不動産投資の1棟目は個人名義|高所得者ほど有利な理由

不動産投資の1棟目は、個人名義で購入する選択が有効です。特に年収1,000万円以上の方は、初年度に発生する費用を個人の所得と通算できる可能性があるため、個人名義のメリットが大きくなります。

私は現役の整形外科医として働きながら、2019年に不動産投資を始めました。現在はアパート9棟・戸建て5軒を所有し、年間家賃収入は3,000万円です。私自身は法人からスタートしましたが、実践を通じて税金や融資の仕組みを学んだ今なら、1棟目を個人名義で購入する方法も有力だと判断します。

ただし、法人名義が不利という話ではありません。将来の規模拡大まで見据え、1棟目と2棟目以降を分けて考えることが重要です。

目次

不動産投資は1棟目で方向性が決まる

不動産投資では、最初に購入した物件と同じ種別を買い進める傾向があります。区分マンションから始めれば区分マンション、戸建てから始めれば戸建て、1棟アパートから始めれば1棟アパートを選びやすくなります。

そのため、1棟目で自分に合わない手法を選ぶと、規模拡大が遅れます。収益性の低い物件を購入し続ければ、問題も積み上がります。

銀行は1棟目の収支も確認します。最初の物件が恒常的な赤字であれば、次の融資を受けにくくなり、売却にも苦労します。名義だけでなく、物件自体の収益性と出口まで検討する必要があります。売却から逆算する考え方は、不動産投資は出口戦略で決まる|「買う前に売り方を決める」究極の考え方でも解説しています。

1棟目を個人名義で購入する3つのメリット

開業費用を抑え、青色申告特別控除を使える

法人設立には、株式会社か合同会社かによって15万〜25万円程度の費用がかかります。一方、個人の開業届には設立費用がかかりません。

さらに、事業的規模に達していない段階でも、要件を満たせば10万円の青色申告特別控除を利用できます。所得税や住民税が計算される前の所得から控除できる点は、個人名義の明確な利点です。

初年度の費用を個人所得と通算できる可能性がある

物件を購入した初年度には、不動産取得税、仲介手数料、司法書士への報酬、登録免許税など、多くの費用が発生します。そのため、初年度の不動産所得は赤字になりやすいです。

個人名義であれば、この赤字を給与所得などと通算し、所得税や住民税の還付につなげられる可能性があります。税率が高い方ほど、適正な経費計上による影響は大きくなります。

物件調査の交通費や宿泊費など、不動産事業に直接関係する支出も経費になり得ます。ただし、私的な支出は経費にできません。何を計上するかは税理士と相談し、事業との関連性を説明できる状態にしておく必要があります。減価償却を含む節税の注意点は、医師の不動産投資は節税になる?減価償却の罠と「本当の節税」を解説も参考になります。

老朽危険家屋の解体補助金を使いやすい

築古戸建てを扱う場合、自治体の老朽危険家屋解体撤去補助金を利用できることがあります。制度は市区町村の条例によって異なりますが、法人は対象外で、個人のみ申請できる案件も多いです。

老朽化した戸建てを個人で購入し、補助金を活用して解体したうえで新築アパートを建てる戦略では、個人名義が適しています。購入前に対象要件を確認することが前提です。

売却時の税率と法人名義のメリットも比較する

個人名義の不動産を売却した場合、所有期間によって売却益に対する税率が変わります。5年を経過せずに売却すれば約40%、5年を超えて売却すれば約20%です。

この差だけを見ると、個人名義では短期間で売りにくいと感じます。しかし、実際の売却では減価償却も関係します。税率だけで名義を決めるのではなく、保有期間、売却価格、帳簿上の利益をまとめて判断します。

一方、法人には経費の幅、家族への給与、小規模企業共済の活用などのメリットがあります。小規模企業共済は最大月7万円、年間84万円を所得から控除しながら積み立て、将来は退職金のように受け取れる仕組みです。規模を拡大するなら、2棟目以降を法人で購入する方法は十分に有効です。

1棟目の成績が、2棟目の融資を決める

個人名義を勧めるもう一つの理由が、実績づくりです。融資を受けて購入すれば、家賃収入、返済額、修繕費、管理費が帳簿に残ります。金融機関はその数字から賃貸経営の実績を判断します。

低利回りの物件を買い、ランニングコストと返済が収入を圧迫すれば、帳簿上の赤字が続きます。その状態で2棟目の融資を申し込んでも、事業性を厳しく見られます。業者の利益が大きく上乗せされた物件なら、売却価格が借入残高を下回り、持てば赤字・売れば持ち出しで身動きが取れません。1棟目で重要なのは節税額ではなく、賃貸経営として黒字を残すことです。

個人で始める実務的な利点も挙げておきます。法人設立には形態に応じておおむね15万〜25万円かかりますが、個人事業主は開業届を出すだけで始められます。青色申告を選べば、事業的規模に満たない1棟目でも要件を満たせば10万円の青色申告特別控除が使えます(65万円の控除には一般に「5棟10室」と呼ばれる事業的規模の基準があります)。物件の視察やセミナー参加など、不動産投資との関連を説明できる支出は経費にできます。

一方で、個人所有には注意点が2つあります。1つは売却時の税率です。所有期間が5年以下なら短期譲渡所得として39.63%、5年を超えれば長期譲渡所得として20.315%。個人で買うなら5年、10年と保有する前提が合います。もう1つは減価償却です。築古物件では償却期間が4年や5年になることがあり、償却が終わった後は課税所得が増えます。購入時点で、償却終了後の収支まで計算しておいてください。

あわせて読みたい

個人名義と法人名義のどちらで買うかは、不動産投資は個人名義と法人名義どちらで買うかを整理した記事で詳しく解説しています。

まとめ

不動産投資の1棟目を個人名義で購入する主な理由は、設立費用がかからないこと、青色申告特別控除を使えること、初年度の赤字を個人所得と通算できる可能性があること、個人向けの解体補助金を活用しやすいことです。

特に年収1,000万円以上の方にとって、個人名義は税負担を適正に抑えながら不動産事業を始める選択肢になります。そのうえで、2棟目以降は規模拡大を見据えて法人名義を検討します。

個人と法人のどちらが正解かは、所得、購入する物件、融資、保有期間、出口戦略によって決まります。1棟目の名義だけを切り離さず、将来の買い進め方まで設計して判断してください。体系的に学びたい方は、初心者からはじめる医師の不動産投資(Amazon不動産投資部門1位)もご覧ください。

よくある質問

不動産投資の1棟目は個人名義と法人名義のどちらで購入すべきですか?

1棟目は個人名義での購入が有効です。設立費用がかからず、青色申告特別控除を使え、初年度の赤字を給与所得などと通算できる可能性があるためです。特に年収1,000万円以上の方はメリットが大きく、2棟目以降は規模拡大を見据えて法人名義を検討します。

個人名義で購入した不動産を売却するとき、税率はどう変わりますか?

所有期間が5年以下なら短期譲渡所得として39.63%、5年を超えれば長期譲渡所得として20.315%の税率になります。個人名義なら5年、10年と保有する前提が合いますが、税率だけでなく保有期間、売却価格、帳簿上の利益をまとめて判断する必要があります。

なぜ1棟目の収支が2棟目の融資に影響するのですか?

金融機関は家賃収入、返済額、修繕費、管理費といった帳簿の数字から賃貸経営の実績を判断するためです。1棟目が恒常的な赤字だと2棟目の融資で事業性を厳しく見られます。1棟目で重要なのは節税額ではなく、賃貸経営として黒字を残すことです。

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