クリニックの求人に応募が来ない理由|今日直せる求人票の書き方

この記事の結論

  • 応募が来ない原因の多くは給与ではなく求人票の情報不足です
  • 下限給与・残業の実態・1日の流れを書くと応募は動きます
  • 掲載先は2つ以上に分け、応募には24時間以内に返信します

「求人を出しているのに、一件も応募が来ない」。クリニックの院長先生から、この相談を毎月のようにいただきます。先に結論をお伝えします。クリニックの求人に応募が来ない原因の多くは、給与額そのものではなく、求人票に載っている情報の量と順番にあります。条件をそのままにしても、書き方と掲載の仕方を変えるだけで応募が動き出した例を、私自身いくつも見てまいりました。

私は現役の整形外科医として診療を続けながら、複数の法人の経営と、経営が苦しくなった病院・クリニックの立て直しのお手伝いをしております。医師向けのコミュニティも運営しており、毎月220名以上の先生方とやり取りをしておりますが、採用はほぼ必ず論点になるテーマです。この記事では、求人票のどこを直せば応募が戻るのかを、明日から手を付けられる形でお伝えします。

目次

なぜクリニックの求人に応募が来ないのか

まず、原因を切り分けます。応募率とは、求人ページを見た人のうち実際に応募まで進んだ人の割合を指します。求人媒体では0.5〜2%程度が一つの目安といわれますので、応募が1件ほしければ、単純計算で50〜200回は求人ページが見られている必要があります。

応募1件を得るために必要な求人ページの閲覧数

応募率0.5%の場合200回
応募率1%の場合100回
応募率2%の場合50回

求人媒体の応募率0.5〜2%から単純計算した目安。実際の数値は媒体の管理画面でご確認ください。

この前提に立つと、「応募が来ない」という状態は次の3つに分解できます。

  1. そもそも求人が見られていない(掲載先・掲載期間・検索されるキーワードの問題)
  2. 見られてはいるが、応募ボタンまで進んでいない(求人票の中身の問題)
  3. 応募はあるが、面接前に辞退されている(連絡スピードと対応の問題)

多くの院長先生は1番だけを疑って、掲載費を追加されます。しかし私が実際に管理画面を拝見すると、閲覧数は十分あるのに応募がゼロ、という2番のケースがかなり多いのが実情です。閲覧数と応募数は媒体の管理画面でほぼ確認できますので、費用を足す前に、この数字を見るところから始めていただきたいと思います。

応募が来ないクリニックに共通する5つの原因

※写真はイメージです

拝見していて頻度が高い順に、5つ挙げます。ご自身の求人票と照らし合わせてみてください。

原因 よくある書き方 直し方
給与の幅が不明 「給与:経験により優遇」 下限額を必ず明記。「月給21万円〜(経験3年で23万円の例)」と実例を添える
残業の実態が不明 「9:00〜18:00(休憩60分)」だけ 「実働8時間・平均残業月5時間程度」と実績値を書く
求める人物像が抽象的 「明るく元気な方」 「レセプト未経験可。1年目は先輩が横について指導します」と教育体制を書く
掲載先が1つだけ ハローワークのみ 検索型媒体と自院サイトの採用ページを併用し、流入経路を2つ以上に
返信が遅い 院長が週末にまとめて確認 24時間以内に一次返信。担当者を決めて権限を渡す

とりわけ影響が大きいのは、最初の「給与の幅が不明」です。求職者は複数の求人を並べて比較しますので、金額が書かれていない求人は比較の土俵にすら乗りません。「経験により優遇」は、書き手からすれば誠実な表現でも、読み手にとっては情報がない状態と同じです。

受付の求人だけ応募が来ないのはなぜか

「看護師は採れるのに、受付の求人が来ない」というご相談も増えております。理由はシンプルで、受付・医療事務の募集は、医療業界の中だけで競合しているわけではないからです。同じ地域の同じ時給帯で、事務職・小売・飲食・コールセンターと並べて比較されています。

ここで「医療事務経験者・レセプト経験必須」と条件を絞ると、母集団が一気に小さくなります。私がお手伝いする際は、まず次の3点を確認しています。

  • 時給が地域相場の下限に張り付いていないか:近隣のスーパーや事務職の募集時給と並べて比較します。数十円の差でも応募数は変わります。
  • 未経験可にできないか:レセプトは経験より教育の問題です。「入職後3か月は先輩と2人体制」と書けるだけで、応募の裾野は広がります。
  • 働く時間の選択肢があるか:扶養内、週3日、9時〜14時のみ、といった枠を用意すると、子育て中の方や再就職層に届きやすくなります。

受付は、患者さんが最初と最後に接する職種です。採用できない状態が続くと、既存スタッフの負担が増え、接遇が落ち、口コミ評価にも影響します。優先度を下げずに取り組む価値のある職種だと考えております。

応募が増える求人票の書き方【7ステップ】

※写真はイメージです

実際に手を動かす順番でまとめます。所要時間は1〜2時間程度です。

  1. タイトルに条件を入れる
    「医療事務募集」ではなく「【未経験可】整形外科クリニックの受付・医療事務/月給21万円〜/残業ほぼなし」のように、職種・給与・特徴を並べます。
  2. 給与の下限と実例を書く
    モデル年収、賞与実績(例:年2回・計2.5か月分の実績)まで書けると信頼性が上がります。
  3. 1日の流れを時系列で載せる
    8:45出勤、9:00受付開始、12:30休憩、といった具合です。求職者が最も知りたい「働く自分の姿」が想像できます。
  4. スタッフ構成を書く
    「常勤5名・パート3名、20代〜50代、平均勤続4年」など。人数と年齢層は、応募をためらう不安の大部分を解消します。
  5. 教育体制を具体化する
    期間、担当者、使用するマニュアルの有無を書きます。
  6. 写真を3枚以上入れる
    外観、受付まわり、スタッフの後ろ姿でも構いません。文字だけの求人と写真つきでは、閲覧後の離脱率が明らかに違います。
  7. 応募方法を1つに絞る
    電話・メール・フォームを併記すると迷いが生まれます。フォームなど1経路に決め、「24時間以内にご連絡します」と添えます。

なお、医療機関の広告には医療法上の規制がありますが、求人票は患者さん向けの医療広告とは扱いが異なります。とはいえ自院サイトの採用ページは診療内容の記載と地続きになりやすいため、表現に迷う場合は社会保険労務士や専門家にご確認ください。労働条件の明示ルールも改正が続いておりますので、2026年時点の最新の内容をご確認いただくのが安全です。

掲載先の選び方と採用コストの目安

「どこに出せばよいか」というご質問も多くいただきます。一般的な目安を整理します。金額は地域や時期で変動しますので、あくまで比較のための概算としてご覧ください。

掲載先 費用の目安 向いている職種・特徴
ハローワーク 無料 受付・パート。地域密着だが掲載内容が定型で差別化しにくい
検索型の求人サイト 無料掲載+クリック課金(1クリック20〜50円程度) 全職種。予算を絞って試せる。自院の採用ページと相性が良い
医療系の求人媒体 数万〜数十万円/掲載 看護師・技師など有資格者。母集団の質は安定しやすい
有料職業紹介 理論年収の20〜30%程度(年収400万円なら80〜120万円) 常勤の有資格者。急ぎのときの選択肢。定着しないと費用対効果が悪化
自院サイトの採用ページ 制作費のみ(実質固定費) 全職種。他媒体からの受け皿になる。長期的に最も効率が良い

急ぎで紹介会社だけに頼る場合

常勤1名あたり100万円前後の手数料が発生し、半年で退職されると費用は戻りません。

理論年収の20〜30%程度が目安

自院サイト+検索型媒体に組み替えた場合

自院サイトに採用ページを1枚作り、そこへ検索型媒体から流入させる形にします。

制作費は実質固定費/クリック課金は1クリック20〜50円程度

私の見立てでは、まず自院サイトに採用ページを1枚作り、そこへ検索型媒体から流入させる形が、費用対効果の面で最も安定します。紹介会社を使う場合も、1名あたり100万円前後の費用が半年で退職して消えるリスクを踏まえ、入職後の受け入れ体制まで含めて設計されることをお勧めします。

職員の方からの紹介(リファラル)に紹介手当を出す方法もありますが、支給の可否や金額は就業規則への定めが前提となり、法令上の整理も必要です。導入前に社会保険労務士へご確認ください。なお、患者さんの紹介に対して金銭を支払う類の設計は法規に触れますので、採用の話とは切り離してお考えください。

それでも採用できないときに見直す3点

求人票と掲載先を整えても動かない場合、原因は採用の外側にあります。

  1. 離職率:職員の年間離職率が20%を超えていると、常に求人を出し続ける状態になります。求人費を追加する前に、直近2年で辞めた方の退職理由を書き出してみてください。同じ理由が3件以上並ぶなら、そこが本当の課題です。
  2. 地域での評判:医療事務の求職者は狭い地域内で情報を共有しています。口コミサイトのスタッフ評価や、以前の求人が長期間掲載され続けていないかを確認します。「ずっと募集している院」は、それ自体が敬遠される材料になります。
  3. 意思決定のスピード:面接から内定連絡までが1週間を超えると、他院に決まってしまいます。院長がすべて決裁する体制であれば、一次面接の権限を事務長や主任へ渡すことをご検討ください。

最後に、明日から着手できる形にまとめます。

  • 媒体の管理画面で閲覧数と応募数を確認する
  • 給与の下限額と平均残業時間を求人票に追記する
  • 1日の流れとスタッフ構成を書き足す
  • 写真を3枚追加する
  • 応募への一次返信を24時間以内と決め、担当者を指名する

この5つだけでも、閲覧はあるのに応募がゼロという状態からは抜け出せることが多いと感じております。

採用は、経営者としての先生の考え方が最も素直に表れる領域です。求人票は条件の一覧ではなく、これから一緒に働く方への最初の説明資料だと捉え直していただくと、書くべきことは自然と見えてまいります。

よくある質問

Q. クリニックの求人に応募が来ないとき、まず何を直すべきですか

A. 求人票の給与欄です。「経験により優遇」をやめ、下限額とモデル年収、賞与実績を明記してください。求職者は金額のない求人を比較対象から外すためです。

Q. 受付・医療事務の求人が来ないのは時給が原因ですか

A. 時給だけではありません。受付は他業種と同じ時給帯で比較されるため、地域相場の確認に加え、未経験可にすることと扶養内や週3日など勤務時間の選択肢を用意することが有効です。

Q. 求人にかける費用はどれくらいが目安ですか

A. 検索型媒体はクリック課金で1クリック20〜50円程度、有料職業紹介は理論年収の20〜30%が目安です。まず自院の採用ページを整え、少額の課金型から試す順序をお勧めします。

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この記事を書いた人

佐藤雄亮(さとう ゆうすけ)。整形外科医、横浜市立大学医学部2016年卒。医師の不動産株式会社 代表取締役。複数の法人を経営しながら、病院・クリニックの経営改善・再生と事業承継の支援に取り組んでいます。毎月220名以上の医師が参加するコミュニティを運営。著書『初心者からはじめる医師の不動産投資』。

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