不動産投資では、家賃収入の大きさだけを見ても実態はわかりません。物件の購入時には税金や仲介手数料がかかり、保有中も固定資産税、火災保険料、修繕費、入居者募集の広告費、融資返済が発生するからです。
私は2019年に不動産投資を始め、現在はアパート9棟・戸建て5軒を所有し、年間家賃収入は3,000万円です。しかし、3,000万円がそのまま手元に残るわけではありません。
一方で、目先の手残りが少ないから失敗とも限りません。返済期間を短く設定すれば、毎月のキャッシュフローは抑えられても、元金返済が速く進みます。医師が本業を続けながら取り組むなら、現在の手残りと将来の資産形成を分けて考える必要があります。
不動産投資の固定費は初期費用とランニングコストに分かれる
不動産投資に必要な費用は、大きく初期費用とランニングコストの2種類です。
物件購入時に発生する初期費用
初期費用には、不動産取得税、仲介手数料、司法書士への報酬、不動産登記費用、登録免許税などがあります。火災保険料も、契約時に5年分をまとめて支払う場合があります。
物件価格だけを基準に自己資金を準備すると、購入後の納税や支払いに対応できません。特に不動産取得税は購入から半年後や1年後に発生するため、あらかじめ資金を残しておく必要があります。
保有中に発生するランニングコスト
物件を所有している間は、次の費用が発生します。
- 固定資産税
- 火災保険料
- 修繕費
- 融資の元金と金利の返済
- 空室を埋めるための広告費
入居者募集の広告費として、不動産会社へ賃料の2〜3か月分を支払う場合もあります。満室時の年間家賃だけで収支を判断せず、空室や募集費用まで織り込むことが重要です。
2,300万円の一棟アパートで固定費を公開
私が所有する、ある地方都市の一棟アパートを例にします。人口と土地価格が上昇傾向にあるエリアで、駅から車で約10分、ファミリー向けの間取りと駐車場がある物件です。
購入価格は2,300万円、購入時の築年数は23年、表面利回りは11.5%、年間家賃収入は約260万円です。
購入時には、不動産取得税が45万円、登記費用と司法書士への報酬が約40万円、仲介手数料が75万円かかりました。初期費用は合計で約150万円です。
保有中の費用としては、火災保険料が5年間で33万円、年換算で約7万円です。固定資産税は土地と建物を合わせて年間20万円です。これに修繕費や入居者募集時の広告費が加わる可能性があります。
さらに大きいのが融資返済です。この物件では年間の元金返済が162万円、金利の支払いが12万円です。年間家賃収入が約260万円あっても、返済を含むランニングコストは約200万円になります。そのため、年間のキャッシュフローは大きくなく、月額では10万円弱です。
融資先や返済条件は収支を左右します。1棟目の融資を検討している方は、不動産投資の1棟目におすすめの銀行|融資先の選び方も参考になります。
キャッシュフローだけで不動産投資を判断しない
月10万円弱と聞くと、手残りが少ないと感じるかもしれません。しかし、この物件の融資期間は10年です。年間162万円ずつ元金を返しているため、残債は速いペースで減ります。購入から5年が経過した時点で、残債は半分ほどになり、1,000万円を下回っています。
元金返済は支出ですが、同時に借入残高を減らしています。キャッシュフローだけを見れば少なくても、返済が進んだ分だけ純資産は積み上がります。完済後は、それまで返済に充てていた家賃が手元に残りやすくなります。
本業の収入がある医師は、不動産収入だけで直ちに生活する必要はありません。極端に高い利回りと大きな手残りだけを追わず、10年後に残債がなくなった状態を目指す考え方が現実的です。
ただし、数字の見栄えだけで物件を選ぶのは危険です。表面利回りと実際の収支の違いについては、千葉県・利回り8%の築浅アパート|買う前に疑う3つの罠でも解説しています。
手残りまで見る指標については、表面・実質・ROI・CCRという4つの利回りの使い分けで解説しています。
まとめ
年間家賃収入が大きくても、初期費用、税金、保険料、修繕費、広告費、融資返済を差し引けば、手元に残る金額は限られます。だからこそ、購入前に実際の支出を具体的に計算する必要があります。
同時に、毎月のキャッシュフローだけで良し悪しを決めてはいけません。短い期間で元金返済を進める投資では、現在の手残りを抑えながら10年後の収益力を高められます。私は、目先の金額と残債の減少をセットで確認します。
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よくある質問
不動産投資はキャッシュフローだけで良し悪しを判断してよいですか?
判断してはいけません。家賃収入から税金や保険料、融資返済を差し引くと手残りは限られますが、返済期間が短い投資では元金返済が速く進み、純資産が積み上がります。目先の手残りと残債の減少をセットで確認することが重要です。
2,300万円の一棟アパートでは固定費が実際にいくらかかりますか?
購入時は不動産取得税45万円、登記費用と司法書士報酬約40万円、仲介手数料75万円の合計約150万円です。保有中は火災保険料が年換算約7万円、固定資産税が年20万円で、融資返済まで含めたランニングコストは年間約200万円になります。
不動産投資の固定費にはどのような種類がありますか?
初期費用とランニングコストの2種類に分かれます。初期費用は不動産取得税、仲介手数料、司法書士報酬、登記費用、登録免許税などです。保有中は固定資産税、火災保険料、修繕費、融資返済、入居者募集の広告費が発生し、不動産取得税は購入から半年後や1年後に発生する点に注意が必要です。
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