クリニックの口コミを増やす方法|ステマ規制に触れない依頼の仕方

この記事の結論

  • 口コミは依頼の質より案内した回数で決まります
  • 対価と内容指定がなければ依頼自体は違法ではありません
  • 患者の体験談を自院サイトに転載するのは避けます

「Googleの口コミが5件しかない」「近くに開院した先生に件数で差をつけられた」「増やしたいが、ステマ規制が怖くて患者さんに頼めない」。外来の合間にこうしたご相談をいただくことが、この2〜3年で目に見えて増えました。私は現役の整形外科医として診療を続けながら、複数の法人経営と、病院・クリニックの経営改善のお手伝いをしております。今日は、クリニックの口コミを増やす方法を、法令に触れない形に絞って整理してお伝えします。

先に結論を申し上げます。口コミは「上手な頼み方」を探すより先に、案内する回数を仕組みとして増やすことで動きます。そして、対価を渡さない・内容を指定しない・書く人を選ばない、この3つさえ守れば、患者さんに口コミをお願いすること自体は違法ではありません。危ないのは依頼そのものではなく、依頼に「お礼」や「原稿」がくっついた瞬間です。

目次

クリニックの口コミが増えない理由は、母数が足りないからです

診療の質を上げれば口コミは自然に増える、という考え方があります。半分は正しく、半分は危ういと私は見ております。満足した患者さんの大半は、何も言わずに帰り、黙ってまた来てくださいます。一方で不満を持った方は、放っておいても書きます。つまり何も働きかけないクリニックほど、投稿の母数が小さく、低評価の比重が重くなりやすい。星3.2で止まっている院の多くは、診療が悪いのではなく、良い体験が可視化されていないだけです。

では、どのくらい案内すれば何件増えるのか。私が関わった院の肌感覚では、会計時に案内カードをお渡ししても、実際に投稿に至るのはお渡しした人数の数%です。数字の桁を掴んでいただくために、目安として並べます。

案内から投稿までの落ち方(1か月・目安)

案内をお渡しした人数100人
QRを読み取った人数約30人
実際に投稿された件数3〜6件

私が関わった複数院の実感に基づく目安で、診療科・患者層により大きく変動します。

投稿率を2〜5%と置くと、月10件増やしたいなら月200〜300人への案内が必要という計算になります。これは院長お一人の声かけでは到底届かない量です。だからこそ「頑張って頼む」ではなく、受付の動線に組み込む話になります。

ステマ規制で禁止されたのは「対価つきの口コミ」です

※写真はイメージです

ステルスマーケティング(ステマ)とは、事業者自身の広告であるにもかかわらず、それを隠して第三者の自主的な感想であるかのように見せる表示のことです。2023年10月1日から景品表示法の規制対象となり、違反すると措置命令や事業者名の公表につながります。2026年時点の運用ですので、詳細は消費者庁の最新資料をご確認ください。

ここで押さえていただきたいのは、規制の分かれ目が「事業者の表示と言えるかどうか」にある点です。患者さんが自分の意思で自分の言葉で書いたものは、規制の対象になりません。逆に、金銭・割引・物品を渡した、あるいは文面を指定した瞬間に、それは実質的にクリニックの表示と評価されうる、ということです。Googleのポリシーでも報酬と引き換えの投稿は禁止されています。

依頼の仕方 可否の考え方 理由
会計時に全員へ案内カードを渡す 問題になりにくい 対価も内容指定もなく、書くかは患者の自由
診察後に「よろしければご感想を」と一言添える 問題になりにくい 同上。ただし断りにくい空気を作らないこと
投稿してくれた方に次回割引・粗品 避ける 対価提供。ステマ規制・Googleポリシーの双方に抵触
スタッフや家族に患者を装って書かせる 避ける 事業者の表示そのもの。発覚時の信用損失が大きい
下書き文面を渡して転記してもらう 避ける 内容を指定した時点で自主的な感想と言えない
満足度の高い方だけを選んで案内する 避ける いわゆるレビューゲーティング。Googleのポリシー違反
口コミ代行業者に件数を発注する 避ける 受診していない者の投稿。削除・アカウント制裁の対象

最後の「代行」について補足します。件数が短期間で欲しくなるお気持ちはよく分かりますが、投稿の削除で件数が消えるだけでなく、プロフィール全体の評価が下がるリスクを負います。積み上げた分がまとめて失われる構造なので、私はお勧めしておりません。

患者さんの体験談を自院サイトに載せてよいのか

ここが最も混同されやすい論点です。ステマ規制と医療広告ガイドラインは、別々のルールです。医療広告ガイドラインでは、治療内容や効果に関する患者の主観的な体験談を、医療機関の広告として掲載することは禁止されています。院内掲示、チラシ、自院ウェブサイトへの転載が典型例です。

よくある誤解

Googleの口コミも「体験談」だから、集めること自体が医療広告ガイドライン違反になる。

だから何も手を打てない、と止まってしまう

実際の整理

患者さんが自主的に第三者サイトへ投稿した口コミは、原則として医療機関の広告には当たりません。問題になるのは、それを自院の広告物へ転載したり、内容に関与したりした場合です。

「集める」と「載せる」を分けて考える

したがって実務上は、Googleビジネスプロフィールなどの第三者サイトで増やし、自院サイトには転載しないという切り分けが安全です。「患者さんの声」ページを作りたいというご相談もいただきますが、効果や体験に踏み込む内容であれば私は勧めておりません。院内の掲示物として星の数を誇示するのも、同じ理由で避けたほうが無難です。なお法規の適用は表現ごとの個別判断になりますので、迷う表現は保健所や医療広告に詳しい専門家にご確認ください。

明日からできる口コミの増やし方5ステップ

※写真はイメージです

ここからは手順です。院長が新しく覚えることは、ほとんどありません。

  1. Googleビジネスプロフィールを先に整える
    診療時間、休診日、駐車場の有無、電話番号、外観と受付の写真。ここが古いまま口コミだけ増えても、来院にはつながりません。所要は1〜2時間程度です。
  2. 案内カードとQRコードを作る
    名刺サイズで十分です。文面は「当院の感想をお聞かせください」程度に留め、良い評価を求める書き方や、星の数への言及は入れません。
  3. 声をかける場面を1つだけ決める
    会計時か、次回予約をお取りするときか、どちらか一方に固定します。複数箇所に分散させると、忙しい日に必ず抜けます。
  4. 渡す相手を選ばない
    選別はポリシー違反であるうえ、現場が「この人は良さそう」と判断する負担も生みます。全員に同じ言葉で、というほうがスタッフは楽です。渡す役割を担うのは受付ですので、採用と教育の設計も併せてご覧ください(クリニックの受付パート採用|失敗しない見極め基準と質問例)。
  5. 週1回、件数・平均評価・返信済み数を記録する
    3か月続けると、案内が止まった週と件数の落ち込みが必ず一致します。数字で見えると、現場の納得感が変わります。

この5つのうち、失敗の原因になるのはほぼステップ3と5です。「気づいたときに渡す」運用は、ひと月で消えます。渡す場面を固定し、記録して振り返るところまでを一つの仕組みとお考えください。

悪い口コミへの対策|返信の型と、削除の限界

件数が増えれば、必ず低評価も混ざります。ここでの口コミ対策は、消すことではなく他の患者さんが読んだときにどう見えるかを整えることです。低評価そのものより、無視されている状態や、感情的な反論のほうが読み手の印象を悪くします。

返信で最も注意すべきは守秘義務です。「その日は混雑しており」「あの検査は必要でしたので」といった記述は、その方が受診した事実や診療内容を認めることになります。返信では受診の有無や個別の経過に触れず、一般的な運用の説明に留めます。

  • 投稿から3営業日以内に返信する(当日の感情的な返信は避ける)
  • 受診の事実・診療内容・検査結果に一切触れない
  • 「ご不快な思いをおかけしました」+改善の具体策1つ、で構成する
  • 反論・訂正は書かない。事実誤認があっても公開の場で争わない
  • 直接のご連絡先(代表電話)を案内し、続きは公開の場から外す
  • 高評価にも同じ温度で短く返す(低評価だけ返信すると不自然に見える)
  • 返信文の下書きは定型化しておく(判断を都度させない)

削除については、期待しすぎないほうが健全です。事業者側から消せるのは、あくまで各プラットフォームのポリシーに反する投稿を報告した場合に限られます。単に事実と違う、評価が低い、という理由では通りません。明らかな誹謗中傷や虚偽で営業に実害が出ている場合は、弁護士にご相談いただく領域になります。返信文の下書きづくりは生成AIとの相性が良い作業でもありますので、院内の業務に取り入れる際は生成AIをクリニックで活用する7つの場面も参考になさってください。

口コミを増やす前に、院内の下地を確認する

最後に、順番の話をさせてください。案内を始めると、その院の体験がそのまま外部に可視化されます。待ち時間の長さ、受付の第一声、説明の短さ。こうした課題を抱えたまま母数だけ増やすと、低評価も同じ比率で増えます。私が現場を見るときは、案内を始める前に次の3点を確認しております。

ひとつ目は待ち時間の実測です。体感ではなく、受付から会計までの中央値を1週間だけ測る。ふたつ目は受付の初動、つまり患者さんが入ってから声をかけられるまでの秒数です。ここが長い院は、待ち時間の長さ以上に評価が下がります。みっつ目は、低評価に書かれている内容の分類です。3件以上あれば、たいてい同じ単語が繰り返し出てきます。そこが本当の改善点で、口コミは無料の患者満足度調査でもあります。

口コミの件数と平均評価は、来院数と並べて毎月見る数字のひとつです。単独で追うと件数集めが目的化しますので、他の経営指標と同じ表に載せて管理されることをお勧めします(クリニック経営の指標7つ|毎月見る数字表の作り方)。

クリニックの口コミを増やす方法は、結局のところ地味です。全員に同じ案内を渡し、全件に返信し、書かれた内容を改善に回す。この3つを半年続けた院は、私が見てきた限り例外なく件数も評価も動いております。近道に見える方法ほど後で高くつきますので、今日は仕組みのほうから始めていただければと思います。

よくある質問

Q. 患者さんに口コミをお願いすること自体が違法ではないのですか

A. 対価を渡さず、文面を指定せず、書く人を選ばなければ、依頼そのものは違法ではありません。問題になるのは割引や粗品と引き換えにした場合です。

Q. 口コミを書いてくれた方に粗品を渡すのは問題ありますか

A. 避けてください。対価提供にあたり、ステマ規制とGoogleのポリシーの双方に抵触します。投稿削除やプロフィールへの制裁につながる恐れがあります。

Q. いただいた口コミを自院サイトに載せてもよいですか

A. 治療内容や効果に関する体験談は、医療広告ガイドライン上の禁止事項にあたります。第三者サイトで増やし、自院の広告物へは転載しない切り分けが安全です。

Q. 悪い口コミは削除できますか

A. 各プラットフォームのポリシー違反にあたる投稿を報告した場合に限られます。事実と違うという理由では通常削除されず、返信で対応するのが基本です。

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この記事を書いた人

佐藤雄亮(さとう ゆうすけ)。整形外科医、横浜市立大学医学部2016年卒。医師の不動産株式会社 代表取締役。複数の法人を経営しながら、病院・クリニックの経営改善・再生と事業承継の支援に取り組んでいます。毎月220名以上の医師が参加するコミュニティを運営。著書『初心者からはじめる医師の不動産投資』。

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