クリニックのリピート率を上げる5つの手順|再診率で見る患者定着

この記事の結論

  • リピート率は新患の定着率で見ると実態がわかる
  • 延べ患者数の再診割合は新患増で下がるため誤読しやすい
  • 次回来院日を口頭で明示するだけで再診率は動く

「広告費をかけて新患は来ているのに、月の売上がなかなか伸びない」。開業医の先生から、こうしたご相談をいただくことが増えました。私は現役の整形外科医として診療しながら、複数の法人経営と、病院・クリニックの経営改善のお手伝いをしております。その現場で私が最初に確認するのは、新患数ではなくクリニックのリピート率、つまり再診の数字です。

結論を先にお伝えします。新患を増やす施策はお金も時間もかかりますが、リピート率=再診率の改善は、明日からの声かけと予約の取り方だけで動く部分が大きい。同じ新患数でも、患者さん1人あたりの来院回数が2回から3回に増えれば、延べ患者数は1.5倍になります。穴の空いたバケツを塞いでから水を注ぐ。順番としては、こちらのほうが確実です。

目次

クリニックのリピート率とは、どの数字を指すのか

クリニックのリピート率とは、ある期間に受診した患者さんのうち、その後もう一度来院された方の割合を指します。医事の現場では「再診率」と呼ばれることが多く、レセコンや電子カルテでは初診・再診の区分から拾えます。

ただ、この言葉は院内で二通りの意味に使われがちで、ここが最初のつまずきになります。

(1)延べ患者数に占める再診の割合

その月の延べ患者数のうち、再診扱いが何%か。日々の集計からすぐ出せる手軽な数字です。ただしこの数字は、新患が増えると下がり、新患が減ると上がります。つまり「再診率が上がった=患者定着が良くなった」とは限りません。広告を止めた月に再診率が上がって安心してしまう、というケースを私は何度も見ております。

(2)新患のうち、2回目以降も来院した人の割合

経営改善で私が必ず見るのはこちらです。たとえば「4月に初診で来られた60名のうち、6月末までに2回目の来院があった方は何名か」。この定着率が、クリニックの実力を表します。集計はやや手間ですが、電子カルテのCSV出力を月に一度、表計算ソフトに貼るだけで追えます。

あわせて見たいのが「新患1人あたりの平均来院回数」です。初診から半年間で何回来られたか。リハビリを伴う整形外科では回数が多くなり、健診後のフォローが中心の科では少なくなります。他院の平均と比べるより、自院の昨年と今年を比べるほうがはるかに有用です。

なぜ新患より先に再診率を見るのか

※写真はイメージです

理由は単純で、費用対効果が違うからです。広告経由で新患を1人増やすには、診療科や地域にもよりますが、1人あたり数千円から1万円台の費用がかかるのが一つの目安といわれます。一方、すでに来院された患者さんに次回の来院日をお伝えすることには、追加の費用がほとんどかかりません。

そして、新患1人が生む売上は「単価×来院回数」で決まります。ここが見落とされがちです。

新患1人が生む累計売上(患者単価3,000円で試算)

平均2回来院6,000円
平均3回来院9,000円
平均5回来院15,000円

患者単価3,000円と仮定した試算の目安。実際の単価は診療科・算定内容によって大きく変わります。

平均来院回数が2回から3回になれば、新患1人あたりの売上は1.5倍です。月60人の新患があるクリニックなら、月に18万円、年間で200万円以上の差になります。同じ額を広告で稼ごうとすると、新患を毎月30人増やす必要が出てきます。どちらが現実的か、という話です。

なお、そもそも新患の流入自体が細っている場合は、先に入口を直す必要があります。集患の立て直し全体の順番については患者が来ないクリニック|共通する5つの原因と集患立て直しの順番で整理しております。

患者定着が崩れるクリニックに共通する5つの理由

私がお手伝いする中で、初診のみで終わる患者さんが3〜4割を占めるクリニックは、決して珍しくありません。原因は診療の中身よりも、その前後の設計にあることがほとんどです。まずは次のチェックリストで自院を確認してみてください。

  • 診察の最後に「次はいつ来ればよいか」を具体的な日付や週で伝えていない
  • 待ち時間が60分を超えるのに、待たせている理由と目安を誰も説明していない
  • 電話が診療時間中つながりにくく、Web予約など電話以外の窓口がない
  • 受付で保険証や問診票のやり取りだけが行われ、名前を呼ぶ以外の声かけがない
  • 説明が専門用語のままで、患者さんが「治ったのか、続けるべきか」を判断できていない

とくに一つ目が効きます。医師としては「経過を見て、必要なら来てください」と言ったつもりでも、患者さんには「もう来なくていい」と聞こえていることがあります。私自身、外来で言い方を変えてから、リハビリ継続率がはっきり変わった経験があります。

三つ目の予約導線も軽視できません。仕事を持つ患者さんは、診療時間中に電話をかけられません。かけてもつながらなければ、そこで受診は流れます。予約の取りにくさは、静かに再診率を削っていきます。

五つ目は、説明の丁寧さの問題ではなく、判断材料を渡せているかの問題です。「あと3回のリハビリで可動域がここまで戻る見込みです」と伝えられれば、患者さんは通う理由を持てます。

クリニックのリピート率を上げる5つの手順

※写真はイメージです

順番が大事です。数字を出さないまま施策から入ると、効果があったのかどうかが永久にわかりません。

  1. 現状の数字を出す
    直近3か月の新患数と、その方々の2回目来院の有無を集計します。「新患定着率」と「新患1人あたり平均来院回数」の2つが出れば十分です。まずは手作業でも構いません。
  2. 初診の体験を自分で通してみる
    予約の電話をかけ、受付から会計、次回案内までを患者さんの立場でたどります。院長が自分でやると、離脱しているポイントがだいたい1〜2か所に絞れます。
  3. 次回来院日の伝え方を院内で統一する
    「◯週間後に一度見せてください」と具体的に伝え、診察室を出る前に受付へ引き継ぐ。医師とスタッフで言い方を揃えるだけで、当日の次回予約取得率が動きます。
  4. 予約の入口を電話以外に1本増やす
    Web予約やLINE予約など、診療時間外でも操作できる導線を用意します。導入時は月数千円から数万円が目安ですが、まずは既存の予約システムに機能が入っていないかを確認してください。
  5. 月に1回、同じ表で振り返る
    施策の前後で定着率がどう動いたかを見ます。1か月では判断できないので、3か月続けてから評価します。

ステップ2は、費用がかからないのに効果が大きい工程です。院長が自院の待合室に患者として座ってみると、椅子の配置や掲示物、スタッフの会話の音量まで、見え方が変わります。

「次回来院」の伝え方を変えると再診率は動く

診察の締め方は、患者定着に直結します。よくある言い方と、私が見直しをお勧めしている言い方を並べます。

よくある締め方

「お薬を2週間分出しておきます。また痛むようなら来てください」

患者さんは「治ったら来なくてよい」と受け取り、自己判断で中断しやすい

見直し後

「2週間後に、効き方と可動域を一度確認させてください。よくなっていれば、そこで一区切りにしましょう」

来院の目的と終わりの見通しが示され、受付でその場の予約につなげやすい

ポイントは、来院を強く勧めることではなく、次に何を確認するのかを言葉にすることです。目的が示されれば患者さんは納得して来られますし、区切りを提示することで「通わされている」という感覚も生まれにくくなります。

また、診察室で伝えた内容を受付が把握していないと、そこで話が止まります。カルテに次回予定を一言残す、あるいは診察券に日付を書いて渡す。この引き継ぎがあるかどうかで、当日の予約取得率は変わります。

なお、再診の予約を取っていただく際に、口コミの投稿を条件にしたり、対価をお渡ししたりすることは景品表示法上のステマ規制に触れる可能性があります。依頼の仕方についてはクリニックの口コミを増やす方法|ステマ規制に触れない依頼の仕方にまとめておりますので、あわせてご確認ください。

毎月見る数字と、院内での回し方

最後に、私が経営改善のご相談を受けたときに、まずお願いしている月次の数字を整理します。多くを見ようとすると続かないので、この4つに絞っています。

見る数字 出し方 頻度 見方の考え方
新患定着率 当月初診の患者数のうち、2か月以内に再来院した人数の割合 月次 自院の前年同月と比較。下がっていれば診察の締め方から確認
新患1人あたり平均来院回数 初診から6か月間の来院回数の平均 四半期 診療科で大きく異なるため、他院比較より自院の推移を見る
次回予約取得率 当日、会計時に次回予約が入った患者数の割合 週次 スタッフ間のばらつきが出やすい。低い日の原因を確認
無断キャンセル率 予約数に対する連絡なし不来院の割合 月次 前日リマインドの有無で変わりやすい

これらを含めた経営数字の全体像と、毎月の数字表の作り方についてはクリニック経営の指標7つ|毎月見る数字表の作り方で詳しくお伝えしております。

そして、リピート率が改善してきたら、次に見るのが単価です。来院回数と単価はどちらか一方だけを追うと歪みが出ますので、両輪で確認してください。算定漏れの観点は診療単価を上げる正しい方法|算定漏れを防ぐ5つのチェックにまとめております。なお診療報酬の算定要件は改定のたびに変わりますので、2026年時点の内容として捉え、実際の運用は最新の改定内容をご確認ください。

クリニックのリピート率は、広告予算を組まなくても、明日の外来から動かせる数字です。まずは直近3か月の新患定着率を出すところから始めてみてください。数字が見えると、次に何をすべきかは自然と絞られてまいります。

よくある質問

Q. クリニックの再診率はどのくらいが目安ですか

A. 診療科や地域で大きく異なるため、一律の目安を置くことはお勧めしません。他院と比べるより、自院の前年同月と比較し、新患定着率が下がっていないかを見るほうが判断に役立ちます。

Q. 延べ患者数の再診割合を見るだけでは不十分ですか

A. この数字は新患が増えると下がり、減ると上がるため、定着の良し悪しを表しません。新患のうち2回目以降も来院した方の割合を別に集計することをお勧めします。

Q. リピート率を上げるのに費用はかかりますか

A. 次回来院日の伝え方を院内で統一する、診察券に日付を書いて渡すなど、費用をかけずにできる改善が中心です。Web予約の追加は月数千円からが目安になります。

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この記事を書いた人

佐藤雄亮(さとう ゆうすけ)。整形外科医、横浜市立大学医学部2016年卒。医師の不動産株式会社 代表取締役。複数の法人を経営しながら、病院・クリニックの経営改善・再生と事業承継の支援に取り組んでいます。毎月220名以上の医師が参加するコミュニティを運営。著書『初心者からはじめる医師の不動産投資』。

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