不動産投資は出口戦略で決まる|「買う前に売り方を決める」究極の考え方

「その物件、いつ・誰に・いくらで売るか決めていますか?」——不動産投資の成否は、実は買った瞬間ではなく「売り方」=出口で決まります。私が毎月200名以上の医師に不動産投資を教えるなかで一貫してお伝えしているのが、「買う前に出口を設計する」という考え方です。この記事では、区分マンション投資の落とし穴を題材に、出口戦略の本質を解説します。

私は整形外科医として働きながら2019年に不動産投資を始め、現在は本業を週1勤務まで減らし、アパート9棟・戸建て5軒、年間の家賃収入は3000万円を超える規模になりました。私自身が「土地ごと所有する物件」を中心に買い進めてきた理由も、突き詰めればすべて出口戦略にあります。

目次

出口戦略とは「買う前に売り方を決める」こと

不動産投資の利益は、大きく分けると2つの合計です。

  • 保有中の利益:家賃収入から返済・経費・税金を引いた手残り(キャッシュフロー)
  • 売却時の利益:売却価格と残債・取得費の差額

保有中の手残りが多少プラスでも、売却で大きく損をすればトータルはマイナスです。だからこそ、購入を検討する時点で「この物件は、いつ・誰に・いくらで売れるのか」まで見積もっておく必要があります。これが出口戦略です。逆に言えば、出口の描けない物件は、どれだけ利回りが良く見えても買ってはいけない。そしてこの視点が最も抜け落ちやすいのが、都心の区分マンション投資なのです。

2030年問題——築30年超のマンションが過半になる時代

「都心のマンションを買えば将来も資産価値は安泰だ」——もしそう思っているなら、その考えは一度捨ててください。マンションは時間の経過とともに価値が下がっていく「コンクリートの箱」という側面を持っています。

いわゆる2030年問題として、築30年以上のマンションが日本全国のストックの半分以上を占める時代が目前に迫っていると言われます。築30年を超えたマンションでは、次のような問題が現実になっていきます。

  • 設備の老朽化:配管からの水漏れなどは木造・鉄骨でも起きますが、RC造のマンションは躯体が堅牢な分、いざ問題が起きたときの修繕が大掛かりになり、莫大な費用がかかりやすい
  • エレベーターの負担:交換には500万〜1000万円規模、故障のたびに数十万〜100万円、さらに定期点検のランニングコストもかかる
  • 修繕積立金の不足:積立金で足りなければ所有者に一時金が請求される。払えない人が出れば「エレベーターが壊れても直せない」「水漏れしても直せない」状態に陥る

さらに深刻なのがスラム化です。築年数が進むほど所有者も高齢化し、施設への入居などで所在が分からなくなる人も出てきます。マンションの建替えには所有者の5分の4という高い同意が必要とされてきました。法改正でこの要件を緩和する流れはあるものの、それでも大多数——100人住んでいれば75人以上といった水準——の同意が要ります。同意が集まらなければ管理組合は機能不全に陥り、大規模修繕も建替えもできません。こうして古いマンションは「住みにくい・売れない・直せない」の三重苦に沈んでいくのです。

区分マンションに「最強の出口」がない理由——土地値の下支え

「それでも土地の価値が残るじゃないか」と思うかもしれません。しかし区分マンションの土地の持分は、専有面積に応じたごくわずかなものです。建物の価値が落ちていけば、資産価値はほぼそのまま連動して下がり、限りなくゼロに収束していきます。数千万円のローンを完済した後に残るのが、資産価値のないコンクリートの空間だけ——これが出口を考えないマンション投資の残酷な現実です。

一方、一棟アパートや戸建てのように土地ごと所有する物件には、建物が寿命を迎えても「更地にして売る」「取り壊して新築する」という選択肢があります。つまり土地値が価格の下限を支えてくれるのです。私はこれを「最強の出口戦略」と呼んでいますが、区分マンションにはこの選択肢がありません。

最近増えている定期借地権付きマンションは、さらに注意が必要です。土地は地主のもので、所有者が持つのは建物の権利だけ。契約期間が50年・70年と決まっているため、その期限に向かって資産価値が確実にゼロへ近づいていく構造です。

高く売る鉄則——「実需」に築30年以内で売る

では、区分マンションを持つなら出口はどう設計するか。ポイントは「誰に売るか」です。

マンションを一番高く買ってくれるのは、投資家ではなく実際に住むファミリー層(実需)です。実需の買い手は住宅ローンを使い、利回り計算ではなく「住みたいかどうか」で価格を決めるため、高値がつきやすいのです。ただし、築30年・築40年のマンションをファミリーが喜んで買うかというと微妙です。だから私は、実需が住みたいと思える築年数——目安として築30年以内——のうちに売却することをおすすめしています。外壁も設備もそこそこ新しいうちに、出口を取り切るという考え方です。

「歪み」があるなら買う価値はある——収益還元の計算式

マンション投資を全否定するわけではありません。「歪み」がある物件なら、戦略次第で勝てます。歪みの代表例が、周辺相場より安い家賃で入居が続いているケースです。

収益物件は「利回りから逆算した価格」(収益還元)で取引されます。前提をシンプルにして、表面利回り5%(年間家賃÷物件価格の見かけの利回り)で取引されるエリアだとしましょう。

  • 現行家賃が月20万円の場合:年間家賃240万円 ÷ 5% = 売却価格の目安4800万円
  • 相場並みの月25万円に上げられた場合:年間家賃300万円 ÷ 5% = 売却価格の目安6000万円

退去後に相場家賃で募集し直す、あるいは入居者と交渉して家賃を上げる。それだけで、同じ利回り水準でも売却価格が1200万円変わる計算です(※表面利回りベースの簡略計算です。実際の取引価格は経費・空室リスク・築年数などで調整されます)。こうした根拠のある値上がり余地=歪みを買うのは合理的な投資です。危険なのは、「今までも上がってきたから、これからも上がるだろう」という期待だけを根拠に買うことです。

タワマン神話に注意——超高級物件でも下がる

「住まいとして」買うのであれば、立地が良く、周囲と差別化できるランドマーク級のブランドマンションは資産価値が落ちにくい面はあります。ただしそれも高値掴みしなければ、の話です。実際、港区の超高級マンションとして知られる三田ガーデンヒルズでさえ、相場が下がってきていると報じられました。超高級ブランドでも下がるときは下がるのです。

タワーマンションのような投機色の強い物件は、海外の投機的な資金の流出入など、市況に左右されやすいという性質があります。相場が崩れる局面では、こうした物件から先に下落していきます。そして正直なところ、この相場観を正確に持つのは、不動産投資の経験がない人にはかなり難しい。「タワマンを持っている」という所有欲や見栄は心を満たしてくれるかもしれませんが、そこにお金を払うのはリスクの取り方として危ういと私は思います。

まとめ

  • 不動産投資の成否は出口戦略で決まる。「いつ・誰に・いくらで売るか」を買う前に設計する
  • 築30年超マンションが過半になる時代。修繕費・積立金不足・建替え同意のハードルで、古いマンションは「住みにくい・売れない・直せない」の三重苦に陥りやすい
  • 区分マンションは土地の持分がわずかで、更地売却・建て替えという最強の出口がない。土地ごと所有する物件は土地値が価格を下支えする
  • 区分を持つなら、実需のファミリーが住宅ローンで買ってくれる築30年以内での売却を狙う
  • 家賃相場との差など「歪み」がある物件は、収益還元の計算で売却価格を引き上げられる。期待だけで買うのは投資ではなく投機

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