クリニックのスタッフ適正人数|患者数と診療科別の計算方法

この記事の結論

  • 適正人数は常勤換算で数え、患者数の積み上げと人件費率の上限で挟む
  • 受付は1人30〜40人、看護師は25〜35人が1日の対応目安
  • 開業時はピーク必要数の7割を常勤、残りをパートで吸収する

「うちのクリニックのスタッフ適正人数は、結局何人なのでしょうか」。院長先生方からいちばん多くいただくご相談のひとつです。忙しいから増やしたい、けれど人件費が怖い。その板挟みで判断が止まってしまう。先に結論をお伝えします。適正人数は、1日患者数から積み上げた必要数と、人件費率から逆算した上限数、この2つで挟み込んで決めます。感覚で足していくと、人件費率は必ず高止まりします。

私は現役の整形外科医として診療を続けながら、複数の法人経営と、病院・クリニックの経営改善のお手伝いをしております。その中で何十件と人員配置を見てまいりましたので、実務で使っている計算の順番をそのままお伝えします。

目次

クリニックのスタッフ適正人数とは?まず「常勤換算」で数える

クリニックのスタッフ適正人数とは、診療の質と待ち時間を保ちながら、人件費率が経営を圧迫しない範囲に収まる常勤換算の人数のことです。常勤換算(じょうきんかんさん)とは、パートも含めた全員の労働時間の合計を、常勤スタッフ1人分の所定労働時間で割った数え方をいいます。

たとえば週40時間が常勤1人分のクリニックで、常勤2名と週20時間のパート3名がいれば、2+(20×3÷40)=3.5人です。頭数では5人ですが、実際に回っている戦力は3.5人分。ここを頭数のまま数えているために、「5人もいるのに回らない」という感覚のずれが起きます。人員配置を検討するときは、必ず常勤換算に直してから始めてください。

もうひとつ、適正人数は唯一の正解があるものではなく、幅で持つものだと考えております。同じ1日40人の内科でも、電子カルテや自動精算機が入っているか、予約制か、注射や処置がどれだけあるかで、必要数は1人分ほど変わります。以下の目安は「自院の出発点」としてお使いください。

適正人数の計算方法は?患者数から積み上げ、人件費率で上限を切る

※写真はイメージです

私が使っている手順は単純です。積み上げと逆算を両側から当てて、重なった範囲を採用します。

  1. 患者数から積み上げる:1日平均患者数を、職種ごとの「1人あたり対応患者数の目安」で割ります。目安として、受付・医療事務は1人あたり1日30〜40人、看護師は処置量にもよりますが1人あたり25〜35人程度です。1日40人の内科なら受付1.0〜1.3人、看護1.1〜1.6人。ここに院長の診療補助と欠勤対応の余白を0.5〜1.0人分足して、常勤換算3.0〜4.0人あたりが出発点になります。
  2. 人件費率から上限を切る:年間医業収入に、許容できるスタッフ人件費率を掛け、1人あたり年間人件費で割ります。1人あたりの年間人件費は、社会保険料の事業主負担や賞与を含めると給与額面の1.15〜1.25倍で見ておくと、大きくは外しません。
  3. 業務量で微調整する:レセプト期、健診・予防接種の繁忙期、リハビリの時間帯偏在など、ピークに合わせて常勤を置くと年間では過剰になります。ピークはパートやスポットで埋め、谷に合わせて常勤を置く。これが人件費率を壊さない基本の形です。

逆算のイメージを持っていただくために、無床診療所でよく見る水準を並べます。

医業収入に対する人件費の水準(目安)

総人件費(院長報酬含む)40〜50%
スタッフ人件費(適正の目安)20〜25%
要注意ライン(スタッフ分)28%超

一般にいわれる水準をもとにした目安です。診療科・自費比率・院長報酬の取り方で変動します。

具体的に置いてみます。年間医業収入8,000万円で、スタッフ人件費を20〜25%とすると1,600万〜2,000万円。1人あたり年間450万円(額面360万円+法定福利費等)とすれば、常勤換算で3.5〜4.4人です。積み上げの3.0〜4.0人と重なりますので、この帯であれば現場としても経営としても無理がない、と判断します。

問題は重ならないときです。積み上げが5人なのに逆算では3人しか置けないなら、それは増員で解決する話ではありません。患者単価か患者数か、業務の設計か、どれかを先に動かす局面だという合図です。

診療科別のクリニック人員配置の目安は?

診療科によって、患者1人にかかる手間の質がまったく違います。以下は1日患者数を想定した常勤換算の目安で、医師は院長1名を前提としています。

診療科 1日患者数の想定 常勤換算の目安(医師除く) 配置のポイント
内科(一般) 40人 3.0〜4.0人 受付2・看護2が基本形。健診と予防接種の時期はパートで上乗せ
整形外科 60人 6.0〜8.0人 リハビリの届出内容で必要人員が変わる。施設基準の確認が先
皮膚科 50人 3.0〜4.0人 回転が速く受付・会計の比重が高い。自費物販があれば+0.5人
眼科 40人 4.0〜5.0人 検査人員(視能訓練士)の確保が待ち時間を左右する
小児科 50人 4.0〜5.0人 季節変動が大きい。繁忙期をパートで吸収する設計が前提
精神科・心療内科 30人 2.0〜3.0人 予約制で平準化しやすく、少人数でも回しやすい

いずれも常勤換算の目安であり、電子カルテ・自動精算機・予約システムの導入状況で1人分前後は動きます。

特に注意していただきたいのが、施設基準が絡む科です。整形外科の運動器リハビリテーションのように、届出の内容によって配置すべき従事者が定められている場合、人員は「経営判断」ではなく「要件」になります。2026年時点でも改定のたびに要件は動きますので、増減を検討する前に必ず最新の施設基準をご確認ください。私自身が整形外科ですので、ここは毎回いちばん慎重に見ております。

開業時のスタッフ人数は何人から始めるべきか

※写真はイメージです

開業のご相談で最も多い失敗が、初日から完成形の人数をそろえてしまうことです。開業直後の患者数は計画の5〜7割で立ち上がることが珍しくなく、そこに満床運転の人件費が乗ると、いちばん資金が薄い時期に固定費だけが重くのしかかります。

よくある開業計画

計画患者数のピークに合わせ、常勤5名を開業日からそろえる

立ち上がり期のスタッフ人件費率が40%を超えやすい

見直し後

常勤3名+パートで開業し、患者数の実績を見て3〜6か月ごとに増員する

固定費を抑えたまま、繁忙の実態に合わせて配置を決められる

私がお勧めしているのは、ピーク時の必要人数の7割を常勤で採用し、残りをパートと勤務時間の調整で吸収する形です。人を減らすのは、増やすことの何倍も難しい。減らす前提の設計をせずに済むよう、少なめに始めて実績を見ながら足していく。この順番のほうが、結果としてスタッフに対しても誠実だと考えております。

増員すべきか、仕組みを変えるべきかの見分け方

「人が足りない」というご相談の半分ほどは、増員では解決しません。業務の設計か、定着の問題であることが多いためです。次のチェックリストで切り分けてみてください。

  • 直近3か月の1日平均患者数が、前年同期比で1割以上増えている
  • 受付の滞留や電話の取りこぼしが、特定の時間帯ではなく終日起きている
  • 残業がスタッフ全員に均等に発生している(特定の1人に偏っていない)
  • 予約制・Web問診・会計自動化など、業務量を減らす手はすでに打ち切っている
  • 直近1年の離職が0〜1名で、採用すれば定着する状態にある

5つのうち4つ以上に当てはまるなら、素直に増員の局面です。2つ以下であれば、増やしても同じ苦しさが人数分だけ増えます。残業が特定の1人に偏っているなら業務の割り振りの問題ですし、離職が続いているなら採用の前に定着を見るべきで、そもそも求人に応募が来ない状態のまま増員計画を立てても前には進みません。

また、院長ご自身が事務作業を抱え込んでいるために「人手が足りない」と感じているケースも多く見ております。その場合に必要なのはスタッフの増員ではなく、院長の業務を外に出す設計です。この点は週1日休む仕組みの作り方で詳しくお伝えしました。

明日から始める人員計画の見直し5ステップ

  1. 全員を常勤換算に直す
    雇用形態を問わず月間の総労働時間を集計し、常勤1人分の所定労働時間で割ります。今の実戦力を数字にするところから。所要30分ほどです。
  2. 職種別に必要数を積み上げる
    直近3か月の1日平均患者数を、受付30〜40人・看護25〜35人の目安で割り、欠勤対応の余白を0.5〜1.0人分足します。
  3. 人件費率から上限を出す
    年間医業収入×20〜25%÷1人あたり年間人件費。ステップ2の積み上げと重なるかを確認します。
  4. ピークと谷を分けて配置する
    曜日別・時間帯別の患者数を並べ、谷に常勤、ピークにパートを当てます。ここで1人分は変わります。
  5. 3か月ごとに見直す
    増員は一度に1名まで。待ち時間と残業時間の変化を数字で確認してから、次の1名に進みます。

この5つを一度通すだけで、「なんとなく足りない」が「火曜午前にあと0.5人分足りない」まで具体化します。そこまで来れば求人票にも書けますし、シフトにも落とせます。人員計画とは、感覚を数字に翻訳する作業だとお考えください。

増やす前に、今どれだけの戦力で、どこがどれだけ足りていないかを測る。この順番を守るだけで、人件費率は戻らないところまで行かずに済みます。もし院長ご自身の疲れが判断を鈍らせていると感じるなら、院長が疲れたと感じたときに見直す仕組みもあわせてご覧ください。なお、労務管理や施設基準の個別判断は、社会保険労務士や地方厚生局へのご確認を必ず併せてお願いいたします。

よくある質問

Q. クリニックのスタッフは何人が適正ですか?

A. 1日患者数40人の内科なら常勤換算3〜4人が一つの目安です。受付は1人あたり30〜40人、看護師は25〜35人で割り、スタッフ人件費率20〜25%の上限と重なる範囲で決めます。

Q. 開業時のスタッフ人数は何人がよいですか?

A. ピーク時の必要人数の7割を常勤で採用し、残りをパートで吸収する形をお勧めしております。開業直後は計画の5〜7割で立ち上がることが多く、減員は増員よりはるかに難しいためです。

Q. スタッフの人件費率はどのくらいが目安ですか?

A. 無床診療所では院長報酬を含む総人件費が医業収入の40〜50%、スタッフ分は20〜25%程度が目安です。28%を超えると採算が苦しくなりやすく、増員より業務設計の見直しが先になります。

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この記事を書いた人

佐藤雄亮(さとう ゆうすけ)。整形外科医、横浜市立大学医学部2016年卒。医師の不動産株式会社 代表取締役。複数の法人を経営しながら、病院・クリニックの経営改善・再生と事業承継の支援に取り組んでいます。毎月220名以上の医師が参加するコミュニティを運営。著書『初心者からはじめる医師の不動産投資』。

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