす前に、診療単価を上げる正しい方法と算定漏れのチェックにも一度目を通していただくと、打ち手の優先順位がつけやすくなります。
院長がやるべき集患方法の順番【5ステップ】
ここからが本題です。私が経営改善のご相談を受けたときに実際にたどる順番を、そのまま5段階に分けました。上から順に進めることをおすすめします。
- 今の数字を把握する
新患数、延べ患者数、初診で終わった割合、予約のキャンセル率。この4つを直近3か月分、月ごとに並べます。ここを飛ばすと、何が問題なのか分からないまま費用だけが出ていきます。毎月の数字の見方はクリニック経営の指標7つ|毎月見る数字表の作り方にまとめております。 - 院内の取りこぼしを止める(増患対策)
待ち時間、説明、次回予約の声かけ、電話の取りこぼし。費用がほぼかからず、翌月の数字に出やすい領域です。まずここを1〜2か月で整えます。 - 「探されたときに見つかる」状態を作る
Googleビジネスプロフィールの診療時間・休診日・電話番号・写真を最新にし、ホームページで診療内容と初診の流れが分かるようにする。多くの患者さんは、来院前に必ずここを見ています。費用はほぼかかりません。 - 地域の中での接点を増やす
近隣の医療機関・介護事業所・薬局・学校や職域との関係づくり、必要に応じた紹介・逆紹介の整理。時間はかかりますが、広告と違って積み上がり、止めても消えません。 - 足りない分だけ広告で補う
ここまでやったうえで、なお新患が不足している時間帯・疾患・エリアが特定できたら、そこに絞って広告を使います。目的が具体的なので、費用対効果の判断もできます。
ステップ1から3までは、外部に頼まなくても院長とスタッフだけで進められます。多くのクリニックは、ここを飛ばしてステップ5から始めてしまいます。
明日から着手できる集患対策チェックリスト

まずは自院の現状を確認してみてください。◯がつかない項目が、そのまま今月の打ち手になります。
- 直近3か月の新患数・延べ患者数を、月ごとに紙かエクセルで並べている
- 初診のみで終わった方の割合を、おおよそでも把握している
- 診察の最後に「次はいつ頃お越しください」と伝える運用が決まっている
- 診療時間内にかかってきた電話の取りこぼしを、誰かが確認している
- Googleビジネスプロフィールの診療時間・休診日が今月の実態と合っている
- ホームページを開いて3秒で、診療科目・場所・電話番号が分かる
- スマートフォンでホームページを見て、文字が読めて予約導線が押せる
- 院内に、自院で対応できる症状や検査を伝える掲示がある
- 待ち時間が長くなったとき、受付から一声かける決まりがある
- 近隣の医療機関・薬局・介護事業所に、自院の対応範囲を伝えたことがある
10項目のうち、まず数字に関わる上の3つから着手されることをおすすめします。院内の運用は、院長が朝礼で一度伝えただけでは定着しません。誰が・いつ・何と言うのかまで決めて、2週間後にもう一度確認する。この一往復があるかどうかで結果が変わります。
集患方法ごとの費用の目安と、業者に頼む判断軸
それでも新患が足りない場合、外部の手段を検討することになります。参考までに、新患1人を増やすためにかかる費用の感覚を並べます。地域・診療科・競合状況で大きく変わりますので、あくまで目安としてご覧ください。
新患1人あたりにかかる費用の感覚(目安)
目安。地域・診療科・時期により変動します。金額は費用対効果の順番を考えるための参考値としてご覧ください。
下の2つ、つまり院内でできることが、費用の面では圧倒的に有利です。ここを整えないまま上の手段に費用を投じるのは、順番として無理があります。
業者に依頼するかどうかの判断軸
依頼が向いているのは、目的が具体的に言える段階に達しているときです。「集患したい」ではなく「金曜午後の枠が空いているので、この時間帯に来られる方を増やしたい」「新しく導入した検査を、対象となる方に知っていただきたい」。ここまで絞れていれば、提案の良し悪しを院長自身が判断できます。
見積もりを受け取ったら、次の3点を確認してください。第一に、何をもって成果とするかが数字で書かれているか。第二に、契約期間と解約条件が明確か。第三に、ホームページやアカウントの所有権が自院に残るか。三点目は見落とされやすく、契約終了時に自院の資産が手元に残らない事態につながります。依頼先の選び方全般については、開業コンサルは悪徳か|必要性の判断と見分け方・費用の目安で考え方を整理しております。
なお、医療機関の広告は医療広告ガイドラインの規制を受け、患者さんの体験談や術前術後の写真の扱いなどに制限があります。2026年時点の情報として書いておりますが、規制は見直されますので、実際に広告を出される際は最新の内容をご確認いただき、判断に迷う部分は行政窓口や専門家にご相談ください。
集患がうまくいっているクリニックに共通すること
これまで拝見してきた中で、患者数が安定しているクリニックには共通点があります。三つに絞ってお伝えします。
一つ目は、院長が毎月の数字を自分の目で見ていることです。新患数と延べ患者数の推移を見ている先生は、変化に早く気づきます。二つ目は、「うちはこういう患者さんのお役に立てる」という説明が、院長・スタッフ・ホームページで一致していることです。三つ目は、来院された方を大切にする仕組みが、個人の気配りではなく運用として決まっていることです。
集患方法に特別な裏技はありません。順番どおりに、費用のかからないところから一つずつ潰していく。広告はその後です。まずは直近3か月の新患数を並べるところから始めていただければと思います。
よくある質問
Q. クリニックの集患は何から始めるべきですか
A. 直近3か月の新患数と延べ患者数を並べ、現状を把握することからです。次に待ち時間や次回予約の声かけなど、費用のかからない院内改善に着手します。広告は最後です。
Q. 集患対策と増患対策はどう違いますか
A. 集患対策は新患を増やす取り組み、増患対策は来院した方の再診・継続・紹介を増やす取り組みです。増患対策のほうが費用が小さく効果も早いため、先に着手します。
Q. 集患の効果はどのくらいで出ますか
A. 院内改善は翌月から数字に出ることもありますが、ホームページや広告は3〜6か月みておくのが目安です。短期で判断せず、月ごとの推移で確認してください。
Q. 集患を業者に依頼する判断基準は何ですか
A. 目的が「金曜午後の枠を埋めたい」など具体的に言える段階なら検討に値します。成果の定義、契約期間と解約条件、サイトやアカウントの所有権を必ず確認してください。
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