ワンルームマンション投資の節税は嘘?|勤務医の実例数字で検証

「先生は税率が高いので、不動産投資をすれば節税になりますよ」。勤務医の先生なら、電話や職場で一度はこのセールストークを聞いたことがあるはずです。結論から言うと、このトーク自体は嘘ではありません。仕組みの上では、たしかに税金は減ります。問題は、勧められるワンルームマンション投資の多くで、減る税金より失うお金のほうがはるかに大きいことです。

この記事では、「節税になる」と言える根拠の仕組みを正直に説明したうえで、ワンルームで実際にいくら節税できるのかを検証し、節税が効く場面と効かない場面を切り分けます。

申し遅れました。私は整形外科医として働きながら2019年に不動産投資を始め、現在はアパート9棟と戸建て5軒を保有し、年間の家賃収入は3000万円を超えています。毎月200名以上の医師に不動産投資を教える中で、「節税のつもりで買ったワンルーム」の相談を数えきれないほど受けてきました。その経験をもとに、業者には少し不都合な数字も含めて書きます。

目次

「不動産投資は節税になる」は嘘ではない

まず、営業トークの根拠になっている仕組みを説明します。ここを理解しないと、「節税は全部嘘だ」という極論と「やっぱり節税になるんだ」という早合点の間で揺れるだけになるからです。

柱は2つあります。1つ目が減価償却。建物の価値が帳簿の上で年々減っていく分を、実際にはお金が出ていっていないのに経費として計上できる仕組みです。2つ目が損益通算。不動産の帳簿が赤字になったとき、その赤字を給与所得と合算できる制度です。合算すると課税対象の所得が下がるので、源泉徴収で先に払っていた所得税の一部が還付され、翌年の住民税も下がります。

税率の高い層ほど、同じ赤字額から戻ってくる税金は大きくなります。「先生のような高所得の方ほど効果が大きいんです」というトークも、この意味では正しい。ここまでは嘘ではないのです。

ただし冷静に見てほしいのは、還付は赤字を作ったから戻ってきたお金だという点です。税金が10万円減っても、その赤字の中身として30万円が実際に出ていっているなら、トータルでは20万円の負けです。つまり検証すべきは「節税になるかどうか」ではありません。節税で戻る額と、その物件で失う額のどちらが大きいかです。以下、この物差しでワンルームを見ていきます。

ワンルームの節税額の実態

初年度だけ大きく見えるカラクリ

物件を買った初年度は、不動産取得税や登記費用、ローンの諸費用といった初期費用がかさむため、帳簿は大きな赤字になります。給与と損益通算すれば、年収や物件によっては年50万〜100万円ほどの還付を受けるケースもあります。この金額を見て「本当に節税になった」と感じてしまうわけです。

しかしこの赤字の主役は、買った年にしか発生しない一度きりの経費です。だから還付の大部分も、初年度限りです。

2年目以降は雀の涙になる

2年目からは、経費の中心が減価償却と管理費などに変わります。ところが新築や築浅のワンルームは鉄筋コンクリート造で、償却期間が47年と長い。毎年計上できる減価償却費は小さく、家賃収入と相殺すると赤字はわずかしか残りません。還付は税率の高い先生でも年数万円程度、雀の涙の水準に落ち着きます。

業者はこれを知っているので、「還付が大きく効くのは購入初年度だけなんです。だから毎年1戸ずつ買い増すのがおすすめですよ」と続けます。節税トークが買い増しトークに化けたら、赤信号だと思ってください。

デッドクロスで、節税どころか税負担が増える

もうひとつ、先の話があります。減価償却はいつか終わりますが、ローンの返済はその後も続きます。しかも返済のうち経費にできるのは利息だけで、元本部分は経費になりません。

つまり、償却が切れると帳簿は黒字に転じて税金がかかり始めるのに、手元では元本返済でお金が出ていき続けます。この逆転はデッドクロスと呼ばれ、節税のために買ったはずの物件が、持っているだけで税負担を増やす存在に変わる分岐点です。いつ来るかは物件と借り方で違うので、個別の税務は必ず税理士に確認してください。

実例で検証する。還付された額と、失った額

仕組みの話だけでは実感が湧かないと思うので、私のもとに相談に来られた30代の勤務医の先生の実例で検証します。年収1200万円で、表面利回り5%のワンルームを営業トークに乗せられて10戸まで買い増した方です。経緯の全体は医師のワンルーム投資失敗の実例|年収1200万の勤務医が破産寸前になった全数字に書きましたが、ここでは節税に絞って数字を並べます。

まず戻ってきた側。毎年1戸ずつ買い増していたため初年度の還付効果が毎年発生し、年50万〜100万円が戻っていました。業者はこれを「それだけ儲かったということですよ」と言い換えて、翌年の買い増しを勧めてきたのです。

次に出ていった側。購入から約5年で家賃が下がり、収支は1戸あたり月5000円前後の持ち出しに転落。10戸あるので毎月5万〜10万円が出ていきます。さらに売却査定を取ると、残債2000万円に対して1700万〜1800万円。売るには1戸あたり200万〜300万円の手出しが必要で、10戸の単純計算で1000万〜2000万円規模の含み損でした。

還付で戻ったお金は、5年分を全部足しても数百万円。失ったお金はその数倍です。標語にすれば、「1万円の税金を減らすために3万円損する」構造がそのまま現実になった数字です。物件そのものが赤字である限り、節税は損失の一部が戻ってくる慰めにしかなりません。

節税が効く場面と、効かない場面

ここまでを整理すると、切り分けはシンプルです。

  • 効かない場面:収益の出ない物件を、節税を目的に買う場合。節税額より資産の毀損額が大きく、トータルで負けます。利回りの低いワンルームはこの典型です。
  • 効いているように見える場面:耐用年数を超えた築古物件を短期間で償却し、大きな赤字を作る手法。一時的な還付は大きいものの、償却した分だけ物件の帳簿上の価値が下がり、売却時にその差が利益として課税されます。実態は節税ではなく税金の繰り延べで、この検証は医師の不動産投資は節税になる?減価償却の罠と「本当の節税」を解説で数字を追っています。
  • 本当に効く場面:収益の出る物件を持ったうえで、経費や申告の制度を使う場合。ここで初めて、節税は資産形成と両立します。

「節税は全部嘘」ではないのです。効く場面はあります。ただしそれは、稼げる物件を持っているという前提の上にしか成り立ちません。

本当に税と向き合うなら、収益が先、節税が後

収益の出る物件を持つと、税務戦略の選択肢は一気に広がります。青色申告の特別控除、規模が育てば法人化による所得のコントロール。どれも利益があって初めて意味を持つ制度で、赤字物件をいくら集めても使い道がありません。制度の具体的な適用は税理士の領分なので、ここでは方向性だけ示します。

私自身の例で言えば、21万円で買った築40年超の戸建てを再生して利回り30%超で貸していたり、築50年の長屋6戸を1200万円で買って月18万円の家賃を得ていたりします。どれも節税のために買った物件ではありませんが、収益を生みながら、経費や償却の効果も当然に受けられています。順番が逆なのです。収益が先、節税は後。

逆に、電話や先輩の紹介で近づいてきて「節税」を前面に出す業者の物件は、ほぼ例外なく収益性が乏しいと思って警戒してください。収益で売れる物件なら、収益を前面に出して売り込めばいいからです。営業の具体的な手口と回避策は医師が不動産投資で騙される3つの罠|ワンルーム営業の手口と回避策にまとめています。

まとめ。「節税になります」への正しい返し方

  • 「不動産投資は節税になる」は嘘ではない。減価償却と損益通算で、税金は実際に減る
  • ただしワンルームの還付は初年度だけ大きく、2年目以降は年数万円程度。やがてデッドクロスで税負担はむしろ増える
  • 実例では、5年間の還付総額が数百万円に対し、含み損は1000万〜2000万円規模。「1万円の節税のために3万円失う」構造になりやすい
  • 節税が本当に効くのは、収益の出る物件を持ったうえで青色申告や法人化を使うとき。順番は収益が先、節税が後
  • 税率や制度の適用は人によって違う。個別の判断は必ず税理士に確認する

営業マンに「節税になりますよ」と言われたら、こう返してみてください。「この物件で、毎年いくら税金が減って、毎年いくらお金が出ていきますか。売るときはいくらで売れますか」。この3つに数字で答えられない提案は、節税ではなくただの損です。

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