「価格3000万円・表面利回り12%」——物件サイトを眺めていると、こんな一見お宝に見える安い築古アパートに心を惹かれたことはありませんか。一方で、専門家を名乗る人たちは「古い物件は修繕リスクが高いから手を出すな」「ドクターなら新築のピカピカのアパートを買うべき」と言ってきます。私の結論を先に言うと、こうした築古批判は半分本当で、半分は立場によるポジショントークです。そして、巷で恐れられている築古の特徴こそ、医師・高所得者にとって最大のチャンスになり得ます。
私は整形外科医として働きながら2019年に不動産投資を始め、現在は週1勤務まで本業を減らし、アパート9棟・戸建て5軒、年間の家賃収入は3000万円を超えました。保有物件の多くは、まさに世間が敬遠する「安い築古」です。この記事では、築古アパートで一般の投資家が破綻する3つの罠と、それでも私があえて築古を狙う理由を、私自身の物件の実数字を使って解説します。
「安い築古アパートは危ない」と言われる3つの罠
まず、なぜ築古アパートがリスクが高いと言われるのか。理由は大きく3つあり、どれも「知らずに買うと本当に破綻する」たぐいのものです。順番に見ていきます。
罠①:融資年数が短く、手残りが出にくい
最大の特徴が融資です。銀行は建物の法定耐用年数(税務上定められた建物の寿命。木造22年・軽量鉄骨19年など)を基準に融資期間を決めることが多いため、築30年・築40年の木造や軽量鉄骨は耐用年数を超えており、融資そのものが厳しかったり、組めても期間が10〜15年と短くなりがちです。
返済期間が短ければ、毎月の返済額は重くなります。その結果、家賃÷価格で計算した「表面利回り」は12%と高く見えても、返済・経費・税金を引いた後の手残り(キャッシュフロー)はほとんど残らない——「高利回りのはずが手元にお金が残らない」という状況が起こるわけです。これが「築古はしんどい」と言われる一番の理由です。
罠②:修繕費が「業者の言い値」になりやすい
築古アパートには当然、修繕費が発生します。空室が出ればクロスの張り替えや床の交換といった原状回復が必要ですし、10年住んでもらえば内装は傷みます。問題は金額です。業者のなかには、150万円もかけなくていい工事に「150万円かけないと客付けできませんよ」と言ってくる人がいます。知識がないままそれを鵜呑みにすれば、高利回りのはずの物件が修繕費で全然儲からない物件に変わります。実際には、入居に影響しない部分を絞り込めば数十万円で抑えられるケースは珍しくありません。自分の目線と、相談できる味方を持てるかどうかで、収支は大きく変わります。
罠③:減価償却が切れた後の「デッドクロス」
耐用年数を超えた築古物件は、建物価格を経費化できる減価償却の期間が4〜5年程度と短くなります。償却が取れている間は帳簿上の赤字で税金が軽くなり、収支は黒字になりやすい。ところが償却が終わった瞬間、経費が消えて税負担が跳ね上がります。これがいわゆるデッドクロスです。ここを予測せずに「今のキャッシュフロー」だけで収支を組んでいると、5年後以降に税金で赤字転落——という未来が見えています。買う前の収支計算に、償却切れ後の税負担まで織り込んでおくことが必須です。
短い融資は弱点ではなく「前倒しの資産形成」である
ここからが本題です。罠①の「融資年数が短い」は、実は捉え方次第でメリットに変わります。
思い出してほしいのは、私たち医師には本業の収入があるということです。不動産投資を始める動機の多くは「今すぐFIREしたい」ではなく、「夜勤を減らしたい」「自分が倒れたときに収入がゼロになるのが怖い」といったもののはず。であれば、保有中のキャッシュフローがトントン程度でも、生活には困りません。その代わりに得られるものがあります。返済スピードです。
単純化した例で見てみます。6000万円の物件に5000万円の融資を10年で組んだとすると、元金ベースで年500万円ずつ残債が減っていきます(5000万円÷10年。金利はここでは脇に置きます)。この返済の原資は自分の給料ではなく、入居者さんからいただく家賃です。2年で1000万円、5年で残債は半分。そして10年後には完済し、無借金の土地と建物が手元に残ります。利回り10%の物件なら、そこからは年間600万円の家賃が、返済ゼロでまるまる入ってくる状態です(もちろん修繕費や固定資産税・都市計画税などの経費は引き続きかかります)。
ただし、この戦略には絶対の前提があります。価値が下がらない物件を買うことです。残債が半分になった5年後に、物件の価値も半額になっているなら完全に損です。逆に言えば、そんな物件を買ったこと自体が間違いで、目利きがあれば絶対に買いません。土地値に下支えされ、価値が落ちない(むしろ上がり得る)物件を高利回りで買う——これが条件です。私自身、10年の融資で組んでいる物件が多く、残債の返済は年々着実に進んでいます。数年後には完済物件が次々に出てきて、家賃がそのまま残るフェーズに入ります。
医師が築古で勝てる3つの理由
一般の投資家が恐れる築古の罠を、なぜ私たちは突破できるのか。理由は3つあります。
- ①信用力と自己資金で融資が引ける:まともな生活をしていれば、医師は支出より貯蓄が増えていく職業です。500万〜1000万円の自己資金を投入でき、属性の高さで与信も使える。短い融資年数で返済が重くなっても耐えられる体力があります。
- ②一時的な修繕費に耐えられる:木造など構造を選べば(RC造でなければ)、築古の修繕費は高が知れています。空室時のクロス・床の交換をポンと払えるかどうかで、入居スピードも家賃も変わります。手元資金がなくてリフォームできず、家賃を下げざるを得ない——という悪循環に陥らずに済むのは大きな強みです。
- ③高い税率が味方になる:所得税・住民税を合わせると、私たちの税率は43%、高い層では53%程度に達します。築古を個人で買えば、短期間に大きく取れる減価償却で帳簿上の赤字を作り、この高い税率の部分を圧縮できます。さらに5年超保有してから売る「長期譲渡」なら、譲渡益への税率は約20%まで下がるため、税率差の分が実質的なメリットになります。経費も税引き前のお金から使える。税率が高い人ほど、この効き目は大きくなります。(※税率や償却の計算は税制改正や個々の状況で変わります。具体的な数字は必ず税理士にご確認ください。)
つまり、「融資が短い」「修繕が怖い」「税金が複雑」という築古の参入障壁は、資金力と属性のある医師にとってはむしろライバルを減らしてくれる堀なのです。
私の築古物件の「実際の数字」
机上の話だけでは説得力がないので、私が実際に保有している築古物件の数字を出します。
- 築50年の長屋6戸:1200万円で購入し、現在は月18万円の家賃収入。表面利回り18%
- 築40年超の6DK戸建て:21万円で購入して再生し、月5.3万円で賃貸中。表面利回り30%超
- 築57年の平屋2戸:730万円で購入し、月7.6万円。表面利回り12.5%
- 築38年のアパート8戸:3480万円で購入し、月29万円。表面利回り10%
築50年・築57年と聞くと「大丈夫なのか」と思われるかもしれませんが、価格が安く土地値に支えられていれば、築年数そのものはリスクの本体ではありません。リスクの本体は、価格が妥当か、修繕を自分でコントロールできるか、償却切れ後の税負担まで読めているかです。そこさえ押さえれば、築古は返済が速く、手残りの源泉になる資産に変わります。
築古なら何でも買っていいわけではない
最後に釘を刺しておきます。「安い築古なら全部買っていい」わけでは決してありません。利回り・間取り・築年数・立地・土地の形・土地の価値——こうした要素を総合的に判断して、初めて「買っていい物件かどうか」が決まります。数字(表面利回り)だけで飛びつくのが一番危険です。
そして、物件価格も修繕費も、知識と経験がない人は当然のように高値をつかまされる世界です。不動産は良くも悪くも弱肉強食。「投資」と名前がついているので気軽に始めてしまう人がいますが、実態は事業との合いの子です。リスクを恐れて何もしないのではなく、リスクを正確に分析してコントロールする。そのために、実際に結果を出している人を味方につけてから始めることを強くおすすめします。
まとめ
- 築古アパートの罠は3つ:耐用年数超えによる短い融資年数(返済が重く手残りが出にくい)、業者の言い値になりやすい修繕費、減価償却切れ後のデッドクロス
- 本業収入のある医師なら、短い融資は「前倒しの資産形成」。家賃で残債が年500万円ペースで減り、10年で無借金の資産が残る(例:5000万円・10年・元金ベース)
- 前提は価値が下がらない物件を選ぶこと。土地値の下支えと総合判断が必須
- 医師の強みは、自己資金と信用力・修繕費への耐性・高税率ゆえの減価償却と長期譲渡のメリット。築古の参入障壁はむしろ味方になる
- 表面利回りだけで買わない。価格の妥当性・修繕・税負担まで読み切ってから買う
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