クリニックのインスタ集客は効果があるのか|向く科・向かない科

この記事の結論

  • インスタは今日の患者でなく3か月後の想起をつくる道具
  • 相性は科名でなく自費比率・患者層・視覚性の3軸で判断
  • 採用目的なら全科で価値があり、運用は週2時間で仕組み化する

「インスタを始めて半年、フォロワーは1,000人を超えたのに、新患が増えた実感がない」——このご相談を、月に何度もいただきます。私は現役の整形外科医として外来に立ちながら、複数の法人を経営し、クリニックや病院の経営改善のお手伝いをしております。その現場感覚からお伝えすると、クリニックのインスタ集客は「力を入れる価値がある科」と「労力に見合わない科」がはっきり分かれます。

この記事では、その見分け方、医療広告のルールとの付き合い方、そして院長が疲弊せずに週2時間で回すための手順までをお伝えします。

目次

クリニックのインスタ集客は効果があるのか

結論から申し上げます。インスタは「今日の患者」を連れてくる道具ではなく、「3か月後に思い出してもらう」ための道具です。来週の予約枠を埋めたいという目的で始めると、ほぼ確実に息切れします。

クリニックのインスタ集客とは、Instagram上で症状や治療の情報・院内の雰囲気・スタッフの人柄を継続的に発信し、商圏内の生活者に「この症状ならあの院」と想起してもらう状態をつくる取り組みです。検索広告やGoogleビジネスプロフィールが「今まさに困って探している人」を拾うのに対し、SNS集患は「まだ受診を決めていない人」に先回りして接触する役割を担います。

この役割の違いを押さえないまま、ホームページやMEOと同じ即効性を期待すると、数字が動かないことに耐えられなくなります。私の見立てでは、保存数や来院時の「インスタ見ました」という声として反応が見え始めるまでに3〜6か月、新患数の変化として体感できるまでには半年から1年を見込んでおくのが現実的です。逆に言えば、その期間を投資と割り切れないのであれば、同じ労力をホームページの整備や院内掲示に回したほうが投資対効果は高くなります。

やる価値がある科・ない科をどう見分けるか

※写真はイメージです

相性は診療科名だけで決まるものではありませんが、判断の軸は次の3つに整理できます。

  1. 自費診療・選択的な診療(急がなくてよい、患者が比較して選ぶ診療)の比率が高いか
  2. 患者層にInstagramの主要利用層である10〜40代が含まれるか
  3. 写真や動画で「違い」が伝わる診療内容か

この3つのうち2つ以上に当てはまるなら、費用と時間をかける価値があります。1つ以下であれば、集患目的での優先順位は下げて構わない、というのが私の考えです。

診療科の例 集患目的での相性 理由・注意点
美容皮膚科・形成外科 高い 自費比率が高く、患者層と視覚性の3軸すべてに合致。ただし医療広告の制約が最も厳しい領域
産婦人科・不妊治療・小児科 高い 意思決定者が20〜40代女性。院内の雰囲気やスタッフの人柄が来院の決め手になりやすい
皮膚科・歯科(自費含む) やや高い 症状の見た目が伝わる。一般保険診療の投稿だけでは差がつきにくい
整形外科・リハビリ 中程度 セルフケア動画は伸びるが、視聴者が全国に散り商圏外が増えやすい
内科・眼科・耳鼻咽喉科(一般) 低め 「近い・待たない」で選ばれる比率が高く、MEOとホームページのほうが費用対効果が高い

ただし、相性が低めとされる科でも、目的を「集患」から「採用」に置き換えると評価は変わります。院内の日常やスタッフの働き方が見えるアカウントは、求人票だけでは伝わらない情報を補ってくれます。応募が集まらずお困りであれば、SNSより先に求人票の書き方を見直すほうが早いこともありますが、両輪で回せると効果は安定します。

医療広告とSNS|インスタで書けること・書けないこと

ここは必ず押さえていただきたい点です。クリニックが自院のアカウントで発信する内容は、内容によっては医療広告として扱われる可能性があります。「SNSだから広告ではない」という整理はできない、と考えておくのが安全です。

一般論として、次のような表現は注意が必要とされています。ご自身のアカウントを開いて、当てはまるものがないか確認してみてください。

  • 患者さんの体験談(当院で治りました、といった投稿・コメントの引用)を掲載していないか
  • 術前術後の写真に、治療内容・費用・主なリスクや副作用の説明が併記されているか
  • 「絶対に治る」「日本一」「No.1」など、根拠を示せない最上級・断定表現を使っていないか
  • 公的な認定と誤認されうる肩書きや、未承認医薬品・機器の取り扱いについて必要な説明があるか
  • キャンペーン価格や割引の訴求が、不当な誘引にあたらないか
  • インフルエンサーへの依頼投稿について、依頼関係が明示されているか

なお、制度や通知は改定されます。2026年時点の情報として書いておりますが、実際の判断は最新の医療広告ガイドラインをご確認のうえ、個別の表現については弁護士や行政書士、自治体の窓口といった専門家にご相談ください。私自身も、新しい訴求を出すときは必ず一度確認を挟むようにしております。

なぜフォロワーが増えても新患が増えないのか

※写真はイメージです

相談を受けていて最も多いのが、「数字は伸びているのに来院につながらない」というケースです。原因はほぼ一つで、追いかけている指標がずれています。

よくある運用

フォロワー数といいねを目標にし、伸びやすい一般的な健康知識を投稿する

全国から反応は集まるが、商圏内の見込み患者はほとんど含まれない

見直し後

地域名・院内の様子・受診の目安を軸にし、商圏内の保存数と予約導線のクリックを見る

数字は小さくなるが、来院につながる比率が上がる

具体的に手を入れる箇所は多くありません。プロフィール欄の1行目に「◯◯市の△△クリニック」と地域と科目を入れる、予約ページへのリンクを1タップで踏める位置に置く、投稿の最後に「受診の目安」と診療時間を添える。この3点だけでも、プロフィールから予約ページへの遷移は変わります。

そのうえで、投稿内容は「症状の説明」より「受診してよいか迷っている人の背中を押す情報」を優先してください。どのくらいで受診すべきか、初診で何をするのか、費用はどのくらいか。患者さんが受診をためらう理由は、病気そのものより手続きの不透明さにあることが多いためです。

週2時間で回すインスタ運用の5ステップ

続かない最大の理由は、院長が思いつきで投稿しているからです。診療の合間に何を書くか考える運用は、必ずどこかで止まります。次の順番で仕組みにしてください。

  1. 目的を1つに決める
    集患か、採用か、既存患者との関係維持か。3つ同時に狙うと投稿がぼやけます。まずは1つに絞ります。
  2. 投稿テーマを12本まとめて決める
    外来でよく聞かれる質問を12個書き出し、それをそのままテーマにします。ネタ探しの時間がなくなります。
  3. 月1回、まとめて撮影する
    診療終了後に60〜90分確保し、4〜8本分の写真と短い動画を撮りためます。都度撮影は続きません。
  4. 投稿と返信の担当を分ける
    院長は監修のみ、投稿作業と定型的なコメント対応はスタッフへ。医学的判断を含む返信だけ院長に上げる線引きを文書化します。
  5. 3か月ごとに続けるか判断する
    プロフィール閲覧数、予約リンクのクリック数、来院時の認知経路。この3つだけを見て、伸びていなければ内容か媒体を変えます。

週2時間というのは、この形にしたときの実務時間の目安です。撮影に月90分、投稿と確認に週30分程度、と考えていただければ大きく外れません。

誰が運用し、いくらかけるべきか

院長がすべて自分で担うと、まず間違いなく途中で止まります。そして止まったアカウントは、更新の途絶えた看板として残り、かえって印象を損ないます。始める前に、担当と予算を決めておいてください。

運用体制別の月あたりコスト(目安)

全面外注月20万円前後
撮影・編集のみ外注月8万円前後
院内スタッフで運用月3万円相当

いずれも私が見聞きする範囲での目安です。地域や依頼範囲、投稿本数によって幅があります。院内運用は担当スタッフの作業時間を人件費に換算した概算です。

私がお勧めしているのは、真ん中の「撮影・編集だけ外注し、テーマ決めと投稿は院内で持つ」形です。外部に丸ごと預けると、院内の空気やスタッフの表情という、いちばん差がつく部分が写らなくなります。逆に全部を院内で抱えると、写真の質が理由で続かなくなります。

院内で持つなら、担当は事務方に置く

運用担当は、診療の手が空きやすい受付・事務のスタッフに置くのが現実的です。専任を置くほどの規模でなければ、事務長やそれに準じる立場の方が全体を見る形になります。奥様が事務長を務めている医院も多く、その体制の是非についてはクリニックの事務長は妻でいいのかで整理しておりますので、あわせてご覧ください。

そして、院長が最終確認だけを担う線引きを最初に決めてください。医学的な内容の監修は院長にしかできませんが、それ以外は手放して差し支えありません。院長の時間が空かないまま業務だけを増やすと、集患の前に院長が消耗します。この構造については開業医が休めない本当の理由でも触れております。

インスタは、やれば必ず患者が増えるものではありません。ただ、自院の相性を見極めたうえで、週2時間を仕組みとして確保できる医院であれば、時間をかけるだけの価値は十分にあります。まずはご自身の科が3つの判断軸のいくつに当てはまるか、そこから確認してみてください。

よくある質問

Q. クリニックのインスタは週に何回投稿すればよいですか

A. 週2〜3回が続けやすい目安です。頻度より継続と、地域名や受診の目安を含めることを優先してください。月1回のまとめ撮影で本数を確保すると安定します。

Q. 患者さんのビフォーアフター写真をインスタに載せてもよいですか

A. 治療内容・費用・主なリスクなどの説明がない術前術後写真は問題となりうるとされています。2026年時点の最新ガイドラインを確認し、個別判断は専門家にご相談ください。

Q. フォロワーが何人になれば新患につながりますか

A. 人数より商圏内の割合が重要です。全国から集めた1万人より、地域の500人のほうが来院につながります。プロフィール閲覧数と予約リンクのクリック数で判断してください。

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この記事を書いた人

佐藤雄亮(さとう ゆうすけ)。整形外科医、横浜市立大学医学部2016年卒。医師の不動産株式会社 代表取締役。複数の法人を経営しながら、病院・クリニックの経営改善・再生と事業承継の支援に取り組んでいます。毎月220名以上の医師が参加するコミュニティを運営。著書『初心者からはじめる医師の不動産投資』。

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