不動産投資は「物件選び」と「融資戦略」の両輪で成り立っています。どちらが欠けても成功しづらく、とくに資産拡大のスピードを決めるのは間違いなく融資です。日銀の利上げが進み、2026年7月時点で政策金利は1.0%。銀行の審査も以前より厳格になっています。こういう時代だからこそ、「誰でも使える金融機関」ではなく、医師をはじめとする高属性の強みを最大限に評価してくれる金融機関を知っているかどうかが勝敗を分けます。この記事では、不動産投資で使う金融機関を5つの種類に分けて、それぞれの特徴・金利帯の目安・向き不向き・医師との相性を整理します。保存版としてご活用ください。
私は整形外科医として働きながら不動産投資を続け、現在は週1勤務まで本業を減らし、アパート9棟・戸建て5軒、年間の家賃収入は3000万円を超える規模になりました。毎月200名以上の医師に勉強会やコンサルティングを行うなかで、融資の現場で実際に見聞きしてきたことをもとにお伝えします。
大前提:銀行が見ているのは「物件の収益性」と「借り手の信用力」
融資戦略というと、多くの方が「どの銀行なら貸してくれるか」という情報ばかりを求めがちです。しかし本質は逆で、銀行が見ているのは物件の収益性と借り手の信用力、この2つです。
信用力という点で、医師免許はこの国で最強クラスのカードです。私のもとには大企業の役員の方など高属性の方も相談に来られますが、金融機関から見た信用力の高さは共通の武器になります。そして金利が上がり、銀行が貸し出しに慎重になっている今こそ、資格や属性の相対的な価値はむしろ高まっています。
ただし、この最強の武器も使いどころを間違えれば意味がありません。信用力を価値のない低利回り物件に使ってしまえば、高値掴みで普通に損をするのが不動産の世界です。信用力は、収益性が高く、土地値などで価値が下支えされ、インカムもキャピタル(売却益)も見込める優良物件を、他の買い手を圧倒する好条件で手に入れるために使う。これが一番効果的です。この前提を踏まえたうえで、5種類の金融機関を見ていきましょう。
種類①:アパートローン専門系(代表格:オリックス銀行)
1つ目は、審査がパッケージ化されたアパートローンを扱う銀行です。代表格はオリックス銀行で、目安として年収700万円以上の方が対象になります。医師のように年収が高い属性であれば審査に乗りやすく、1棟目の実績をつくる入り口として使いやすい金融機関です。金利はアパートローンとして標準的な水準(おおむね2%前後〜3%台が目安。時期・属性・物件で変わります)です。
注意点はエリアです。担当者の方と直接お話しする機会がありましたが、対象エリアは限定されており、札幌・仙台・東京・千葉・横浜・さいたま・名古屋といった政令指定都市クラスでないと融資が出にくいとのことでした。
もうひとつ面白いのが物件の構造です。オリックス銀行はRC(鉄筋コンクリート)よりも、木造・軽量鉄骨・重量鉄骨のほうが得意とのこと。これは投資家目線でも理にかなっています。RCは古い考え方の銀行ほど好条件で融資してくれる一方、修繕費がかさみやすい構造だからです。たとえば水漏れが起きたとき、コンクリートの建物は原因箇所の特定が難しく、硬い構造ゆえに穴を開けて調べるだけでも費用がかかります。エレベーター付きの規模になれば、定期点検に加えて交換時には500万円、場合によっては1000万円規模の出費が一気に発生します。こうした「急な大出費を食いやすい物件種別」を避ける目線は、銀行選び以前に物件選びとして大事です。
築年数については、築20〜30年以内の物件のほうが通りやすく、融資年数はおおむね「一定の基準年数から築年数を差し引いた年数」で調整されるようです(築20年なら20年台前半、築30年なら10〜14年程度が目安と聞いています)。条件はそこそこ厳しめですが、まず検討する価値のある銀行です。
ひとつ実感としてお伝えしたいのは、銀行は物件の評価だけを見ているわけではない、ということです。私がご縁のあった先生を紹介した際、同じ物件に他の申込者もいたなかで、そのドクターが選ばれたことがありました。医師であるという信用力に加え、不動産投資に真摯に向き合っているか、リスクを理解しているか、この人に賃貸経営ができるか——担当者はそこまで見ています。だからこそ、きちんと学んだうえで銀行に向き合うことが大切です。
種類②:属性・金融資産を深く評価する銀行(スルガ銀行など)
2つ目は、個人の背景をより深く評価するタイプの銀行です。スルガ銀行が代表例で、目安は年収1000万円以上。アパートローン専門系と比べて、金融資産・職業・資金力といった「その人自身」の評価に重きを置く傾向があります。
その分、法定耐用年数を超えた築古物件、新築アパート、政令指定都市以外の立地など、種類①では難しい案件にも柔軟に対応してくれる可能性があります。金利は高めの傾向(2%台〜4%台が目安)ですが、属性を活かせる医師にとっては、案件によって選択肢のひとつになります。相談に行ってみる価値はあるでしょう。
種類③:地方銀行のプロパーローン——医師の属性が最も生きる
3つ目は地方銀行です。私はここが外せない、むしろ医師にとって一番おいしい選択肢だと考えています。目安は、医師・弁護士・公認会計士・税理士といった資格職、あるいは年収1000万円以上か金融資産1000万円以上の方です。
地方銀行はアパートローンというパッケージの枠組みではなく、プロパーローン(銀行が個別に審査するオーダーメイドの事業融資)で評価してくれます。そして地方銀行には「地域に根ざし、地域に貢献している人を応援したい」という特性が背景にあります。医師は社会的意義と公共性の高い職業ですから、地域に貢献しているドクターの不動産投資は手伝いたい、というインセンティブが働くのです。地方銀行こそ属性を重視する、と言っていい世界です。
実例をひとつ。私の周りの開業医の先生は、開業資金の融資でお付き合いのあった京都銀行に不動産投資の相談をしたところ、築40年ほどの物件に対して金利1%前半・期間20〜30年という条件で融資を引いていました。築古物件でこの条件は驚くほど好条件で、開業を通じて積み上げた銀行との信頼関係がいかに大きいかが分かる例です。開業医の先生は、開業時にお世話になった銀行にまず相談してみてください。
「勤務医だと不利では」と思われるかもしれませんが、そんなことは全くありません。私自身、整形外科の勤務医として働きながら融資を引いて規模を拡大してきました。年収がある程度高いことと医師であること、この2つは金融機関から見て絶大な信用になります。プロパーローンの金利帯は条件次第ですが、アパートローンより低くなりやすい(1%台〜2%台前半が目安)のも大きな魅力です。
種類④:信用金庫・信用組合——地域密着の最たる味方
4つ目は信用金庫・信用組合です。基本のロジックは地方銀行と同じで、地域への貢献を重んじる地域密着型の金融機関です。むしろその性格は地銀より強く、信金・信組から見た医師の信用力は非常に高い。地域の医療を支えるドクターの相談は優先度高く扱ってもらえる、というのが私の実感です。
地域密着ゆえに、融資対象は営業エリア内の物件・居住者が中心になります。ただ、これは制約というより投資の王道と重なります。自分で見に行ける範囲の物件を買うのが鉄則だからです。地元エリアで物件を探すなら、地銀とあわせて信金・信組も強力な味方になります。プロパーでの個別対応が基本で、金利水準も地銀に準ずるイメージ(1%台後半〜2%台が目安)です。
種類⑤:全国対応のアパートローン積極銀行(関西みらい銀行・滋賀銀行・静岡銀行など)
5つ目は、全国的に不動産投資向け融資を積極的に手掛けている銀行です。具体的には関西みらい銀行・滋賀銀行・静岡銀行などが挙げられます。地銀でありながら本拠地の外でも融資をしてくれる可能性があるため、エリアの制約で①〜④が使えないときの受け皿になります。
ただし、この場合はアパートローンの形になることが多く、金利はどうしても高め(2%台〜4%台が目安)です。原則は事業ローン・プロパーローンで引くほうが金利は低くなりやすいので、あくまで「どうしてもこの物件の融資を引きたい」ときの選択肢と位置づけるのが私のおすすめです。
5種類の使い分け早見表
| 種類 | 代表例 | 属性の目安 | 金利帯の目安 | 向いているケース |
|---|---|---|---|---|
| ①アパートローン専門系 | オリックス銀行 | 年収700万円〜 | 2%前後〜3%台 | 政令指定都市の木造・鉄骨で1棟目の実績づくり |
| ②属性を深く評価する銀行 | スルガ銀行 | 年収1000万円〜 | 2〜4%台 | 耐用年数超えの築古・新築・地方都市など①で難しい案件 |
| ③地方銀行(プロパー) | 各地の地銀(例:京都銀行) | 医師・士業/年収or資産1000万円〜 | 1%台〜2%台前半 | 地元エリアで好条件を狙う本命。医師の属性が最も生きる |
| ④信用金庫・信用組合 | 地元の信金・信組 | 地域の医師・高属性 | 1%台後半〜2%台 | 営業エリア内の物件。地域貢献の文脈で相談 |
| ⑤全国型アパートローン | 関西みらい・滋賀・静岡 | 案件による | 2〜4%台 | エリアの制約で他が使えないときの受け皿 |
金利帯はあくまで大まかな目安です。時期・属性・物件・自己資金の入れ方で大きく変わりますので、最終的には必ず個別に確認してください。
信用力は「良い物件」にだけ使う
最後に、一番大事なことをもう一度。与信や属性を活かして他人資本で資産を膨らませていく不動産投資は、仕組みとして非常に合理的です。しかし物件を間違えれば、数百万円、場合によっては1000万〜2000万円の赤字になることも普通に起きる、弱肉強食の世界でもあります。
数千万円の買い物を、誰にも相談せず、業者さんの言いなりになって決めてしまう——私はそれだけは避けるべきだと考えています。知識を持ち、不動産投資に真摯に向き合っている経験者を味方につけたうえで取り組めば、リスクを抑えながら資産を積み上げる仕組みは十分につくれます。銀行選びの知識も、その土台があってこそ生きるのです。
まとめ
- 融資の本質は「物件の収益性」×「借り手の信用力」。金利上昇・審査厳格化の今こそ、医師などの高属性は相対的に有利になる
- ①アパートローン専門系(オリックス銀行)は政令指定都市×木造・鉄骨×1棟目の実績づくりに向く
- ②スルガ銀行などは属性・金融資産を深く評価し、築古や地方都市など①で難しい案件の受け皿になりうる
- ③地方銀行のプロパーローンは医師の属性が最も生きる本命。地域貢献の文脈で好条件が狙える。開業医は開業時の取引銀行にまず相談
- ④信用金庫・信用組合は地域密着の最たる味方。自分で見に行ける地元物件という王道とも相性がよい
- ⑤全国型アパートローン(関西みらい・滋賀・静岡など)はエリア制約の受け皿。ただし金利は高めで、原則はプロパー優先
- どの銀行を使うにせよ、信用力は収益性と資産価値のある優良物件にだけ使う。高値掴みは与信の毀損に直結する
金融機関ごとの条件は常に変わります。この記事は考え方の地図としてお使いいただき、実際の融資条件は必ず最新の情報をご確認ください。そして何より、良い融資は良い物件があってこそ。物件選びから融資戦略まで、実際に結果を出している人の視点を取り入れながら進めてみてください。
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