「不動産投資を始めたいけれど、何から手をつければいいのか分からない」——医師の先生からよくいただく相談です。結論から言うと、最初に身につけるべきは物件の探し方でも融資のテクニックでもなく、「不動産投資を事業として捉えるマインド」です。これがない状態で始めると、どれだけ属性が良くても業者にカモにされて終わります。
私は整形外科医として働きながら2019年に不動産投資を始め、現在は週1勤務まで本業を減らし、アパート9棟・戸建て5軒、年間の家賃収入は3000万円を超えました。のめり込んでいた時期には自分で床や壁を塗るDIYもやりましたし、たくさんの業者さんと付き合ってきました。その経験をもとに、今は毎月200名以上の医師に不動産投資の勉強会や個別コンサルを行っています。この記事では、これから始める医師・高所得の方が必ず持つべき「3つの事業家マインド」を解説します。
医師はDIY投資家を「そのまま」真似してはいけない
先日、ごく一般的な会社員の方がボロ戸建てを自力で再生して資産を築くノウハウ動画を見ました。数百件の電話営業で物件を仕入れ、床張りから雨漏りの修理まで自分の手でやる。お金の代わりに自分の汗と時間を投資して、表面利回り20%を叩き出す——手法として立派だと思います。不動産投資は無から利益を生むものではなく、信用・属性・時間・お金のどれかを投じるもので、この方は時間と労力を選んだわけです。
ただ、医師がこれをそのまま真似すべきかというと、答えはノーです。理由は2つあります。
- 怪我のリスク:私の知り合いの大家さんは、作業中に脚立から落ちて肩の付け根(上腕骨の近位)を骨折し、手術を受けました。私は整形外科医なのでよく分かりますが、この骨折は手術とリハビリを頑張っても腕が上がりにくくなることが多い。オペをする先生なら、その怪我ひとつで本業を失いかねません。
- 時給単価の問題:常勤でも非常勤でも、医師の時給は高い。その時間を削って自分で床を張るのが合理的か、一度ご自身の時給を計算してみれば答えは出ます。
ではDIY投資家から学ぶことはないのか。逆です。手は動かさなくていい。しかし「姿勢」は絶対に盗まなければいけません。見積もりも自分で判断できない状態で「この業者さんは信頼できるから」と丸投げしていたら、いつか必ずぼったくりの請求を吹っかけられ、本来あなたが得るはずだった利益を業者に持っていかれて終わります。以下、盗むべき3つのマインドです。
マインド①:不動産は金融商品ではなく「事業」である
DIY投資家は、不動産を「お金を投げれば増える投資商品」とは捉えていません。安く商品(物件)を仕入れ、加工(リフォーム)し、客付けして、家賃という売上をもらう——完全にビジネスとして回しています。この記事をお読みの先生方にも、同じスタンスを取っていただきたいのです。アパートや戸建てを買うのは金融商品を買うことではなく、「不動産賃貸業という会社を回すための部品を仕入れる」ことです。
実際、不動産投資では土地の形・広さ・築年数・間取り・駐車場の有無などを見て買う/買わないを自分で判断し、入退去のたびに家賃設定やリフォームの範囲、業者さんとの付き合い方を考え続ける必要があります。「ほったらかしでOK」という商品ではありません。
人任せの投資家が行き着く先——サブリースの罠
「とりあえず買って任せておけばいいんでしょう」という人任せの投資家が陥りやすいのが、サブリース(いわゆる家賃保証)契約です。私のコミュニティでも最近議論になりました。営業マンは「30年家賃保証されます」と言ってきますが、実態はこうです。
- 空室や家賃下落が続くと、サブリース会社の申し出で保証家賃はどんどん引き下げられる。オーナー側に実質的な拒否権はない
- 契約書には小さく「リフォームはサブリース会社・管理会社の指定業者に限る」と書かれていることが多い。自分で発注すれば50万円で済む工事に150万円を請求されても、断れない契約になっている
- 一度契約すると外すのが非常に難しい。私はサブリース解約を専門に扱う会社を知っていて困っている先生には紹介しますが、専門業者でも時間とお金がかかる
契約時のシミュレーションで示された「保証家賃」は机上の空論と思ってください。判断を人に預けた投資家は、こうして利益を吸い上げられ続けます。事業主として自分で判断する——これが1つ目のマインドです。
マインド②:「腐ったイチゴの理論」——修繕は最低限を見極める
イチゴの一部が腐っていたら、そこだけ切り取って食べればいい。丸ごと捨てる必要はない——これは修繕・リフォームにおいて非常に大事な考え方です。業者さんの言いなりに何でも新品交換・フルリフォームをしていたら、いくらお金があっても足りません。内装費も人件費も年々高騰しているいま、何も考えないフルリフォームは不動産投資の利益をそこで食い潰します。
大事なのは、「空室を埋めるのに最低限どこを直せば足りるか」「この家賃帯ならここまでで十分」を見極める感覚です。自分でDIYできなくても構いません。「この工事なら相場はいくらか」というコスト感を持っているだけで、過剰な見積もりを見抜けるようになります。
私の物件に、21万円で買った築40年超の6DK戸建てがあります。もちろんそのままでは貸せませんが、直すべき所と直さなくていい所を見極めて再生し、今は月5.3万円の家賃で稼働しています。リフォーム費用まで含めた総額で見ても表面利回りは30%を超えています。逆に言えば、この物件で言われるがままにフル改装していたら、利回りは何分の一かに沈んでいたはずです。修繕の見極めひとつで、同じ物件がまるで別の投資になります。
マインド③:人との関係性をサボらない
先ほどのDIY投資家は、良い物件を見つけるために1日何十件も不動産屋に電話や訪問をしていました。この行動量そのものより、スタンスが重要です。買いたい人は大勢いる一方で売り物は限られており、「誰に紹介するか」は業者さんが選んでいるからです。
不動産業界は、レインズや健美家・楽待といったポータルサイトがある今でも、直接のつながりがものを言うクローズドな世界です。「この人になら紹介してあげたい」と思われる振る舞いと信頼関係を築けるかどうかで、回ってくる物件の質が変わります。ここを面倒くさがって内輪で済ませる人は、正直、不動産投資には向いていません。医師や高所得者こそ、自ら業者さんと直接付き合う姿勢を持ってください。人と人とのつながりは、どんな事業でも一番効きます。
補足:築古戸建てを買うなら最低限ここを見る
戸建て投資は、隣人に気を使わず住めるためファミリー層に好まれ、入居期間が長くなりやすい優れた物件種別です。始めるなら、修繕の相場感に加えて次のポイントを押さえてください。
- 差別化リフォーム:クロス・照明・クッションフロアなどで「ちょっとおしゃれだな」と内覧者に思わせるだけで、入居は早く決まり、長く住んでもらえる
- 残置物は恐れない:前の持ち主の荷物が残っていても、相見積もりを取れば撤去は50万円以下で済むことが多い。それだけでNGにするのはもったいない
- 再建築できるか:築30年を超える安い物件を買うなら、建物が使えなくなったとき解体して建て直せることが出口の柔軟性を左右する。前面道路の幅や私道の持ち分は必ず確認
- 擁壁(ようへき=崖を支える壁)に注意:現地で物件をぐるっと一周し、高さ2mを超える擁壁の上に立っていないか見る。再建築時に役所への申請と強固な擁壁工事が必要になり、500万〜1000万円級の追加出費になり得る。「利回りが異様に高いのに売れ残っている物件」は擁壁上であることが多い
- 土地の価値が残るか:接道がない、階段でしか辿り着けない——そんな土地は建物が寿命を迎えた時点で価値がゼロに収束する。解体後も土地値が担保される物件を選ぶ
まとめ
- 医師はDIYを真似しなくていい。怪我ひとつで本業を失うリスクと時給単価を考えれば、投じるべきは時間より信用とお金
- ①事業家マインド:不動産は金融商品ではなく賃貸業という事業。判断を人任せにすると、サブリースのような「断れない契約」で利益を吸われる
- ②腐ったイチゴの理論:直すのは腐った部分だけ。修繕の相場感と「この家賃帯ならここまで」の見極めが利回りを守る
- ③関係性をサボらない:良い物件は「紹介したい人」に流れる。業者さんと直接付き合う姿勢が物件の質を決める
- 築古戸建ては再建築の可否・擁壁・土地値まで見て、最後まで価値が残る物件を選ぶ
医師の不動産投資を、正しい順番で学ぶ

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