「不動産投資で月20万円の手取りを作るロードマップ」。YouTubeや書籍でよく見かける定番のテーマです。結論から言うと、世間で語られるロードマップの多くは年収400〜500万円の会社員向けに設計されたもので、医師がそのまま真似すると遠回りになります。この記事では、「手取り月20〜30万円」という目標の正しい捉え方、世間のロードマップに潜む罠、そして医師が自分の属性を武器に月100万円を目指すための考え方を、まとめて整理します。
私は整形外科医として働きながら不動産投資を続け、現在は週1勤務まで本業を減らし、アパート9棟・戸建て5軒、年間の家賃収入は3000万円を超えています。築古物件の再生から融資の開拓まで自分の手を動かしてきた経験と、累計200名以上の医師が所属するコミュニティで教えてきた経験をもとにお伝えします。
「手取り月20万円」とは何か。表面利回りと混同しない
まず言葉の整理です。物件広告に載っている利回りは、年間家賃÷物件価格で計算した「表面利回り」にすぎません。目標にすべき「手取り月20万円」は、家賃から銀行への返済と経費を引いた後に手元に残るお金、つまりキャッシュフローのことです。この2つは大きく違います。
ざっくりした計算例を見てください。5000万円の物件を表面利回り8%(年間家賃400万円)で買ったとします。金利は脇に置いて元金ベースで20年返済なら、返済は5000万円÷20年=年250万円。運営経費(修繕・原状回復、入居付けの広告料、固定資産税など)を家賃の2割=年80万円とすると、手元に残るのは400−250−80=年70万円、月に直すと6万円弱です。表面8%というかなり良い数字でも、手取りはこの程度。表面5〜6%の物件なら、同じ前提で計算すると手残りはほぼゼロか赤字です。
つまり「手取り月20万円」は、低利回りの物件を1棟買って達成できる数字ではなく、利回りと規模の掛け算で作る数字です。この前提を押さえたうえで、世間で話題のロードマップを見てみましょう。
世間で語られる「月20万円ロードマップ」の中身
ある不動産チャンネルで、年収500万円の会社員が手取り月20万円を作るロードマップが公開され、話題になっていました。中身はこうです。
- 1棟目:5000万円の新築か築浅を35年ローンで購入し、キャッシュフロー月10万円を確保
- 3〜4年かけて家賃収入を貯め、次の頭金を作る
- 2棟目:3000万円の物件でキャッシュフロー月5万円を上乗せ
- 3棟目:4000万円の物件でさらに月5〜6万円を上乗せし、合計3棟で月20万円を達成
年収300〜400万円台で自己資金が少ない人にとっては、堅実で再現性のある計画だと思います。年収の壁がある人は、フルローンが出やすい新築・築浅に選択肢が寄らざるを得ないからです。しかし、このロードマップには構造的な罠があり、医師や高年収の方がなぞる理由はありません。
このロードマップに潜む3つの罠
罠①:新築・築浅の家賃は下がり続ける
新築の物件と築10年、築20年の物件で、家賃が同じわけがありません。特にワンルームなど狭い間取りでは下落が顕著です。「都市部なら家賃を上げられる」という反論もありますが、そういうエリアは土地が高く、そもそも物件全体の利回りが低くなってしまいます。買った時点でキャッシュフロー月10万円だった物件が、5年後、10年後に家賃下落でどんどん薄くなり、ある時点で赤字に転落する。これが1つ目の罠です。
罠②:35年ローンは金利上昇の影響をまともに受ける
金利はいま上昇局面にあります。私のところにも銀行から「金利を0.2%引き上げさせてほしい」という連絡がありました。私は利回り10%以上の物件を持っているので0.2%は誤差の範囲ですが、表面5〜6%の物件を35年ローンで抱えている人には直撃します。金利は借りている期間ずっと効き続けるコストなので、返済期間が長いほど上昇の影響も大きくなるのです。「融資を長く引けば安全」とは限りません。
罠③:家賃の下落は売却価格まで下げる
いちばん見落とされている罠がこれです。投資用不動産の価格は、収益還元法といって「年間家賃÷利回り」で逆算されて決まります。家賃が下がれば、売却価格も自動的に下がるのです。
数字で見てみます。1億円・利回り6%(年間家賃600万円)の新築を買ったとして、5年後に家賃が550万円まで下がったとします。同じ利回り6%で売れたとしても、550万円÷6%=約9166万円。しかも築5年の物件は新築より高い利回りを要求されるので、6.5%でしか売れないとすると550万円÷6.5%=約8461万円。買値から約1500万円も価値が下がった計算です。35年ローンの5年目では元本はほとんど減っていませんから、売るに売れない状態になります。新築・築浅でキャピタルゲインを狙える時代は終わりつつある、というのが私の見立てです。
ここで押さえてほしいのは、「銀行が融資してくれる物件=いい物件」ではないということです。融資は大事ですが、融資が全てではありません。安く買い、入居率を高く保ち、きちんと収益を出し、高く売る。不動産投資の本質は不動産の経営です。
医師の武器は「属性」。あえて地方の高利回りを攻める
では医師はどう戦うべきか。多くの方が落ちる罠は、プライドや所有欲を満たすために「都心の新築ピカピカマンションなら利回りが低くてもいいか」と妥協してしまうことです。いま新築は建築費や人件費の高騰で表面利回り5〜6%程度。先ほどの計算のとおり、返済と経費を引けば手残りはゼロかマイナスで、月30万円どころの話ではありません。
私が医師の先生方に地方や都市近郊の高利回り物件をおすすめしているのは、仕方なく選んでいるのではありません。医師という強い属性を使えば、都心ではありえない利回りの物件を、ありえない条件の融資で買えるからです。実際、私が教えている受講生ドクターの中には、築40年前後の物件に金利1%台・期間20年の融資を、自己資金1割ほどで引いた先生もいます。法定耐用年数を過ぎた築古は本来、融資年数が短くなりがちで一般の方にはハードルが高い領域ですが、医師の与信はそこを突破できる。この強みを使わない手はありません。
「資産性」や「駅から何分」という言葉は、業者のポジショントークで多用されます。しかし投資用不動産は利回りから逆算した価格で買うものです。車社会のエリアなら駅から離れていても入居は付きますし、北関東や北陸でも利回りが高ければ買います。逆に、資産性という言葉にこだわって低利回り物件を抱えることこそ危険です。なお、新築・築浅を全否定するわけではありません。新築なら7%以上、築浅なら7.5%以上の利回りがあり、土地値や周辺の家賃相場・家賃の推移を確認できれば、進めることもあります(実際に築浅を買った受講生もいます)。原則はあくまで、利回りの高い物件です。
月30万円から月100万円へ。手間が同じならロットを上げる
高利回りといえば、地方の激安戸建てを自分でDIYして利回りを稼ぐ手法も人気です。私自身、21万円で仕入れた築40年超の6DK戸建てをリフォームで再生し、月5.3万円の家賃、利回り30%超に仕上げた経験があります。ただ、この手法を時給単価の高い医師にはおすすめしません。
理由は、戸建てもアパートも手間がほとんど変わらないからです。決済、契約書の読み合わせ、残置物撤去の相見積もり、リフォーム業者との打ち合わせ、入居募集。この一連の作業は、21万円の戸建てでも2000万円台のアパートでも、私の体感ではほぼ同じでした。それなのに、成果の桁は違います。私の物件で言えば、築30年・5戸のアパートを2300万円で購入し、月20万円・表面10.6%で満室稼働しています。一方の激安戸建ては、利回り20%で売却できたとしてもせいぜい300万円ほど。値上がり益もアパートなら数百万円から数千万円の規模になり得ますが、戸建てでは100万円単位が上限です。手間が同じなら、ロットの大きい物件を獲得していくべきです。月30万円を最短で通過し、月100万円を目指すなら、この積み上げ方しかありません。
ただし、注意点が2つあります。1つは、レバレッジは逆回転するということ。融資を使って他人資本で資産を作れるのが不動産の強みですが、赤字になる物件を高値掴みすれば、借入はそのまま破綻への加速装置になります。知識がないまま誰にも相談せず自己流で買うことだけは避けてください。もう1つは、時間の捉え方です。物件を学ぶ時間、不動産業者を回る時間、金融機関を開拓する時間を「労働」と捉えると続きません。将来の不労所得の仕組みを作るための先行投資と捉えられるかどうかで、成否が分かれます。
私は不動産以外の事業もいろいろ経験してきました。整形外科医として骨を強くするサプリの開発販売に挑戦して600万円の赤字を出したこともあります。事業はゼロから立ち上げると集客も差別化も本当に難易度が高い。その点、不動産は再現性が高く、医師や高属性の方なら「やるかやらないか」の世界です。手取り月30万円は、正しいロードマップで淡々と進めれば十分に達成できる数字です。
まとめ
- 目標にすべきは表面利回りではなく手取り(キャッシュフロー)。表面8%でも、返済と経費を引けば手残りは月数万円という現実から逆算する
- 年収500万円向けの「新築・築浅を35年ローンで3棟」ロードマップには、家賃下落・金利上昇・収益還元による価格下落という3つの罠がある
- 医師は与信という武器で、地方・都市近郊の高利回り物件を好条件の融資で獲得できる。都心新築の表面5〜6%に妥協しない
- 戸建てもアパートも手間はほぼ同じ。ロットの大きい物件を積み上げることが月30万円、その先の月100万円への最短ルート
- 融資が全てではない。安く買い、入居を維持し、高く売る。不動産投資の本質は経営である
医師の不動産投資を、正しい順番で学ぶ

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