クリニックの利益率の平均|診療科別の目安と自院の位置の確かめ方

この記事の結論

  • 利益率の平均は院長報酬の扱いで大きく変わる
  • 個人立は30%前後、医療法人立は8%前後が目安
  • 低い原因は患者数より経費率にあることが多い

「うちのクリニックの利益率は、他院と比べて高いのか低いのか」。この質問を、私は毎月かなりの数いただきます。決算書は毎年見ているけれど、その数字が世の中の平均に対してどの位置にあるのかは誰も教えてくれない。開業医は同業と数字を見せ合う機会がほとんどありませんから、当然のことだと思います。

先に結論をお伝えします。クリニックの利益率の平均は、一般に個人立の診療所でおおむね30%前後、医療法人立の診療所でおおむね8〜10%程度といわれます。この2つの数字が大きく違うのは、経営が違うからではなく、院長自身の報酬を経費に入れているかどうかが違うからです。ここを揃えずに平均と比べても、自院の位置は一生わかりません。

私は現役の整形外科医として診療を続けながら、複数の法人を経営し、病院やクリニックの経営改善のお手伝いをしております。この記事では、平均値の正しい読み方と、診療科別の目安、そして自院の位置を30分で確かめる手順をお伝えします。

目次

クリニックの利益率の平均はどのくらいですか

まず言葉を揃えます。クリニックの利益率とは、医業収益(保険診療と自費診療を合わせた売上)に対して、経費を差し引いた後に手元へ残る利益の割合です。「損益差額率」「医業利益率」と呼ばれることもあります。

公的な統計としては、中央社会保険医療協議会が実施する医療経済実態調査がよく参照されます。そこで示される一般診療所の損益差額率は、一般に個人立で30%前後、医療法人立で8〜10%程度の水準といわれます。ただしこれは調査年や診療報酬改定の影響を受けて動きますので、2026年時点で正確な数値を引用したい場合は、必ず最新の調査結果をご確認ください。

私が院長先生方から相談を受けるときも、この2つの数字だけが独り歩きしていることが非常に多いです。「うちは利益率12%しかない、平均30%に全然届かない」と落ち込んでおられた先生が、実は医療法人で院長報酬を年3,000万円取っておられた、というのは珍しい話ではありません。この場合、比べる相手を間違えているだけで、経営そのものは平均以上ということもあります。

なぜ「30%」と「8%」という2つの平均が並ぶのか

※写真はイメージです

理由はひとつ、院長の給与をどこに置くかの違いです。個人立のクリニックでは、院長は給与を受け取らず、利益がそのまま院長の取り分になります。一方、医療法人では院長は法人から役員報酬を受け取る立場ですから、その報酬は経費として計上されます。同じ経営内容でも、利益率の見え方が20ポイント以上変わるということです。

個人立のクリニック

院長報酬は経費に入らない。利益=院長の取り分。利益率の目安は30%前後

年商1億円なら利益3,000万円前後が一つの水準

医療法人立のクリニック

院長報酬が経費に入る。残った分だけが法人の利益。利益率の目安は8〜10%程度

同じ年商1億円で役員報酬2,200万円なら利益は800万円前後

ですので、自院の位置を確かめるときは、院長報酬を足し戻した「院長報酬前の利益率」で揃えるのが実務的です。個人立の平均とも比較でき、法人化を検討する際の判断材料にもなります。以下、この記事で「利益率」と書く場合は、断りがない限り院長報酬前の数字を指します。

診療科別の利益率と経費率の目安

診療科によって経費の構造が違いますから、利益率も当然変わります。下の表は、私がこれまで実際に決算書を拝見してきた範囲と、公表統計から見えるおおよその傾向をまとめた「目安」です。個々のクリニックは立地・規模・院内処方の有無で簡単に上下しますので、幅のある数字として見てください。

診療科 利益率の目安
(院長報酬前)
経費構造の特徴
内科(院外処方) 30〜35% 人件費が中心。患者数の増減が利益に直結しやすい
内科(院内処方) 25〜30% 薬剤費が重く経費率が上がる。在庫管理の巧拙が出る
小児科 25〜30% 季節変動が大きい。ワクチン等の材料費と廃棄ロス
整形外科 30〜35% リハビリ職の人件費と機器の減価償却が重い
皮膚科 35〜40% 材料費が軽い。自費診療の比率で大きく変わる
眼科 25〜35% 検査・手術機器の投資額次第で振れ幅が大きい
耳鼻咽喉科 30〜35% 季節変動が大きく、繁忙期の人員体制が鍵
精神科・心療内科 35〜45% 材料費がほぼない。診察時間が売上の上限を作る

内科の利益率について補足します。内科は最も母数が多く、平均に近い数字が出やすい診療科ですが、院内処方か院外処方かで経費率が5〜10ポイント動きます。院内処方は薬価差益が乗る一方で薬剤の仕入れが売上と同時に膨らむため、率で見ると下がり、額で見ると増えることがあります。率だけを追って院内処方をやめる判断をすると、かえって手残りが減る場合がありますので、必ず金額で比較してください。

整形外科は、リハビリテーションの人員をどこまで抱えるかで利益率が変わる診療科です。単価の考え方については整形外科の患者単価はいくらが目安か|単価を決める4つの要素で詳しく整理しておりますので、あわせてご覧ください。

利益率を決めているのは、患者数よりも経費率です

※写真はイメージです

利益率が平均より低いと聞くと、多くの先生が「患者を増やさなければ」と考えられます。しかし私が実際に決算書を拝見すると、原因が経費率の側にあるケースが体感で半分以上です。経費率とは、医業収益に対する各経費の割合のことで、これを5つに分けて見るだけで問題の所在はかなり絞れます。

経費率の内訳(院外処方の内科モデル・目安)

人件費(医師以外)22〜25%
その他経費(委託・光熱・広告)10〜12%
減価償却・リース6〜8%
医薬品・診療材料費6〜8%
賃料・共益費5〜7%

院長報酬前の目安。診療科・立地・処方形態で変動します

この中で最も金額が大きく、かつ後から動かしにくいのが人件費と賃料です。特に賃料は契約時にほぼ決まってしまいます。開業時に「駅前の一等地なら患者が来る」と考えて賃料率が10%を超える契約を結ばれた先生は、その後どれだけ努力しても利益率で数ポイントの不利を背負い続けることになります。

人件費率は、患者数に対して人員が過剰かどうかで判断します。売上が伸びていないのにスタッフだけ増えていく、というのは開業5年目前後で非常に多いパターンです。適正な人数の考え方はクリニックのスタッフ適正人数|患者数と診療科別の計算方法にまとめております。

自院の利益率を確かめる4つのステップ

ここからが実務です。決算書と直近の試算表をお手元に置いて、30分ほどで終わる作業です。

  1. 院長報酬を足し戻す
    医療法人の場合、損益計算書の利益に院長(理事長)の役員報酬を加算します。個人立の場合は事業所得がそのまま該当します。ここで初めて他院と同じ土俵に乗ります。
  2. 医業収益で割って利益率を出す
    足し戻した利益 ÷ 医業収益 × 100。この数字を、先ほどの診療科別の目安と比べます。5ポイント以内のズレなら、まず正常範囲と考えて構いません。
  3. 経費を5つに分けて経費率を出す
    人件費・医薬品材料費・賃料・減価償却リース・その他。それぞれを医業収益で割ります。細かい勘定科目に分けず、5つに束ねるのが続けるコツです。
  4. 目安との差が最も大きい1項目だけを選ぶ
    全部を直そうとすると何も進みません。差が3ポイント以上開いている項目を1つだけ選び、そこに3か月集中します。

この作業を毎月続ける形に落とし込みたい場合は、クリニック経営の指標7つ|毎月見る数字表の作り方で、私が実際に使っている数字表の形をお示ししております。

利益率が平均より低いとき、どこから手をつけるか

順番を間違えないことが何より大事です。私がお勧めしているのは、①経費率のズレ → ②患者単価 → ③患者数の順です。経費率は自院の内側だけで動かせるので最も早く結果が出ますし、単価は算定の見直しで数か月、患者数は半年から1年かかるからです。逆から手をつけると、時間もお金もかかる施策から始めることになり、途中で息切れします。

  • 院長報酬を足し戻した利益率を出しているか
  • 人件費率が25%を大きく超えていないか(超えていれば人員配置とシフトを確認)
  • 賃料率が8%を超えていないか(超えていれば増収以外に打ち手が乏しいと自覚する)
  • 医薬品・材料の在庫が1か月分を超えて滞留していないか
  • リース契約に、既に使っていない機器が残っていないか
  • 算定漏れ・査定返戻を毎月確認する担当が決まっているか
  • 広告費や委託費に、効果を測っていない支出が混ざっていないか

チェックが外れた項目が2つ3つ出てくるのは普通のことです。この中で私がとりわけ多く見るのは、最後から2つ目の算定の確認です。単価は経費と違って売上に直接効きますので、レセプトの見直しは費用ゼロで利益率を1〜2ポイント押し上げる余地があります。具体的な確認箇所は診療単価を上げる正しい方法|算定漏れを防ぐ5つのチェックをご覧ください。

最後に一つ申し上げます。利益率は健康診断の数値と同じで、平均から外れていること自体が問題なのではありません。外れている理由を院長ご自身が説明できるかどうかが分かれ目です。「賃料率が高いのは、あえて人通りの多い立地を選んだから」と説明できるなら、それは経営判断であって異常値ではありません。説明できない項目が残っているなら、そこが伸びしろです。まずは決算書に院長報酬を足し戻すところから始めていただければと思います。なお、税務上の取り扱いや医療法人としての報酬設定については個別事情の影響が大きいため、実行前に顧問税理士など専門家にご確認ください。

よくある質問

Q. クリニックの利益率の平均は何%ですか

A. 一般に個人立の診療所で30%前後、医療法人立で8〜10%程度といわれます。差は院長報酬を経費に含めるかどうかによるもので、比較時は院長報酬前に揃えます。

Q. 内科の利益率はどのくらいが目安ですか

A. 院長報酬前で院外処方なら30〜35%、院内処方なら25〜30%が目安です。薬剤費の分だけ率は下がりますが、金額の手残りは増える場合もあります。

Q. クリニックの経費率で最も大きいのは何ですか

A. 医師以外の人件費で、医業収益の22〜25%が目安です。次いでその他経費、減価償却・リース、材料費、賃料の順になることが多く、賃料は5〜7%が目安です。

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この記事を書いた人

佐藤雄亮(さとう ゆうすけ)。整形外科医、横浜市立大学医学部2016年卒。医師の不動産株式会社 代表取締役。複数の法人を経営しながら、病院・クリニックの経営改善・再生と事業承継の支援に取り組んでいます。毎月220名以上の医師が参加するコミュニティを運営。著書『初心者からはじめる医師の不動産投資』。

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