年収1000万円を超える先生方に、まず質問させてください。月5万円の手取りのために、雨漏りや入居者トラブル、激しい空室、管理会社からの頻繁な電話——そうしたリスクを背負う価値はありますか? YouTubeでは「2000万円の中古アパートを買えば不労所得がすぐ手に入る」といった安直な動画をよく見かけますが、実際にシミュレーションしてみると、手取りは思ったより少なく、運営はしんどい。それが不動産投資の現実です。それでも私は「中古アパートは買うべきだ」と考えています。理由は、目先の手取りの裏側にあるもっと巨大な「裏の利益」にあります。
私は整形外科医として働きながら2019年に不動産投資を始め、現在は週1勤務まで本業を減らし、アパート9棟・戸建て5軒、年間の家賃収入は3000万円を超えました。築50年の物件の風呂を自分で磨き、床や壁を塗り、茣蓙を敷いてピンで留める——そんな現場経験も積んできた人間として、いま毎月200名以上の医師に不動産投資を教えています。この記事では、中古アパートの年間手取りを具体的な数字でシミュレーションしながら、医師・高所得者が本当に見るべきポイントを解説します。
2000万円・表面利回り12%の中古アパートを本気でシミュレーションする
よくある物件の例で計算してみましょう。前提条件は次の通りです。
- 物件価格:2000万円(築35年の中古アパート)
- 表面利回り:12%(年間家賃収入240万円)※表面利回り=年間家賃÷物件価格の「見かけの数字」です
- 融資:2000万円を返済期間15年で調達。法定耐用年数を超えた築古のため融資年数は短めですが、属性や担当者との信頼関係を活かして引けたと仮定します
- 金利:最近の上昇局面を考えて2.5%、元利均等返済とします
ここから経費を引いていきます。空室時の損失、修繕費・原状回復費、固定資産税・都市計画税、火災保険料、共用部の維持費など、家賃収入の20%を経費として見込むと48万円。銀行への年間返済額は、この条件だと約160万円になります。計算式で見せると、こうなります。
240万円(家賃)− 48万円(経費20%)− 160万円(返済・元利込み)= 年間32万円
税引前のキャッシュフローは年間32万円、月額にして約2万6000円です。ここからさらに所得税・住民税がかかります。「2000万円も借金して月2.6万円? 不動産投資って全然儲からないじゃないか」——そう思われたかもしれません。先生の半日分の稼ぎほどの金額のために、冒頭のようなリスクを背負うのは割に合わない。その感覚は正しいです。ただし、見るべき場所はそこではありません。
月2.6万円でも「買い」——入居者が借金を返してくれる「裏の利益」
年間返済額160万円の中身を分解してみましょう。初年度の内訳は、利息が約50万円、残りの約110万円は元金の返済、つまり借金そのものを減らすために使われています。この110万円を払っているのは誰でしょうか。私ではありません。入居者さんが家賃という形で、私の代わりに銀行への返済を進めてくれているのです。
返済期間15年と短めに組んでいるからこそ、残債の減りは速い。ざっくり言えば5年後には元金のおよそ3分の1、10年後には3分の2の返済が進み、15年後には完済です。手元のキャッシュフローは月2.6万円でも、その裏で年間110万円規模の「見えない利益」が着実に積み上がっている。残債が速く減れば銀行からの評価も上がり、次の融資が引きやすくなります。これが私の言う「裏の利益」です。
ここで大事なのは、医師や高属性の方々は生活費を家賃収入に頼る必要がないという点です。年収1000万〜1500万円あって生活がカツカツなら、それは物件の問題ではなく支出の問題で、先にバケツの底の穴を塞ぐべきです。生活の心配がないからこそ、目先のキャッシュフローが薄くても、融資年数を短く組んで残債を猛スピードで減らす戦略が取れる。これは家賃収入で今すぐFIREしたい人には真似できない、本業を持つ人間ならではの勝ち筋です。
土地値が「負けない投資」をつくる——私の物件の実例
「利回り12%の物件なんて、誰も住まない田舎のボロ物件では?」と思われるかもしれません。私は利回りだけでなく、立地と土地値にもきちんとこだわっています。
私の物件の実例を挙げると、5年前に2000万円で購入した物件があります。土地だけで2500万円の価値がある物件が、2000万円で手に入ったのです。市場に公開される前の情報を寄せてもらえたことが大きいのですが、表面利回りも11%と高く、しかも立地が良い。その後の地価上昇もあって、いまでは土地だけで4800万〜5000万円程度の価値になっています。家賃で残債が減り続けるうえに、土地の値段まで上がっていく。こうなると「負けようがない」状態です。
大切なのは、家賃収入(インカム)だけで勝負しないことです。土地値が物件価格を下支えしている物件なら、最悪のケースでも土地を売れば取り返せる。表面利回りの数字だけで飛びつくのではなく、土地の価値・間取り・入居者の属性まで含めて総合判断する。ここが業者の言い値で買ってしまう人との決定的な違いになります。
築35年の15年後——出口は「更地売却」か「建て替え」
「築35年を買って15年経ったら築50年。そんな物件に価値はないのでは?」という疑問もよくいただきます。これも違います。投資家は利回りと土地の価格から物件を買うからです。完済後の選択肢は複数あります。
- 更地にして売却する:入居者に退去してもらい、土地として売る。土地値のある立地なら成立します
- 更地にして新築を建てる:完済済みの土地の上に建てるので、手出しは上物の建築費だけ。新築なら融資も35年など長期で引ける可能性があります
たとえば先ほどの私の物件で構想しているのは、5000万円の価値になった土地の上に1億円ほどの新築を建てるプランです。完成すれば1億5000万円規模の物件を、土地はタダ同然で持っている状態でスタートできる。借入は上物の分だけなので担保に余裕があり、融資条件も良くなります。総投資額に対する利回りで見ても9〜10%程度が見込め、新築のピカピカの状態で毎月数十万円の家賃が入ってくる。こうした物件が複数棟あれば、働かなくても生活できる状態になります。不動産は時間を味方につける事業であり、1棟目を早く買うほど「裏の利益」の積み上がりが早く始まるのです。
金利上昇局面で最初に脱落するのは誰か
「この金利上昇の局面で不動産投資をやって大丈夫ですか?」ともよく聞かれます。金利上昇で最初にダメージを受けるのは、築浅や新築を低利回りで持っている投資家です。利回りが低いと返済に対する余裕がもともと薄く、金利が上がった瞬間に収支が崩れます。家賃下落や空室リスクも重なれば、投げ売りに入る人が必ず出てきます。
一方、利回り12%のアパートを持っていれば、金利が0.15%や0.25%上がっても、痛いことは痛いですが致命傷にはなりません。しかも私たちには本業があり、生活が揺らぐことはない。そして投げ売り物件の情報は、すでに市場に参加している投資家のところに真っ先に回ってきます。「景気が良くなったら始めよう」と待っている人には、良い情報は永遠に届きません。積立投資と同じで、良い時も悪い時も年に1棟でも買い続けて市場の中にいること。相場が崩れた局面は、準備してきた人にとってはむしろチャンスです。
逆に注意していただきたいのが区分ワンルームです。「ワンルームを10戸持っているので不動産は分かっています」という先生に時々お会いしますが、区分は数ある物件種別の中で最も利益を得にくく、売却時に苦労しがちな商品です。私自身は手を出していません。戸建て、築古アパート、新築——さまざまな種別を経験してきたからこそ、断言できることです。
まとめ
- 2000万円・表面利回り12%・15年融資(金利2.5%・元利均等)の中古アパートの税引前キャッシュフローは年間約32万円(月2.6万円)。目先の手取りは小さい
- しかし返済160万円のうち約110万円は元金返済。入居者が家賃で借金を減らしてくれる「裏の利益」が毎年積み上がり、銀行評価も育つ
- 生活費を家賃に頼らない医師・高所得者だからこそ、短期返済で残債を速く減らす戦略が取れる
- 利回りだけでなく土地値と立地で選べば、完済後は更地売却も建て替えもでき、出口で負けない
- 金利上昇で脱落するのは低利回りの築浅・新築を持つ投資家。市場の中にいる人にだけ、投げ売りの情報は回ってくる
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