開業医が休めない本当の理由|週1日休む仕組みを作る5ステップ

この記事の結論

  • 休めない原因は気合いではなく業務集中という仕組みにある
  • 休診日業務の7割は医師以外でも担える仕事です
  • 休診日は先に公表し、代診と決裁移譲で守る

開業医は休めない——そう半ば諦めている院長から、私は毎月のようにご相談をいただいております。カレンダーの上では休診日なのに、丸一日休めた日がこの一年で何日あったか思い出せない。そういう状態です。先に結論をお伝えします。休めない原因は、院長の気合いや段取りの悪さではありません。診療以外の業務が院長個人に集中したまま、誰にも渡されていない。つまり仕組みの問題です。私自身、整形外科医として診療を続けながら、複数の法人経営とクリニック・病院の経営改善のお手伝いをしております。その中で拝見してきた限り、休める院長とそうでない院長を分けているのは能力の差ではなく、「院長にしかできない仕事」をどこまで減らせたかの差でした。この記事では、休診日が休みにならない構造を分解したうえで、週1日を確実に空けるための5ステップと、代診の探し方・費用の目安までお伝えします。

目次

開業医が休めない本当の理由は何か

ご相談を伺っていると、原因はおおむね次の3つの構造に整理できます。

1. 診療以外の業務が院長一人に集中している

シフト作成、採用と面接、業者対応、機器の見積比較、クレーム対応、ホームページやSNSの更新、レセプト点検、資金繰りの確認。一つひとつは小さな仕事でも、合計すると月40〜60時間規模になっている院長が珍しくありません。診療時間中には手をつけられませんので、行き先は休診日と夜間しかなくなります。

2. 休診日にしか会えない相手がいる

医薬品・医療機器の担当者、税理士、社労士、金融機関、工事業者、求職者。相手も平日の日中に動きますから、外来のある日には会えません。こうして休診日が「外部対応日」に置き換わっていきます。開業医に休みがないというより、休みが別の業務に上書きされている状態です。

3. 休むと収入が落ちるという固定費の圧力

家賃、リース料、人件費、借入返済は休診日にも発生します。1日あたりの保険収入が30万円の医院であれば、休診日を1日増やすと単純計算で月120万円前後の減収です。実際には患者が他の曜日に移りますので、そのままの金額が消えるわけではありませんが、この不安が「休まない」という判断を正当化してしまいます。

ここで一度、言葉を整理しておきます。開業医が休めない状態とは、診療以外の業務が院長個人に紐づいたまま処理されず、休診日がその処理日に置き換わっている状態を指します。原因が「時間の不足」ではなく「業務の帰属先」にある以上、時間の使い方を工夫しても解決しません。誰が担うかを変える必要があります。

よくある捉え方

休めないのは時間が足りないから。段取りを工夫すれば休める。

時間の使い方の問題として扱う

実際の構造

診療以外の業務が院長個人に紐づいたまま処理されず、休診日がその処理日に置き換わっている。

誰が担うかを変えないと解決しない

なぜ開業医の休みは木曜が多いのか

※写真はイメージです

「開業医の休みはなぜ木曜が多いのか」というご質問をよくいただきます。全国共通の明確な由来があるわけではなく、いくつかの慣習が重なった結果といわれています。

  • 大学病院や基幹病院の手術日・外来日を避け、非常勤勤務や医局の用事に充てていた
  • 地区医師会の理事会や研修会、学校医・産業医の業務が平日の午後に置かれやすい
  • 近隣の医院と休診日をずらし、地域の医療に空白を作らないよう配慮した
  • 週の中日に休むと、体力面でも患者数の波の面でも平準化しやすい

お気づきかと思いますが、木曜休診はもともと「休むための日」ではなく、「診療以外の仕事をするための日」として設計された経緯があります。木曜に休んでいるのに休めた気がしないのは、当然といえば当然なのです。

近年は水曜午後と土曜午後の組み合わせ、あるいは日曜・祝日に平日半日を足す形も増えており、曜日そのものにこだわる必要は薄くなっています。重要なのは曜日ではなく、次の3点です。

  • その日には診療以外の予定を原則として入れないこと
  • 細切れではなく連続した時間が確保できること
  • 患者と職員の双方に事前に周知されていること

休診日に何をしているか、まず棚卸しする

仕組みを変える前に、必ず現状を数字にしていただきます。2週間、15分単位で「何にどれだけ時間を使ったか」を記録するだけです。紙のメモで構いません。そのうえで、記録した業務を次の4つに仕分けます。

分類 業務の例 対応
A 医師にしかできない 診察、診断、処方、手術、診療録の確定、医学的判断を伴う説明 院長が持ち続ける
B 医師でなくてもできる(院内) シフト作成、在庫発注、備品管理、電話一次対応、予約調整 事務長・主任へ移譲
C 外部に出せる 給与計算、記帳、求人媒体の運用、ホームページ更新、清掃、レセプト一次点検 委託する
D やめられる 惰性で続く会議、読まれない院内報、効果が測れていない広告、重複した報告書 廃止する

私が拝見してきた範囲では、院長が休診日に処理している業務のうちAに該当するのは2〜3割程度で、残りはB〜Dであることが多いです。着手はDからをおすすめします。廃止は交渉も引き継ぎも不要で、その週のうちに効果が出るためです。

院長が休診日に処理している業務の内訳

B〜D(渡せる・やめられる)7〜8割
A(医師にしかできない)2〜3割

筆者が拝見してきた範囲での目安。医院により大きく異なります。

週1日休む仕組みを作る5ステップ

※写真はイメージです
  1. 2週間の業務ログを取る(所要:2週間)
    15分単位で記録し、前章の表でA〜Dに仕分けます。記憶ではなく記録で行うのが要点です。「思ったより雑務が多い」ではなく「月52時間のうちAは14時間」と数字で出ると、職員に渡す説得力が変わります。
  2. 決裁ラインを決めて権限を渡す(所要:1週間)
    「3万円未満の消耗品は事務長決裁」「シフトは主任が作成し、院長は確認のみ」といった基準を、金額と担当者名まで紙に書いて掲示します。口頭の移譲は必ず院長に戻ってきます。判断基準を文書にすることが、移譲を定着させる唯一の方法だと考えております。
  3. 「院長がいない日」の手順書を作る(所要:3か月)
    週1本、20分だけ書く運用にします。電話対応、患者急変時の連絡順、クレームの一次対応、鍵と現金の管理、発注の手順。10本たまれば主要業務はほぼ覆えます。手順書がないうちは、院長不在が職員にとって不安でしかありません。
  4. 代診または非常勤医を確保する(所要:1〜3か月)
    休診にせず診療を開ける選択肢を持つと、減収の不安が下がり、休みを決断しやすくなります。詳細は次章でお伝えします。
  5. 年間休診カレンダーを先に決めて公表する(所要:1日)
    半年先までの休診日を確定し、院内掲示・ホームページ・予約システムに反映します。先に公表してしまえば、そこに他の予定は入りません。あわせて職員の有給取得日を同じカレンダーに載せると、「院長だけ休む」という空気も生まれにくくなります。

順番が大切です。1と2を飛ばして5だけを実行すると、休診日に自宅で仕事をするだけの状態に戻ります。

代診はどう探し、費用はどれくらいか

代診とは、院長が不在の日に外部の医師が代わりに外来診療を担当することをいいます。単発で依頼するスポットの代診と、毎週決まった曜日に入っていただく非常勤契約の2種類があります。

探し先 見つかりやすさ 費用の目安(2026年時点) 向いている場面
出身医局・同門のつながり 関係性次第 日当8〜12万円程度+交通費 専門性の近い医師に任せたい
勤務医時代の同僚・知人 つながりがあれば高い 同程度 単発、急な休診の回避
医師専門の紹介会社(スポット) 高い 日当に手数料が上乗せ(2〜3割程度といわれます) 急ぎ、地縁がない
地域医師会・近隣医院との相互代診 地域差が大きい 相互扶助のため低コスト 継続的な体制、急病時の備え
自院で非常勤医を採用 時間はかかる 日当・時給契約 週1日固定の休みを作る

金額はいずれも私が伺う範囲での目安であり、地域・診療科・時間帯・オンコールの有無で大きく変動します。都市部の内科半日で5万円前後という話もあれば、地方の整形外科1日で15万円という話もあります。近隣の相場は、非常勤の求人条件を数件確認すると掴めます。

代診をお願いするときの実務上の注意

  • 保険医登録の有無と、医師賠償責任保険への加入を事前に確認する
  • 電子カルテのID発行、処方権限、当日の連絡手段、急変時の判断基準を文書で共有する
  • 継続処方や慢性疾患中心の枠に代診を当て、初診や手術は院長の日に寄せる
  • 患者へは「◯月◯日は代診の医師が担当します」と事前に掲示・案内する
  • 管理者の常勤性や施設基準に関わる恒常的な体制変更は、地方厚生局や自治体の窓口、顧問の社労士・税理士に事前確認する。運用や解釈は改定されうるため、最新の取り扱いをご確認ください

契約について一点だけ申し添えます。代診の報酬は、診療業務に対する対価として日当または時給で定めてください。患者を紹介した対価を分配するような取り決めは法規に触れる可能性がありますので、避けるべきです。

休みを「予定」ではなく「制度」にする

一度休めても、三か月で元に戻る院長は少なくありません。定着させるには、次の3つを制度として置くことをおすすめしております。

第一に、院長の休診日と職員の休みをそろえること。院長だけが休む形は続きません。第二に、休みの日に院長の携帯へ直接電話が回らない導線を作ること。緊急連絡は事務長が一次判断し、基準に該当する場合のみ院長へ、と手順書に書きます。第三に、収支への影響を感覚ではなく試算で押さえることです。

項目 試算の目安
年間の休診日増 週1日で約50日
単純計算の減収 1日の保険収入30万円 × 50日 = 約1,500万円
他曜日への振替を6割見込んだ実質減 約600万円
あわせて減る費用 時間外手当、光熱費、消耗品費
得られるもの 職員の定着、院長が診療を続けられる年数

この試算は医院ごとに大きく変わりますので、必ずご自身の数字で作り直してください。私が申し上げたいのは金額そのものではなく、院長が体調を崩して長期に休診した場合の損失は、計画的な週1日の休みとは桁が違う、ということです。実際、突然の休診で患者が近隣に流れ、職員が相次いで辞めるという相談を何度も受けております。

明日から着手できるチェックリスト

  • 今週、15分単位の業務ログを開始する
  • D(やめられる業務)を1つ選び、今月中に廃止する
  • 少額決裁の基準を紙に書き、事務長へ渡す
  • 手順書を1本、20分で書く
  • 半年先までの休診日をカレンダーに入れ、掲示する
  • 代診をお願いできそうな医師3人に連絡してみる

休むことは、経営から手を離すことではありません。院長個人に依存した状態から、自分以外でも回る形へ移すことです。そしてそれは、ご自身の診療を長く続けるための投資でもあると、私は考えております。まずはログの1日目から始めていただければと思います。

よくある質問

Q. 開業医が週1日休むと収入はどれくらい減りますか

A. 1日の保険収入30万円の医院で年約50日休むと単純計算で1,500万円ですが、患者が他曜日に移るため実質の減収はその3〜4割程度に収まる例が多いです。

Q. 代診の費用の相場はいくらですか

A. 2026年時点の目安で1日8〜12万円程度に交通費が加わります。紹介会社経由なら手数料が2〜3割上乗せされ、地域や診療科で幅がありますので近隣の非常勤条件で確認してください。

Q. 開業医の休みが木曜に多いのはなぜですか

A. 統一の由来はなく、大学の手術日を避けた慣習、医師会や学校医の業務が平日午後に入ること、近隣医院との休診日の調整などが重なった結果といわれます。

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この記事を書いた人

佐藤雄亮(さとう ゆうすけ)。整形外科医、横浜市立大学医学部2016年卒。医師の不動産株式会社 代表取締役。複数の法人を経営しながら、病院・クリニックの経営改善・再生と事業承継の支援に取り組んでいます。毎月220名以上の医師が参加するコミュニティを運営。著書『初心者からはじめる医師の不動産投資』。

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