診療単価を上げる正しい方法|算定漏れを防ぐ5つのチェック

この記事の結論

  • 診療単価=医業収入÷延べ患者数。まず自院の数字を出す
  • 単価100円の差は、1日80人なら年200万円規模(目安)
  • 新メニューより先に、算定漏れと施設基準の未届を点検する

患者数は減っていないのに、月末に出てくる売上が思ったほど伸びない。スタッフも設備も増やしたのに、手元に残るお金は去年と変わらない。こうしたご相談を、私は毎月のようにいただいております。

結論から申し上げます。診療単価を上げる最短の道は、新しい自費メニューを増やすことではありません。すでに毎日提供している診療を、正しく算定できているかを点検することです。私自身が整形外科医として現場に立ち、複数の法人や病院の経営改善に関わってきた中で、売上が伸び悩むクリニックの多くは、患者数ではなく単価の側に取りこぼしを抱えていました。この記事では、その取りこぼしを見つける5つのチェックポイントと、90日で回す進め方をお伝えします。

目次

診療単価とは何か|まず自院の数字を出す

診療単価とは、一定期間の医業収入を、その期間の延べ患者数で割った1人あたりの金額のことです。外来と入院では性質がまったく違うため、必ず分けて計算します。外来単価であれば「月の外来収入 ÷ 月の延べ外来患者数」で求めます。ここでいう収入は保険者負担分を含めた10割ベースで見るのが基本です。

単価は診療科によって大きく異なります。処置やリハビリの比重が高い科と、投薬中心の科では前提が違いますので、他院との比較よりも自院の前年同月との比較のほうがはるかに有益です。まずは直近12か月分を並べてみてください。

そして、この数字が持つ意味は想像以上に大きいものです。1人あたりわずか100円の差が、1年でどれだけの金額になるかを見てみます。

外来単価が100円上がった場合の年間売上インパクト(目安)

1日40人約106万円
1日60人約158万円
1日80人約211万円

月22日診療として単純計算した目安です。実際は診療日数・保険割合により変動します。

1日80人を診ておられる先生であれば、単価100円の改善が年間200万円規模の差になります。新患を毎日5人増やす努力と、単価を100円積み直す努力。後者のほうが、外来の混雑もスタッフの負担も増やさずに済みます。単価は毎月見る数字のひとつとして定点観測すべきで、私はクリニック経営の指標7つの中でも特に優先度が高いと考えております。

単価が上がらない本当の理由は「取りこぼし」にある

※写真はイメージです

単価の話をすると、「患者さんに余計な負担をかけるようで気が進まない」とおっしゃる先生がいらっしゃいます。そのお気持ちは私もよく分かります。ただ、ここには誤解があります。

よくある誤解

単価を上げる=患者さんに多く請求すること。だから気が引ける。

結果として点検自体を後回しにしてしまう

実際のところ

すでに行った診療のうち、算定できるはずのものを算定していない状態を正すこと。

診療内容は変わらず、記録と請求のずれを埋める作業

私が現場を拝見していて、取りこぼしが生じる原因はおおむね3つに整理できます。

ひとつめは、制度改定に院内ルールが追いついていないこと。診療報酬は定期的に改定されますが、開業時に作った算定ルールがそのまま何年も使われているクリニックは珍しくありません。ふたつめは、施設基準の未届です。届け出れば算定できるものを、届出そのものを失念している。あるいは要件を満たしているのに気づいていない。3つめは、カルテの記載と請求が分断していることです。処置やリハビリを実施したのに、記録が算定要件を満たす形になっておらず、結果として算定を見送っている。この3つ目が、金額としては最も大きくなりやすい印象があります。

算定漏れをなくす5つのチェックポイント

では、具体的にどこを見るか。まずは次の5点を、直近1か月分のレセプトで確認してみてください。

  • 初診料・再診料に付随する加算を、要件を満たす日にすべて算定できているか
  • 管理料(生活習慣病や特定疾患に関する管理料など)の選択が、現在の制度に合っているか
  • 実施した処置・リハビリの記録が、算定要件を満たす記載になっているか
  • 検査・画像に伴う判断料や管理加算を取りこぼしていないか
  • 要件を満たしているのに未届の施設基準がないか

1つめと2つめは、改定のたびに扱いが変わりやすい領域です。2026年時点でも見直しが続いておりますので、必ず最新の改定内容をご確認ください。3つめは整形外科であれば処置やリハビリの単位管理、他科であれば処置や在宅関連が該当します。私の経験では、実施はしているのに記載が薄く、月に数十万円分を静かに落としていた例がありました。

4つめの判断料まわりは、事務スタッフが「先生の判断だから触れない」と遠慮して確認が止まりがちな部分です。5つめの施設基準は、地方厚生局への届出が前提になります。要件の解釈は個別性が高いため、判断に迷う場合は必ず社会保険労務士や医療事務に詳しい専門家、あるいは所管の厚生局にご確認ください。

点検の実務としては、レセプトの点検を医事スタッフ任せにせず、月1回でも先生ご自身が上位20項目の算定回数を眺めることをお勧めしております。前月比で不自然に減っている項目があれば、そこが入口です。

患者単価を上げる方法は3つ|効き方を比較する

※写真はイメージです

算定精度の点検を終えたうえで、次の一手を考えます。患者単価を上げる方法は、大きく3つに分けられます。それぞれ効き方と注意点が違いますので、整理しておきます。

打ち手 算定精度の点検 診療内容の見直し 自費メニューの追加
着手までの時間 1〜2か月 3〜6か月 6か月以上
追加コスト ほぼなし 機器・研修費 設備・広告・教育
単価への効き 中〜大(取りこぼし次第) 中 大きいが不確実
主な注意点 過剰算定は厳禁 医学的妥当性が前提 医療広告規制の確認

順番が大切です。私は必ず左から着手していただいております。自費から始めると、設備投資と広告費が先に出ていくため、資金繰りが一時的に重くなります。すでに資金面に不安がある場合は、クリニックの資金繰りが苦しい時の3つの数字を先にご確認いただくほうが安全です。

なお自費メニューを扱う場合、広告表現には医療広告ガイドラインの制約があります。体験談や誤認を招く比較表現は避けるなど、一般論としての注意にとどめますが、実際の表現は必ず専門家に確認してから公開してください。

診療単価を上げる90日の進め方

ここまでの内容を、実際に動かせる順番に並べます。院長がひとりで抱えると続きませんので、事務長や医事のリーダーと一緒に進める前提で設計しております。

  1. 【1〜2週目】自院の単価を出す
    外来単価と入院単価を直近12か月分、月別に算出します。曜日別・医師別まで分けられればなお良いです。
  2. 【3〜4週目】レセプト1か月分を突合する
    カルテの記載と請求内容を照らし合わせ、実施したのに算定していないものを一覧化します。
  3. 【5〜8週目】施設基準を棚卸しする
    現在の届出内容を一覧にし、要件を満たしているのに未届のものがないかを確認します。判断に迷う項目は専門家へ相談します。
  4. 【9〜12週目】院内チェック表を作る
    算定ルールを1枚の表にまとめ、受付・診察・会計の各段階で誰が何を確認するかを決めます。
  5. 【毎月】単価を定例の指標に入れる
    月次ミーティングで単価を共有し、前月比で動いた理由を必ず一言で説明できる状態にします。

4つめのチェック表づくりは、文章化に時間がかかる作業です。私は下書きの段階で生成AIに整理を手伝わせております。具体的な使い方は生成AIをクリニックで活用する7つの場面にまとめておりますので、あわせてご覧ください。

やってはいけない単価の上げ方

最後に、これだけは避けていただきたいことをお伝えします。

まず、医学的な必要性のない検査や処置を追加して単価を上げることです。これは短期的に数字が動いても、患者さんの信頼を失い、指導や監査のリスクを招きます。次に、要件を満たしていない算定です。取りこぼしを取り戻すことと、根拠なく算定することはまったく別の話です。そして、患者紹介の対価を金銭でやり取りする形は、法規に触れます。持ちかけられても関わらないことです。

単価を上げる取り組みは、本来「きちんと診た分を、きちんと収入にする」という当たり前を取り戻す作業です。診療の中身を変えずに月10万円、20万円が戻ってくることは十分にありますし、その積み重ねがスタッフの処遇改善や、院長ご自身が休める体制づくりの原資になります。

まずは今月のレセプト1か月分と、自院の外来単価。この2つを机に並べるところから始めてみてください。数字が見えれば、次にどこを触るべきかは自然と絞れてまいります。個別の算定判断については、私からも一般論以上のことは申し上げられませんので、医事に強い専門家と組んで進めていただければと思います。

よくある質問

Q. 診療単価はどうやって計算しますか

A. 一定期間の医業収入を、その期間の延べ患者数で割ります。外来と入院は性質が異なるため必ず分けて算出し、他院比較より自院の前年同月比で見るほうが有益です。

Q. 診療単価を上げると患者さんの負担が増えませんか

A. 算定漏れの是正は、すでに行った診療を正しく請求する作業であり、診療内容は変わりません。医学的必要性のない検査や処置を追加する形は避けるべきです。

Q. 自費診療を始めれば売上は上がりますか

A. 単価への効果は大きい一方、設備・広告・教育の費用が先に出るため不確実性も高くなります。まず算定精度の点検から着手し、資金繰りに余裕を作ってから検討することをお勧めします。

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この記事を書いた人

佐藤雄亮(さとう ゆうすけ)。整形外科医、横浜市立大学医学部2016年卒。医師の不動産株式会社 代表取締役。複数の法人を経営しながら、病院・クリニックの経営改善・再生と事業承継の支援に取り組んでいます。毎月220名以上の医師が参加するコミュニティを運営。著書『初心者からはじめる医師の不動産投資』。

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