この記事の結論
- 整形外科の患者単価は10割で4,000〜8,000円が目安
- 単価差の最大要因はリハビリ体制と検査・処置の構成
- 単価は人数・日数と分解して初めて打ち手が見える
「1日60人診ているのに、思ったほど手元に残らない」。整形外科の患者単価が低いのではないか、というご相談は本当に多くいただきます。私は現役の整形外科医として自分の診療を続けながら、複数の法人経営とクリニック・病院の経営改善に関わっており、同じ悩みを何度も伺ってきました。
先に結論をお伝えします。整形外科クリニックの患者単価は、保険診療10割ベースでおおむね4,000〜8,000円が目安です。この幅の大半は「腕の差」ではなく、リハビリ体制・検査や処置の構成・患者層・自費の有無という構造の差で決まります。単価が低いこと自体が問題なのではなく、自院の構造と単価が噛み合っているかどうかが問題です。
整形外科クリニックの患者単価はいくらが目安か
患者単価とは、外来患者さん1人が1日の受診で発生させる診療報酬の総額(自己負担分と保険者負担分の合計、いわゆる10割ベース)のことです。窓口でお預かりする金額ではなく、レセプト上の総点数×10円で考えます。院内で「診療単価」と呼ばれているものも、通常はこの数字を指します。
私が経営改善のご相談で拝見する範囲では、整形外科の診療単価は次のような分布になることが多いです。あくまで目安であり、地域性や患者層で上下します。
整形外科クリニックの患者単価の目安(10割・1人1日あたり)
私がご相談で拝見する範囲の目安です。診療報酬は改定で変動するため、2026年時点の最新の告示・通知をご確認ください。
他科と比べると、整形外科は内科系より単価が高くなりやすい一方、眼科や皮膚科のように処置単価で跳ねる場面は限られます。代わりにリハビリという継続的な算定の柱を持てるのが構造上の特徴です。ここを持っているかどうかで、同じ患者数でも売上が3割前後変わることは珍しくありません。
なぜ整形外科は患者単価が下がりやすいのか

整形外科は「回転数で稼ぐ科」と言われがちです。実際、腰痛や膝痛の再診で、投薬と湿布の処方だけであれば単価は2,000円台まで落ちます。それ自体は悪いことではありませんが、その層の比率が上がると全体の平均が静かに沈みます。
私の見立てでは、単価が下がる典型は次の3つです。1つ目は、初診時に必要だった評価が2回目以降にまったく行われず、漫然とした再診が続いていること。2つ目は、リハビリの指示が出ていても患者さんが数回で離脱し、算定が続かないこと。3つ目は、装具・注射・検査といった本来必要な医療行為が、忙しさの中で「今日は時間がないから次回」と先送りされ、そのまま実施されないことです。
いずれも診療の質を落とさずに直せる余地があります。逆に言えば、単価対策と称して不要な検査を増やすのは論外です。必要な医療が届いていないから単価が低い、という順番で考えるのが健全だと考えております。
- 初診と再診の単価を分けて集計している
- リハビリ処方から実施までの離脱率を把握している
- 画像検査の実施率を疾患別に見ている
- 装具の説明が院内で標準化されている
- 再診間隔が患者任せになっていない
- 月次で単価の推移を院長が見ている
3つ以上チェックが付かない場合、単価そのものより先に「数字を見る仕組み」から手を付けたほうが早いです。毎月見る数字の作り方はクリニック経営の指標7つ|毎月見る数字表の作り方で詳しくお伝えしております。
患者単価を決める4つの要素
1. リハビリ体制と施設基準
最も影響が大きい要素です。運動器リハビリテーション料は施設基準(I・II・III)によって1単位あたりの点数が変わり、2026年時点でも改定のたびに要件と点数が動いています。理学療法士の人数、訓練室の面積、専従の配置などで取得できる区分が決まりますので、まずは自院がどの区分で、1人あたり何単位算定できているかを確認してください。1人2単位の算定が定着するだけで、その患者さんの単価は3,000円台後半上乗せされる計算になります。
2. 検査・処置の構成
レントゲン、超音波、関節注射、装具療法。これらの実施率が単価の中身を作ります。特に超音波は、機器がありながら稼働していないクリニックを多く見ます。使わない理由の多くは「時間がない」ですので、機器の購入ではなく動線と時間配分の問題として扱うべきです。
3. 患者層と疾患構成
スポーツ外傷や骨折の急性期が多い医院と、高齢者の慢性疼痛管理が中心の医院では、単価の作られ方が根本的に異なります。前者は初診比率が高く1件あたりが大きい、後者は単価は低いが通院が長く安定する。どちらが優れているかではなく、自院がどちらの型かを自覚し、それに合った目標値を置くことが大切です。
4. 自費・保険外の有無
体外衝撃波、各種自費リハビリ、装具の自費オプション、AGAや点滴などの併設。保険診療の枠外に柱を持つと単価は上がりますが、広告規制や医療法上の制約があります。医療広告ガイドラインに関わる表現は個別性が高いので、実施前に必ず専門家と行政にご確認ください。
整形外科の売上平均をどう見るか|単価×人数×日数に分解する

「整形外科の売上平均はいくらか」というご質問もよくいただきますが、平均値だけを追うと判断を誤ります。売上は患者単価 × 1日患者数 × 月間診療日数に分解して初めて、どこに手を打つべきかが見えます。
| 項目 | Aパターン(回転型) | Bパターン(リハ併設型) |
|---|---|---|
| 患者単価 | 4,500円 | 6,500円 |
| 1日患者数 | 70人 | 50人 |
| 月間診療日数 | 21日 | 21日 |
| 月商の目安 | 約662万円 | 約683万円 |
| 年商の目安 | 約7,900万円 | 約8,200万円 |
| 主な人件費 | 受付・看護中心 | 療法士の人件費が上乗せ |
| 院長の負担 | 診察数が多く重い | 分散するが管理が増える |
年商は同水準でも、必要な人員も院長の疲労も違います。整形外科クリニックの年商は、私がご相談を受ける範囲では8,000万〜1億2,000万円のレンジに入ることが多い印象です(あくまで目安で、規模と地域で大きく振れます)。ここから人件費率がおおむね40〜50%を占めますので、単価を追う前に人員構成が適正かを見る必要があります。人数の考え方はクリニックのスタッフ適正人数|患者数と診療科別の計算方法にまとめております。
患者単価を見直す5つのステップ
- 3か月分の単価を出す
レセコンから月次の総点数と延べ患者数を取り、単価を算出します。初診・再診を分けるとさらに実態が見えます。 - 低単価層の中身を確認する
単価3,000円未満の再診がどの疾患で発生しているかを抽出し、必要な評価が抜けていないかを確認します。 - リハビリの離脱率を測る
処方したうち何割が3回以上継続しているか。離脱が半数を超えるなら、説明の場面設計に原因があることが多いです。 - 実施率の低い医療行為を1つ選ぶ
超音波、装具、注射のいずれか1つに絞り、2週間だけ実施手順を標準化して変化を見ます。 - 月次で追う数字表に組み込む
単価を単発の改善ではなく定点観測項目にします。院長が毎月5分見るだけで十分です。
この5つは、いずれも設備投資を伴いません。単価改善は資金繰りにも効きますので、資金面に不安がある段階ならクリニックの資金繰りが苦しい時の3つの数字|開業後の立て直し手順も併せてご覧いただければと思います。
単価を上げるときに避けたいこと
単価は「上げよう」と意識した瞬間に、方向を誤りやすい指標でもあります。私がご相談の場でお伝えしている考え方を対比で示します。
よくある発想
単価を上げるために、検査や算定できる項目を一律に増やす。
短期的には数字が動くが、査定や患者離れ、スタッフの納得感の低下につながりやすい
私がお勧めする順番
必要な医療が届いていない場面を特定し、その実施率を上げる。
診療内容は変えずに単価が戻ることが多く、スタッフにも説明できる
また、単価だけを最適化して患者数が減っては意味がありません。単価・患者数・継続率は連動しますので、3つを同じ表で見ることをお勧めしております。診療報酬は2026年時点でも改定が続いており、算定要件の解釈は個別性が高い領域です。実際の算定判断は、必ず最新の通知と、顧問の会計事務所や医事の専門家にご確認ください。
患者単価は、院長の頑張りを測る点数ではありません。自院の構造を映す鏡です。まずは3か月分の数字を出すところから、お手伝いできればと思います。
よくある質問
Q. 整形外科の患者単価の平均はいくらですか
A. 10割ベースで4,000〜8,000円が目安です。リハビリを本格併設すると6,000円台、外来中心だと5,000円前後になることが多い印象です。地域と患者層で変動します。
Q. 整形外科の診療単価が低い原因は何ですか
A. 漫然とした低単価の再診が増えている、リハビリが数回で離脱している、必要な検査や装具が先送りされている、の3つが典型です。まず初診と再診を分けて集計してください。
Q. 整形外科クリニックの売上平均はどのくらいですか
A. 年商8,000万〜1億2,000万円のレンジに入るご相談が多い印象です。ただし平均値より、単価×1日患者数×診療日数に分解して自院の型を把握するほうが有益です。
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