診療報酬改定2026がクリニックに与える影響|院長が押さえる5点

この記事の結論

  • 改定の影響は自院の上位算定項目だけ見れば足りる
  • 生活習慣病管理料は患者層で有利不利が入れ替わる
  • 賃上げは算定より院内の配分ルールでつまずく

「2026年の改定で、うちの収入は結局どうなるのか」。今年に入ってから、私のところに届くご相談で最も多いのがこの一言です。告示や疑義解釈をすべて読み込む時間はない、けれど算定を落とすのは怖い。院長として当然の感覚だと思います。

先に結論をお伝えします。2026年の診療報酬改定でクリニック経営に効いてくるのは、次の5点です。(1)生活習慣病の管理料をどう選ぶか、(2)賃上げの原資をどう作り、どう配るか、(3)医療DX・オンライン資格確認まわりの加算を取りこぼしていないか、(4)後発医薬品や長期処方など処方の設計、(5)施設基準の届出と院内掲示の整備。点数表を端から端まで読む必要はありません。自院の売上の上位を占める算定項目だけ、影響を確認すれば十分です。

なお、個別の点数や要件は告示・通知・疑義解釈で確定します。本稿は2026年時点で私が整理している考え方であり、実際の算定判断は必ず最新の通知と、顧問の医療事務・社会保険労務士・税理士にご確認ください。

目次

そもそも診療報酬改定とは何か、2026年の論点はどこか

診療報酬改定とは、公的医療保険から医療機関に支払われる点数(価格)と、その算定ルールを原則2年に1度、国が見直す仕組みです。薬価が先に、医科の本体部分が少し遅れて施行されるのが近年の運用で、前回2024年の改定では本体の施行が6月にずれました。2026年も同じ進行を前提に準備された先生方が多いはずです。

今回の改定で通底しているのは、「医療従事者の賃上げをどう支えるか」と「限られた財源をどこに寄せるか」という二つの綱引きです。クリニックにとっては、点数が上がった項目を喜ぶより、算定要件が細かくなった項目で取りこぼしが出ていないかを先に確認するほうが、金額のインパクトは大きくなります。私が関わっている再生案件でも、増収の余地は新しい加算より、既存の届出漏れ・掲示漏れの側に眠っていることが多いという印象です。

院長が押さえる5点はどこか

※写真はイメージです

まず全体像です。自院の診療科と患者層に照らして、どこから手をつけるかを決めてください。

押さえる点 影響が出やすい院 今週確認すること
1. 生活習慣病管理料 内科・循環器・糖尿病内科 対象疾患の患者数と、(Ⅰ)(Ⅱ)どちらで算定しているか
2. 賃上げ・ベースアップ関連 全科(常勤職員が多い院ほど) 対象職種の範囲と、実際の配分ルールの有無
3. 医療DX・オンライン資格確認 全科 マイナ保険証の利用率、院内掲示、届出内容
4. 処方の設計(後発品・長期処方) 内科・整形外科・皮膚科 後発医薬品の使用割合と、長期処方への方針
5. 施設基準と書類の実態 全科 届出内容と院内の運用実態がずれていないか

このうち、金額として最も動くのが1と2です。3から5は取りこぼしを塞ぐ作業で、地味ですが確実に効きます。自院の毎月の数字をまだ定点で見ていない場合は、クリニック経営の指標7つ|毎月見る数字表の作り方を先に整えてから改定対応に入るほうが、判断が速くなります。

生活習慣病管理料は、自院の患者層でどちらが有利か

2024年の改定で、高血圧・糖尿病・脂質異常症が特定疾患療養管理料の対象から外れ、生活習慣病管理料へ移行しました。この流れは2026年の改定でも続いており、内科系のクリニックにとっては引き続き最大の論点です。

判断の軸は単純で、検査や処方をどこまで自院で行っているかです。検査等を包括する生活習慣病管理料(Ⅰ)は点数が高い一方、包括範囲が広いため、検査を頻繁に行う院では持ち出しになる場合があります。逆に、投薬管理が中心で検査頻度が低い院では(Ⅰ)が有利に働くことがあります。

対象患者100人・月1回受診とした場合の管理料収入(目安)

生活習慣病管理料(Ⅰ)高血圧約66万円
生活習慣病管理料(Ⅱ)約33万円
旧・特定疾患療養管理料(診療所)約22万円

2024年改定時点の点数(1点=10円)をもとにした単純試算の目安です。(Ⅰ)は検査・注射・病理を包括するため、実際の手取りはこの差額どおりにはなりません。2026年の点数は最新の告示をご確認ください。

グラフだけを見ると(Ⅰ)が圧倒的に見えますが、包括される検査費用を差し引くと逆転する院も珍しくありません。私がお手伝いする際は、直近3か月のレセプトから対象患者の検査実施率を出し、患者一人あたりの実質差額を計算したうえで決めています。感覚ではなく、自院のデータで判断していただきたい部分です。

あわせて、療養計画書の作成と同意取得の運用が回っているかも確認してください。算定要件を満たせずに月をまたぐと、その分はそのまま失われます。

賃上げ対応は「算定」より「配分」でつまずく

※写真はイメージです

ベースアップ評価料に代表される賃上げ関連の点数は、届出さえ出せば終わりではありません。実務でつまずくのは、その後の配分です。

よくある誤解

賃上げの加算を算定すれば、その分をそのまま人件費に回せば済む

「全員に薄く配る」で処理してしまいがち

実際に起きること

対象職種が限定されているため、受付事務など対象外の職員との間に不公平感が生まれる

説明を怠ると、算定した年ほど離職が出ることがある

賃上げ関連の点数は、対象となる職種の範囲が定められており、事務職員が含まれないケースがあります。ここを説明しないまま看護師だけ賃金が上がると、受付から「なぜ自分たちは対象外なのか」という声が上がります。私の見立てでは、賃上げ対応で経営が揺れる院の多くは、金額ではなく説明の順番で失敗しています。

手順としては、(1)対象職種と算定見込み額を確定する、(2)対象外の職員をどう扱うか方針を先に決める、(3)全員に同じ場で説明する、の順が安全です。対象外の職員については、賃上げ促進税制の活用や賞与での調整など、別の原資で手当てする設計を考えます。原資に余裕がない場合は、無理に上げるより先に固定費の構造を見直したほうがよいこともあります。資金繰りが細っている実感がある先生は、クリニックの資金繰りが苦しい時の3つの数字|開業後の立て直し手順もご覧ください。

なお、人員体制そのものが過剰であれば、賃上げの前に適正化が先です。診療科別の考え方はクリニックのスタッフ適正人数|患者数と診療科別の計算方法にまとめています。

医療DX関連の加算を取りこぼしていないか

医療DX推進体制整備加算やオンライン資格確認関連の点数は、一件あたりは小さくても、全患者に算定される性質のため年間では無視できない額になります。要件は「届出」「実績(利用率など)」「院内掲示とウェブサイトへの掲載」の3層で構成されていることが多く、どれか一つが欠けると算定できません。

  • マイナ保険証の利用率が、直近月で要件の水準を満たしているか把握している
  • 受付で「マイナ保険証をお持ちですか」と声をかける運用が定着している
  • 院内掲示の内容が、最新の要件の文言に更新されている
  • 自院ウェブサイトにも同じ内容を掲載している(掲示のみで止まっていない)
  • 電子処方箋・電子カルテ情報共有サービスへの対応方針を決めている
  • 直近の届出内容と、実際の院内運用にズレがない

特に3番目と4番目は見落としが多い項目です。掲示は貼ったがウェブサイトは開業時のまま、という院を何度も見てきました。院長ご自身が確認する必要はなく、事務長やリーダー職に月1回のチェック項目として渡せば十分です。この種の定型作業の下書きは生成AIに任せると早く、私の使い方は生成AIをクリニックで活用する7つの場面|私が実際に使う手順にまとめています。

明日から何をすればよいか

最後に、私が改定後の院で実際に踏んでいる順番をお示しします。全部で1〜2週間の作業です。

  1. 自院の算定上位20項目を出す
    レセコンから直近3か月の算定回数と点数を出力し、金額の大きい順に20項目だけ並べます。改定の影響を見るのはこの20項目で十分です。
  2. 影響のある項目に印をつける
    20項目のうち、点数・要件が変わったものに印をつけます。医療事務のスタッフか、レセコンベンダーの改定説明資料に頼って構いません。
  3. 生活習慣病まわりを試算する
    対象患者数と検査実施率から、管理料の選択による年間差額を概算します。ここだけは院長ご自身の判断が必要な部分です。
  4. 賃上げの配分方針を先に決める
    対象職種・金額・対象外職員の扱いを紙1枚にまとめ、全員に同じ場で説明します。個別に伝えると必ず不信が生まれます。
  5. 届出と掲示を棚卸しする
    施設基準の届出一覧を出し、院内掲示・ウェブサイトの記載と突き合わせます。以後は月1回の定例チェックに落とし込みます。

改定のたびに点数表と格闘する必要はありません。自院の売上を支えている項目を知っていれば、確認すべき範囲は毎回同じところに収まります。むしろ改定は、届出や運用のほころびを点検する良い機会だと考えています。今回の5点を、来週の朝礼の議題にしていただければと思います。

よくある質問

Q. 2026年の診療報酬改定はいつから適用されますか

A. 薬価が先行し、医科の本体部分は遅れて施行される運用が近年定着しています。前回2024年は本体が6月施行でした。正確な施行日は最新の告示でご確認ください。

Q. 生活習慣病管理料は(Ⅰ)と(Ⅱ)のどちらが得ですか

A. 検査を頻繁に行う院は包括範囲の広い(Ⅰ)で持ち出しになる場合があります。直近3か月の対象患者の検査実施率から実質差額を試算して判断してください。

Q. 賃上げの加算は事務職員にも配れますか

A. 賃上げ関連の点数は対象職種が定められており、事務職員が含まれない場合があります。対象外の職員は賞与や税制の活用など別の原資での手当てを検討します。

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この記事を書いた人

佐藤雄亮(さとう ゆうすけ)。整形外科医、横浜市立大学医学部2016年卒。医師の不動産株式会社 代表取締役。複数の法人を経営しながら、病院・クリニックの経営改善・再生と事業承継の支援に取り組んでいます。毎月220名以上の医師が参加するコミュニティを運営。著書『初心者からはじめる医師の不動産投資』。

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