クリニックの売上を上げる方法|患者数・単価・回転の収益改善

この記事の結論

  • 売上は患者数×単価×来院回数に分解して考える
  • 最初に着手すべきは診療報酬の算定漏れの点検
  • 集患は費用がかかるため三番目でも遅くない

「去年と比べて患者さんが極端に減ったわけではないのに、手元のお金が増えていかない」「売上を上げたいが、何から手をつければいいのか分からない」。私のところに寄せられるご相談で、最も多いのがこの二つです。

結論から申し上げます。クリニックの売上を上げるときは、漠然と集患を考えるのではなく、患者数・診療単価・来院回数(回転)の三つに分解し、今の自院で最も伸びしろが大きい一つから着手するのが最短です。私は現役の整形外科医として診療を続けながら、複数の法人の経営と、病院・クリニックの経営改善のお手伝いをしております。その中で、収益改善がうまく進む院長先生は、例外なくこの分解を先に済ませておられます。この記事では、分解の仕方と、明日から着手できる手順をお伝えします。

目次

クリニックの売上を上げるとは、三つの数字のどれかを動かすこと

クリニックの売上とは、保険診療のレセプト収入と自費収入の合計であり、「患者数 × 診療単価 × 来院回数」という三つの要素の掛け算で決まる数字です。売上が伸び悩んでいるとき、このうちどれが弱いのかを切り分けないまま施策を打つと、労力の大半が空振りに終わります。

たとえば1日60人、レセプト1件あたり1,000点(医療機関の収入としては約1万円)、月22日診療のクリニックであれば、月間の保険収入は1,300万円前後というのが計算上の目安になります。ここで患者数を10%増やしても、単価を10%上げても、算数の上ではどちらも約130万円の増収です。

ところが、現場で必要な労力とコストはまったく違います。患者数を1割増やすには広告費、スタッフの増員、待ち時間対策がついて回ります。一方で算定漏れの是正であれば、追加コストはほぼかからず、翌月のレセプトから反映されます。ですから私は、ご相談を受けたときにまず「安く、早く効く順」に並べ替えることから始めております。

項目 患者数を増やす 単価を上げる 回転を上げる
効果が出るまで 3〜6か月 1〜2か月 1〜3か月
追加コスト 広告費・人員 ほぼ不要 動線・IT投資
主な打ち手 Web・予約導線・診療時間 算定漏れ・加算・自費 問診・記載・人員配置
つまずきやすい点 費用対効果が見えにくい 制度理解の負担 診療の質との両立

売上を上げる前に、自院の現在地を三つの数字で押さえる

※写真はイメージです

順番として、施策より先に測定です。私が最初にお願いするのは、次の三つを直近6か月分、月ごとに並べていただくことです。

一つ目は1日平均患者数を新患と再診に分けた数字。合計だけを見ていると、新患は来ているのに再診が離脱している、という最も多い問題が見えません。二つ目はレセプト1件あたりの単価。これは月間の保険収入をレセプト件数で割るだけで出ます。三つ目は人件費率です。無床診療所では収入に対して20〜25%程度が一つの目安といわれ、これが恒常的に30%を超えていると、売上を伸ばしても利益が残りにくい構造になっています。

無床診療所の費用構造(収入を100としたときの目安)

人件費25
医薬品・材料費12
設備・賃料8
その他経費15
差引利益(院長報酬の原資)40

診療科や在庫の持ち方で大きく変わるため、あくまで目安です。自院の決算書の数字に置き換えてご確認ください。

この三つを毎月同じ形式で並べるだけで、売上の変化が患者数によるものか、単価によるものかが判別できるようになります。見るべき指標をもう少し整理したい場合は、クリニック経営の指標7つ|毎月見る数字表の作り方もあわせてご覧ください。

患者数を増やす|新患と再診は分けて数える

集患というと広告の話になりがちですが、私の見立てでは、多くのクリニックで先に手を入れるべきは再診の離脱です。新患を1人集めるコストと、今来ている患者さんにもう一度来ていただくコストでは、後者のほうが圧倒的に小さいからです。

再診が続かない理由は、治療方針への納得が得られていない、次回の来院時期を具体的に伝えていない、予約が取りにくい、待ち時間が長い、のいずれかに集約されることがほとんどです。特に「次は2週間後の◯曜日に、この検査をします」と診察室で言語化しているかどうかで、再来率は目に見えて変わります。

新患については、どの経路から来られたのかを受付で1行記録するところから始めてください。紹介、看板、Web検索、地図アプリのどれが効いているかを知らないまま広告費を投じるのは、暗闇で矢を射るのと同じです。なお、医療広告のガイドラインは表現の制約が細かいため、Web改修の際は一般論に留めず、内容ごとに専門家へご確認いただくことをおすすめします。

  • 新患・再診の人数を月次で分けて記録している
  • 新患がどの経路から来たかを受付で把握している
  • 診察室で次回の来院時期を具体的に伝えている
  • 予約の空き枠と実際の待ち時間を毎週確認している
  • キャンセル・無断キャンセルの件数を数えている
  • 診療時間や休診日が地域の生活時間と合っているか検証した

診療単価を上げる|まず診療報酬の算定漏れを潰す

※写真はイメージです

三つのレバーの中で、最も早く、最も安く効くのがここです。私がお手伝いした先でも、着手して1〜2か月で結果が出た例が多い領域です。

単価を上げると聞くと、自費診療の導入を思い浮かべる先生が多いのですが、実際には保険診療の中で本来算定できるものを取りこぼしているケースのほうがはるかに多いというのが実感です。管理料や指導料、各種加算の届出漏れ、施設基準を満たしているのに届け出ていない、カルテ記載の要件を満たさず算定を見送っている——このあたりは、レセプトを数か月分並べて点検すれば必ず何かが見つかります。

よくある考え方

単価を上げるには自費メニューを増やすしかない

導入コストと集客が別途必要になる

実際に多い状況

保険診療の中に、届出漏れ・記載不備による未算定が残っている

追加コストなしで翌月から反映される

点検の進め方は、①直近3か月のレセプトを診療内容別に集計する、②自院で届け出ている施設基準の一覧を出す、③満たしているのに届け出ていない項目を洗い出す、④カルテ記載要件を満たすためのテンプレートを整える、という順です。具体的な点検項目は診療単価を上げる正しい方法|算定漏れを防ぐ5つのチェックに整理しております。診療科ごとの単価水準の考え方は整形外科の患者単価はいくらが目安かもご参考になるかと思います。

なお診療報酬は改定のたびに要件が変わります。この記事の内容は2026年時点の一般的な考え方としてお読みいただき、算定の可否は必ず最新の改定内容と、顧問の医事担当者や社会保険労務士・税理士などの専門家にご確認ください。

回転を上げる|同じ診療時間で診られる人数を増やす

三つ目のレバーは回転です。ここは診療の質と真正面からぶつかりやすいので、丁寧に進める必要があります。目指すのは「一人あたりの診察を短くする」ことではなく、院長でなくてもできる作業を診察室の外に出すことです。

診察室の中で院長が行っている作業を1週間だけ書き出してみると、問診の聞き取り、検査オーダーの入力、次回予約の調整、説明用資料の印刷など、医師である必要のない業務がかなりの割合を占めていることが分かります。これらを移すだけで、診療時間を延ばさずに1日数人分の余力が生まれます。

  1. 予約枠を診療内容別に分ける(初診枠・処置枠・説明枠)
  2. 問診をWeb化し、来院時点で主訴が把握できる状態にする
  3. 定型的なカルテ記載をテンプレート化する
  4. 検査・処置をスタッフと並行して進められる動線に変える
  5. 会計と次回予約を受付で一度に完結させる

ただし、回転を上げる施策はスタッフの負荷に直結します。人員が不足したまま回転だけ上げると、離職という形で跳ね返ってきます。着手前にクリニックのスタッフ適正人数|患者数と診療科別の計算方法で自院の体制を確認しておくことをおすすめします。

90日で進める収益改善のロードマップ

最後に、私がご相談を受けたときに実際にお願いしている進め方を、90日単位で整理します。すべてを同時に始めないことが何より大切です。

  1. 1〜30日:測る
    新患・再診の人数、レセプト単価、人件費率を過去6か月分並べます。ここで自院の弱点が三つのうちどれかを特定します。
  2. 31〜60日:単価を点検する
    施設基準の届出状況と算定漏れを洗い出し、カルテ記載のテンプレートを整えます。追加コストがかからないため、最初に着手します。
  3. 61〜75日:回転を整える
    院長の業務のうち医師でなくてよいものを切り出し、予約枠と問診の仕組みを変更します。スタッフと必ず合意してから進めます。
  4. 76〜90日:患者数に手を入れる
    再診の離脱理由を潰したうえで、新患の流入経路を確認し、必要な範囲で告知を見直します。広告費の投下はここまで待ちます。

売上を上げる作業は、思いつきの施策を並べることではなく、どの数字を、どの順番で、どれだけ動かすかを決めることです。三つのレバーのうち、今の自院で最も安く動くのはどれか。まずはそこから確認していただければと思います。

よくある質問

Q. クリニックの売上を上げるには、まず何から始めるべきですか?

A. 診療報酬の算定漏れの点検です。追加コストがほとんどかからず、1〜2か月で結果に表れます。広告や集患策はその後でも遅くありません。

Q. 患者数を増やすのと単価を上げるのは、どちらが先ですか?

A. 一般には単価が先です。患者数を増やすには広告費と人員が必要ですが、単価の見直しは今来院されている患者さんの範囲で完結するためです。

Q. 売上は伸びているのに手元のお金が増えないのはなぜですか?

A. 人件費率や材料費率が同時に上がっている場合が多いです。売上・各費用率・現金残高の三つを毎月同じ形式で並べて確認してください。

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この記事を書いた人

佐藤雄亮(さとう ゆうすけ)。整形外科医、横浜市立大学医学部2016年卒。医師の不動産株式会社 代表取締役。複数の法人を経営しながら、病院・クリニックの経営改善・再生と事業承継の支援に取り組んでいます。毎月220名以上の医師が参加するコミュニティを運営。著書『初心者からはじめる医師の不動産投資』。

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