オンライン診療の収益性を正直に試算|導入費用と黒字の分岐点

この記事の結論

  • オンライン診療の1時間あたり収益は対面外来の6割程度が目安
  • 分岐点は対面枠を削るか、空き枠を埋めるか
  • 対象疾患を絞り枠を固定し、3か月で数字を検証する

「オンライン診療を入れたほうがいい」と言われるものの、実際のところ収益に結びつくのか。オンライン診療の収益性については、この数年で最も多くご相談をいただくテーマです。先に結論を申し上げます。保険診療でのオンライン診療は、単体で見れば対面診療の収益性には届きません。ただし「対面の空き枠を埋める」「通院が途切れそうな患者さんをつなぎ止める」という使い方に限れば、投資は十分に回収できるというのが私の見立てです。

私は現役の整形外科医として外来に立ちながら、複数の法人の経営と、経営が苦しくなった病院・クリニックの立て直しのお手伝いをしております。運営している医師のコミュニティでも、オンライン診療の話題は毎月のように出ます。ここでは数字を盛らず、どこで黒字になり、どこで赤字になるのかを、試算の形でお伝えします。

目次

オンライン診療の収益性とは何を指すのか

オンライン診療の収益性とは、オンラインでの診療1件あたりの収入から、システム利用料・決済手数料・スタッフの工数といった費用を差し引き、それを診療に要した時間で割った「1時間あたりに手元へ残る金額」のことです。件数や売上だけを追いかけると、判断を誤ります。

なぜ時間で割るのかというと、院長の診療時間という資源が有限だからです。オンライン診療に使った30分は、対面外来に使えたはずの30分でもあります。ここを比べずに「オンラインで月15万円の売上が立った」と喜んでいると、実際には医院全体の利益が減っていた、ということが起こります。

この見方はクリニック経営の指標7つ|毎月見る数字表の作り方でお伝えしている考え方と同じです。新しい取り組みほど、売上ではなく「残った金額」で判断していただきたいと思います。

オンライン診療の導入費用はいくらかかるのか

※写真はイメージです

まずは出ていくお金から整理します。以下は2026年時点で私が見聞きしている範囲での目安です。システムの価格は各社で改定がありますので、実際の導入前には必ず最新の見積もりでご確認ください。

項目 クラウド型(目安) 電子カルテ連携型(目安)
初期費用 0〜10万円 20〜60万円
月額利用料 1〜3万円 3〜6万円
決済手数料 決済額の3〜4% 決済額の3〜4%
端末・通信環境 5〜15万円 5〜15万円
告知(HP改修など) 5〜20万円 5〜20万円
初年度の総額 30〜50万円程度 60〜100万円程度

金額としては、開業時の医療機器と比べれば小さい投資です。とはいえ手元資金が薄い時期の出費は、金額の大小にかかわらず効いてきます。運転資金に不安のある時期であれば、クリニックの資金繰りが苦しい時の3つの数字で挙げた順番を先に片づけてからでも遅くありません。

そして見落とされやすいのが、スタッフの工数です。予約の確認、患者さんへのご案内、決済の確認、処方箋の薬局への送付。1件あたり5〜10分の事務作業が発生します。月60件なら、5〜10時間分の人件費が毎月上乗せされる計算です。表に載らないこの費用を入れずに試算すると、必ず見込みが甘くなります。

保険診療のオンライン診療で月いくら残るのか

ここからが本題の試算です。次の前提を置きます。いずれも目安であり、診療報酬の点数は改定で変わりますので、直近の改定内容は必ずご確認ください。

  • 対象は症状が安定した慢性疾患の再診
  • 1件あたり医療機関に入る診療報酬を、おおむね2,000円
  • システム利用料として、院内掲示のうえ患者さんから自費で500円
  • 1件10分、1日3件、週5日で月60件
  • システム月額2万円、決済手数料3.5%、事務工数は1件7分

この前提ですと、月の収入は2,500円×60件で15万円。費用はシステム月額2万円、決済手数料が約5,000円、事務の人件費が約1万円で、合計3万5,000円ほど。手元に残るのは月11万円台、年間でおよそ140万円という計算になります。初期費用が20万円なら、2か月ほどで回収できる水準です。

ここだけを見れば、十分に成立しているように見えます。問題は、この60件に院長が費やす時間が月10時間だということです。1時間あたりに直すと約1.2万円。この数字を対面外来と並べたときに、話が変わってきます。

なぜ「対面枠を削ると赤字」になるのか

※写真はイメージです

診療1時間あたりに医院へ入る金額(目安)

対面外来約2.0万円
オンライン(利用料あり)約1.2万円
オンライン(利用料なし)約0.9万円

いずれも目安。対面は診療報酬収入、オンラインはシステム費・決済手数料・事務工数を差し引いた後の金額です。厳密な比較ではなく、桁感をつかむための概算としてご覧ください。

私の専門である整形外科の外来ですと、混雑する時間帯は1時間に10〜15人を拝見します。処置やリハビリを含めた1人あたりの単価を1,700円と置けば、1時間の診療報酬収入は2万円前後になります。オンライン診療の1.2万円は、その6割程度にとどまる計算です。

つまり、対面の予約枠を削ってオンライン診療を差し込むと、時間あたりでは減収になりやすい。ここがオンライン診療の収益性を考えるうえでの出発点です。「オンライン診療は儲からない」と言われる背景の多くは、この置き換えが起きているためだと私は見ています。

対面枠を削って入れる

午前外来の枠を30分オンラインに振り替える。売上は立つが、対面で診られたはずの患者さんが減る。

時間あたりでは減収になりやすい

空いている時間に入れる

昼休みの30分、診療時間外の夜、休診日の午前など、もともと収益がゼロだった時間に置く。

差し引きゼロからの積み上げになる

もともと収益が発生していない時間に置く限り、オンライン診療は素直に増収になります。設計としてはここが最も無理がありません。加えて、遠方の患者さんや平日に通えない現役世代の通院中断を防げるのであれば、目先の点数差以上の効果が見込めます。

収益が出ているオンライン診療の事例に共通すること

「入れてよかった」とお話しされる先生方には、いくつか共通点があります。法人名は伏せ、地域もぼかしてお伝えします。

関東近郊の内科A院では、高血圧と脂質異常症の安定期の患者さんに限ってオンライン診療をご案内されました。狙いは収益そのものより、忙しい現役世代の通院中断を防ぐことだったと伺っています。仮に月1回2,000円の再診が10人分、1年つながれば24万円。1人の患者さんが通い続けてくださることの価値は、1件あたりの点数差より大きい、というのが私の見方です。

整形外科では、術後や骨折後の経過確認、遠方から来られている患者さんの中間の診察にオンラインを使う例が増えているとご相談を受けます。片道1時間かかる方にとって通院負担が減ることは、そのまま離脱の抑止になります。

こうした事例に共通するのは、次の3点です。

  1. 対象疾患と対象患者を絞っている。全患者に開放せず、安定期の慢性疾患や経過観察に限定している。
  2. 枠を固定している。毎週水曜の12時30分から30分、というように時間を決め、対面枠には手をつけない。
  3. 院長が事務を抱えていない。予約から決済、処方箋の送付までの流れを紙1枚にまとめ、スタッフに任せている。

3つ目は特に重要です。院長が予約調整や決済確認まで抱え込むと、時間あたりの収益は簡単に半分になります。患者さんへの案内文や院内の手順書といった定型文の下書きは、生成AIをクリニックで活用する7つの場面でお伝えした方法を使うと、立ち上げの手間をかなり減らせます。

オンライン診療を導入する5つのステップ

  1. 対象になる患者さんを数える
    直近3か月のカルテから、安定期の慢性疾患・遠方・平日通院が難しい方を数えます。20人に満たないようであれば、導入は急がなくて構いません。
  2. 枠を決める
    対面枠を削らずに置ける時間を探します。昼の30分か、診療時間外の1枠から始めるのが現実的です。
  3. システムを2社で比較する
    初期費用・月額・決済手数料・電子カルテ連携の可否・スタッフ側の操作画面。この5点だけ揃えて見比べれば十分に判断できます。
  4. 運用フローを紙1枚にする
    予約受付、前日の確認連絡、当日の接続、決済、処方箋の薬局送付。担当者名まで書き込み、院長は診察だけを担当する形にします。
  5. 3か月で数字を検証する
    件数、1件あたりに残った金額、事務にかかった時間の3つを記録します。1時間あたりが対面を大きく下回るなら、枠か対象患者の設計を見直します。

導入前に確認しておきたい事項も挙げておきます。着手前にこの一覧を埋めておくと、開始後の手戻りがほとんどなくなります。

  • 指針に沿った所定の研修を受講し、修了を確認している
  • 必要な施設基準の届出について、地方厚生局に確認している
  • 対象疾患・対象患者の条件を文章で決めている
  • 処方箋の送付方法と、連携する薬局の運用を確認している
  • 院内の通信環境と、通信が切れた際の対応を決めている
  • システム利用料を自費で頂く場合、金額と根拠を院内に掲示している
  • 3か月後に継続するかどうかの判定基準を、数字で決めている

なお、オンライン診療の実施には国の指針に沿った研修の受講や施設基準の届出が求められる場合があり、初診の取り扱いや処方できる薬剤にも制約があります。ホームページでの告知は医療広告ガイドラインの対象です。ここでは一般論を申し上げるにとどめますので、個別の判断は地方厚生局や顧問の先生に必ずご確認ください。制度も診療報酬も変わりますので、最新の改定内容の確認もあわせてお願いいたします。

最後に、私の考えをもう一度だけ。オンライン診療は「収益を増やす道具」というより、「離れていく患者さんを減らす道具」です。対面枠を守ったまま、空いた時間に慎重に置く。対象を絞り、事務を院長から切り離す。この形であれば、初期投資は数か月で回収でき、その先は通院の継続という形で効いてきます。数字が合わないと感じたら、無理に続けない判断も含めて、3か月ごとに見直していただければと思います。

よくある質問

Q. オンライン診療は保険診療だけで採算が取れますか

A. 対面枠を削らず空き時間や診療時間外に組み込めば、月50〜60件程度で初期費用は数か月で回収できる計算になります。対面枠を置き換える形にすると、時間あたりの収益は下がりやすくなります。

Q. オンライン診療の導入費用はどれくらいですか

A. クラウド型で初期0〜10万円、月額1〜3万円、決済手数料3〜4%が目安です。端末やホームページ改修まで含めると、初年度は30〜50万円程度を見ておくと安心です。

Q. どんな患者さんに向いていますか

A. 症状が安定した慢性疾患の再診、遠方や通院が難しい方、術後の経過確認などに向きます。初診や急性期は指針上の制約があるため、対象を絞って始めるのが現実的です。

今の経営課題を整理したい先生へ

採用・集患・お金の残り方・将来の承継など、お悩みを書き出せるヒアリングシートも用意しております。内容を拝見し、私から率直な見立てをお返しします。

経営課題ヒアリングシートを開く

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

佐藤雄亮(さとう ゆうすけ)。整形外科医、横浜市立大学医学部2016年卒。医師の不動産株式会社 代表取締役。複数の法人を経営しながら、病院・クリニックの経営改善・再生と事業承継の支援に取り組んでいます。毎月220名以上の医師が参加するコミュニティを運営。著書『初心者からはじめる医師の不動産投資』。

目次