「不労所得がほしい」「給与にかかる税金を減らしたい」——医師の方が不動産投資に興味を持つきっかけは、だいたいこの2つです。私自身、現役の整形外科医として働きながら2019年に不動産投資を始めましたが、最初の入り口はまさに同じでした。ただ、その入り口の気持ちのまま「業者に言われるがまま」買ってしまうと、数百万円単位の赤字を背負う——それが不動産投資の怖いところです。
この記事では、2026年の市況(金利上昇・建築費やリフォーム費の高騰)を踏まえて、9割の医師が陥りがちな「負動産(負の資産になってしまう不動産)」の罠と、失敗を避けるための3つの絶対条件を、私・Dr.いなせが実際の保有物件の数字も交えながら解説します。
なぜ「資格職の医師」ほど不動産で失敗しやすいのか
受験勉強を勝ち抜き、医師免許という強力な資格を持つドクターは、本来とても優秀な方々です。ところが不動産投資に限っては、その優秀さがかえって油断につながることがあります。忙しくて自分で調べる時間がない、専門外なので業者を信頼してしまう、先輩ドクターの紹介だから安心してしまう——こうした流れで、収益性の低い物件を高値で掴んでしまうケースが後を絶ちません。
しかも2026年の市況では、勝てる物件と負ける物件の差がはっきり開いてきました。金利は上昇局面に入り、建築費・リフォーム費も高止まりしています。数年前なら多少の失敗も市況の上昇が救ってくれましたが、今はそうはいきません。ここからは、私が毎月200名以上の医師に不動産をお伝えする中で、繰り返し注意している「3つの絶対条件」を順に見ていきます。
絶対条件1:供給型のワンルーム・区分マンションを買わない
1つ目は、いわゆる供給型(新築でどんどん売り出されるタイプ)のワンルーム・区分マンションを買わないことです。これは私が繰り返しお伝えしている話で、私のもとに寄せられる相談でも、最も多い失敗パターンです。
不動産には、戸建て・アパート・一棟マンション・区分マンション、さらには駐車場や倉庫としての土地活用など、さまざまな種別があります。その中で区分ワンルームは、正直に言って最も儲かる可能性が低い種別です。理由はシンプルで、価格に対して家賃の絶対額が小さく、管理費・修繕積立金などのランニングコストも差し引かれるため、手元に残るお金(キャッシュフロー)が薄いからです。
「ワンルームは手がかからない」と勧められることがありますが、これは本質的な理由になりません。区分だろうがアパートだろうが、数千万円〜1億円超という金額を動かす以上、知識も経験もないまま「所有しているだけ」で勝てるほど甘い世界ではないのです。
「売ろうにも売れない」現実——数百万円の手出し
私のもとには、こんな相談が本当に多く届きます。
2年前に3,000万円で購入したワンルームを、売ろうと思ったら2,500万円でしか売れない。500万円の手出しをしないと手放せず、困っています。
これは決して珍しい話ではありません。1物件あたり300万〜500万円の含み損というのはよくある水準で、これを5部屋、10部屋と持っている先生もいます。5部屋で1部屋500万円の損失なら合計2,500万円、10部屋なら5,000万円。人生設計に与える影響は甚大です。
さらに見落とされがちなのが、医師特有のリスクです。区分を何部屋も抱えると、物件の価値に対して借入(ローン残債)が大きい「債務超過」の状態になりやすく、金融機関からの評価が下がります。すると、いざ開業のために融資を受けたいときや、マイホームを買いたいときに、それが足枷になって思うように借りられない——こうした事態も現実に起こっています。
「昔は儲かった」が通用しない2026年の市況
「5年前・10年前にワンルームを買った人は利益が出ている」という声もあります。これは事実ですが、その正体は物件そのものの実力ではなく、市況です。この10年ほどは金利が低く、不動産価格が右肩上がりだったため、利回りがどんどん低下(=価格が上昇)していきました。
- 表面利回り6.5%だった物件が6%で売れる(=価格が上がる)
- 6%の物件が5.5%、あるいは4.8%で売れる
※ここでいう利回りは「家賃 ÷ 価格」で計算する表面利回りです。返済・経費・税金を引いた後に手元に残る実質(手残り)とは別物なので、混同しないことが大切です。
この価格上昇の追い風があったからこそ、たとえ家賃が下がっても3,000万円で買った物件が3,100万〜3,200万円で売れる、といったことが起きていました。ところが今は、金利上昇で流れが逆回転しつつあります。仮に表面4.8%で買った物件で、借入金利が2%から2.5〜3%へ上がれば、返済負担が増えて手残りは一気に細り、赤字に転落しかねません。「何のために不動産投資をやっているのか分からない」状態です。だからこそ、過去の成功体験をそのまま今に当てはめるのは危険なのです。
絶対条件2:「投資」ではなく「賃貸経営」として経営者目線を持つ
2つ目は、スタンスの問題です。不動産投資は、株のような純粋な「投資」と、自分で汗をかく「事業」のちょうど中間にあります。だからこそ、業者の言いなりになるのではなく、物件を運営する経営者としての目線を持つ必要があります。具体的には、次のような力を自分の中に軸として持つイメージです。
- 相場感覚:その物件が割高か割安か、自分で判断できる
- 収支計算:表面利回りだけでなく、返済・経費を引いた手残りまで自分で試算できる
- 空室・修繕リスクの想定:満室前提で買わず、下振れも織り込む
- 入居付けの工夫:不動産会社に任せきりにせず、募集条件や原状回復に自分の意見を言える
- 業者への指示:「これはやる/これはやらない」を、根拠を持って判断できる
経費は意外と幅広く、修繕・原状回復費、入居募集の広告料、固定資産税・都市計画税、共用部の光熱費や清掃などのランニングコスト、そして所得税・住民税まで含めて考える必要があります。これらを引いた後に、いくら手元に残るのか——ここまで見て初めて「その物件を買うべきか」の判断ができます。この経営者目線が抜けている人は、どこかで必ず罠にはめられてしまいます。
参考までに、私が保有している物件の一例を挙げると、築38年・8戸のアパートを3,480万円で取得し、月の家賃は約29万円、表面利回りで約10%です。地方の築古では、築50年・6戸の長屋を1,200万円で取得して月18万円(表面約18%)といった物件もあります。いずれも区分ワンルームではなく、土地の価値が下支えとなり、間取りや入居者属性まで含めて総合的に判断できる一棟・戸建てだからこそ、手残りが確保できています。ちなみに極端な例では、21万円で買った築古戸建てを再生して月5.3万円で貸し、表面利回りは30%を超えました。数字の作り方は種別で大きく変わるのです。
絶対条件3:「節税」を目的にしない・信頼できる伴走者を持つ
3つ目は、節税を不動産投資の「目的」にしないことです。節税をきっかけに興味を持つのは、まったく問題ありません。私自身も給与から引かれる所得税・住民税の高さを見て、「何とかならないか」と検索したのが入り口でした。ただ、節税そのものが目的になると話は変わります。
まず前提として、節税は「税金の繰り延べ」でしかないケースが多い、という点を押さえてください。そして、大きく節税できるとうたわれる物件ほど、実は収益性が低い(利回りが低い=高値で仕入れさせられている)傾向があります。つまり「節税になります」というセールストークの裏に、高値掴みが潜んでいることが少なくないのです。
もう1つ、初心者が誤解しやすいのが「初年度の還付」です。不動産を買った初年度は、不動産取得税・仲介手数料・司法書士への登記(所有権移転)費用といった諸経費がかさむため、会計上は赤字になりがちです。その赤字を給与所得と損益通算すると、確定申告で税金が戻ってきます。ここで「先生、儲かりましたね」と言われるのですが——よく考えてみてください。手数料でつくった赤字で税金が戻っただけで、トータルでは得をしていません。ここを喜んでしまうのは、仕組みを理解できていないサインです。
だからこそ、「節税」を前面に打ち出す業者には特に注意してください。そのうえで、不動産投資は情報の非対称性が大きく、扱う金額も大きい世界です。生半可な知識で一人で挑むのではなく、実際に複数の物件種別と向き合い続けている人に伴走してもらいながら進めるのが、遠回りに見えて最短ルートです。誰をメンターとして味方につけるか——これも成否を分ける重要な要素です。
まとめ:9割が陥る「負動産」を避ける3つの絶対条件
忙しい医師が、限られた時間の中で不動産投資の失敗を避けるために。今日お伝えした3つの絶対条件を、最後に整理します。
- 供給型のワンルーム・区分マンションを買わない——最も儲かりにくく、売るに売れない「負動産」になりやすい。
- 「投資」ではなく「賃貸経営」として経営者目線を持つ——相場・収支・空室リスク・入居付けを自分で判断できるようにする。
- 節税を目的にせず、信頼できる伴走者を持つ——節税は繰り延べにすぎない。高値掴みを避け、正しい知識と味方で臨む。
私は現役の整形外科医として週1回の勤務を続けながら、アパート9棟・戸建て5軒を保有し、年間の家賃収入は3,000万円を超えました。特別な才能があったわけではなく、時間をかけて「やらなくてよかったこと」と「これを外すと勝てない条件」を一つずつ検証してきた結果です。同じ失敗を、これから始める先生方に繰り返してほしくない——その思いでこの発信を続けています。
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