銀行の融資はおそらく通る。物件も、自分が決めた基準をきちんと満たしている。あとは買付証明書を出すだけ、契約書にサインをするだけ——その場面で、なぜか手が止まってしまい、結局チャンスを逃してしまった。そんな経験はありませんか。実はこの「最後の一歩の躊躇」は、医師のように日々慎重な判断を求められる職業の方ほど嵌まりやすい壁です。この記事では、躊躇の正体を解き明かし、資産1億〜2億円を目指すための具体的なロードマップをお伝えします。先にお断りしておくと、これは「迷わずとにかく買え」という話ではありません。数字とリスクを見た上で基準を満たした物件に対して、どう意思決定するかという話です。
私は整形外科医として働きながら2019年に不動産投資を始め、現在は週1勤務まで本業を減らし、アパート9棟・戸建て5軒、年間の家賃収入は3000万円を超える規模になりました。毎月200名以上の医師に不動産投資を教えるなかで、「買える状況なのに買えない」先生を数多く見てきました。その経験から整理した内容です。
躊躇の正体は「性格」ではなく「地図がないこと」
最後の一歩で止まってしまうのは、臆病だからでも、決断力がないからでもありません。明確な目標と、そこに至る地図(ロードマップ)を持っていないからです。
多くの方は「お金が欲しい」「資産を増やしたい」というぼんやりした理由で物件を探し始めます。目的地が曖昧なまま歩いていると、大きな分かれ道——数千万円の買付を入れるかどうか——に立ったとき、判断のよりどころがありません。だから止まるのです。これはむしろ正常な反応で、根拠なく突っ込める人のほうが危ういとすら言えます。
医師の仕事を思い出してみてください。救急の現場で迷わず動けるのは、度胸があるからではなく、判断基準と手順が事前に頭に入っているからです。逆に、基準のない領域では医師ほど慎重になります。「間違えてはいけない」という訓練を長年積んできた職業だからこそ、判断材料が揃っていない場面では足が止まる。不動産投資の躊躇は、この構造とまったく同じです。
つまり克服法は、精神論で勇気を出すことではありません。目標を定め、買うべき物件の基準を「買う前に」決めておくこと。基準が先にあれば、目の前の物件が基準を満たしているかどうかを確かめるだけになり、現場での迷いは大幅に減ります。即行動できる人とそうでない人の違いは、性格ではなく準備の差なのです。
目標は2つに1つ——インカムゲインか、キャピタルゲインか
不動産投資の目標は、突き詰めると2つしかありません。
- インカムゲイン重視:毎月の家賃収入(キャッシュフロー)を安定して積み上げていく
- キャピタルゲイン重視:物件の値上がり益を狙って売却で利益を得る
本業があり、当直や夜勤、週末のバイトまで抱えている医師が選ぶべきは、言うまでもなくインカムゲイン重視です。倍率の高い都心タワーマンションの抽選に当たって転売益を狙う、といった値上がりありきの手法は、私は投資というよりギャンブルに近いと感じています。相場次第で勝ち負けが決まるものは、事業としてコントロールできないからです。
不動産投資の本質は、安く仕入れ、コストパフォーマンスよく修繕し、入居していただいて家賃をいただくこと。そのうえで、あわよくば物件価格の上昇による売却益もついてくる——値上がりは「狙う」ものではなく「結果としてついてくる」ものと位置づけるのが、事業としての不動産投資です。
そして「毎月安定したキャッシュフローを積み上げる」と目的を定めた瞬間、買うべき物件の基準はおのずと決まってきます。利回りが十分に高く、多少の修繕費や空室が発生しても耐えられること(表面利回りの見かけの数字ではなく、返済・修繕費・広告料・固定資産税・税金を引いた後の手残りで見ること)。土地値で価値が下支えされていて、いざというとき売却できる出口があること。エリアの入居者層に合った間取りであること。この基準に照らして数字とリスクを確かめ、総合判断で「合格」と出た物件だけが、即行動の対象になります。
ロードマップのステップ1:1棟目は「黒字申告できる物件」を買う
目的が定まったら、あとは地図に沿って進むだけです。ステップ1は1棟目。ここでの最重要ミッションは、規模でも節税でもなく、黒字の確定申告書を手に入れることです。
世の中には「不動産は節税商品です。赤字を作って本業の税金を減らしましょう」という営業トークが溢れていますが、節税ありきの赤字物件は絶対に良くありません。赤字の申告書は銀行からの信用を失わせ、2棟目への道を自ら閉ざす行為だからです。
正確に言うと、購入した初年度は仲介手数料・不動産取得税・登記費用(司法書士報酬など)といった初期費用がかかるため、その物件単体で見れば帳簿上は赤字になるのが普通です。これは銀行も分かっているので問題ありません。問題なのは、減価償却を取りすぎたり経費を使いすぎたりして、2年目・3年目もずっと赤字が続くこと。これをやると以降の融資審査に大きく響きます。
莫大な黒字である必要はありません。数万円でも、10万円・20万円でもいい。銀行から見ると、わずかでも黒字として残してあるのと赤字にしてしまうのとでは雲泥の差です。その分の納税は、次の融資を引くための必要経費と考えてきちんと払っておく。これが1棟目の鉄則です。
ステップ2:複利の力を解放する——2棟目・3棟目へ
1棟目が生み出すキャッシュフローと、黒字申告で得た銀行からの信用。これに本業の貯蓄を合わせて2棟目の自己資金を作り、また次の物件を買う。不動産投資は無から有を生むものではなく、自己資金にレバレッジ(融資)を効かせて、株よりも効率よく着実に資産を膨らませていく手法です。しかも自分で学べば、修繕や空室といったリスクをある程度コントロールできます。
私が教えていて毎回感じるのは、1棟目を獲得できた先生は、2棟目・3棟目もすんなり買っていくということです。理由は単純で、1棟目を持ってみると「こんなに楽なのか」と拍子抜けするからです。日常的にやることはほとんどありません。管理会社から「修繕に2〜3万円かかりますが直していいですか」と連絡が来たら指示を出す、1〜2年に1回の空室を埋める、その程度です。私自身、普段は自分の物件のことを思い出しもしません。それでも家賃は毎月入り、融資の返済は勝手に進んでいきます。
実際、この1年の私は自分の物件の買い増しよりも、医師の方々に教える活動や、医師がオーナーだからこそ差別化できるコンセプトの宿泊事業の立ち上げに時間を使ってきました。それでも保有物件は家賃を稼ぎ、残債は減り続けています。不動産投資は時間を味方につける事業であり、早く始めた人に先行者利益がある事業だと実感します。最初は利回りの意味も分からなかった受講生の先生方が、家賃収入500万円、1000万円、1500万円と積み上げていく姿を見られるのは、教える側として何よりのやりがいです。
ステップ3:2棟目以降は法人で買う
規模を拡大していくうえで大事なのが、2棟目以降は法人で取得することです(1棟目は個人での購入でも構わないと考えています)。
理由は、個人名義で拡大を続けると、銀行が個人の年収を最重要視するからです。物件が増えて家賃収入が育ってくると、「当直をやめようか」「常勤の日数を減らそうか」と働き方を変えたくなります。ところが個人名義だと、年収が下がった瞬間に融資姿勢へ直接響いてしまう。働き方の自由を手に入れるための投資が、働き方を縛るという本末転倒が起きるのです。
法人で取得して3年ほど経つと、決算書が3期分そろいます。すると「この法人は資産管理会社として単体で成り立っている」と銀行が評価してくれるようになり、個人と法人を切り離して見てもらえます。法人の賃貸事業がきちんと回っていれば、個人の働き方を変えて年収が落ちても、融資への影響を抑えられるのです。
私自身、資産管理法人で2億円前後の融資を引き、それとは別に個人で1億円超の住宅ローンを借りています。医師の年収に対する与信の考え方からすればオーバーしている金額ですが、物件を法人でメインに保有し、法人が事業として自立しているからこそ可能になった借り方です。
「即行動」とは、焦って買うことではない
最後に、冒頭のテーマに戻ります。誤解してほしくないのですが、私は「迷ったら買え」とはまったく思っていません。順序はこうです。
- 目標を決める:インカム重視で、毎月いくらのキャッシュフローをいつまでに作るのか
- 基準を決める:手残りの利回り、土地値の下支え、修繕リスク、間取りと入居者層、出口——数字とリスクを見る物差しを先に持つ
- 基準で検証する:目の前の物件を物差しに当てて、総合判断で合否を出す
- 合格なら、動く:ここで初めて「即行動」。良い物件は市場に長く残らないので、合格と出たのに迷う時間はもったいない
検証の段階で疑ってかかるのは大いに結構です。むしろ徹底的に疑ってください。ただし、検証を尽くして合格と出た物件の前で立ち止まるのは、慎重さではなく準備不足です。躊躇が出たら「怖いから」で終わらせず、「基準のどこが未確認だから怖いのか」を言語化する。確認できるなら確認し、すべて埋まっているなら、それは動くべきときです。
まとめ
- 最後の一歩で躊躇する原因は性格ではなく、目標と地図(ロードマップ)の不在。慎重な判断を訓練されてきた医師ほど、基準がない場面では足が止まる
- 本業のある医師の目標はインカムゲイン重視一択。値上がりありきの投資はギャンブルに近い
- ステップ1:1棟目は黒字申告できる物件。節税ありきの赤字は2棟目への道を閉ざす。数万円でも黒字にして納税する
- ステップ2:1棟目のキャッシュフローと信用を種銭に、複利の力で2棟目・3棟目へ。持ってみれば手間はごくわずか
- ステップ3:2棟目以降は法人で取得。3期の決算書がそろえば個人の働き方と切り離して融資評価される
- 「即行動」は焦って買うことではなく、基準を先に決め、検証で合格と出た物件に対して迷わないこと
不動産投資は「なんとなく買っておけば儲かる」世界ではありません。戦略にも物件にもそれぞれメリット・デメリットがあり、その人の状況に合った考え方が必要です。自分で知識をつけることに加えて、不動産投資に精通した経験者を味方につけることが、失敗のリスクを抑えるいちばんの方法だと私は考えています。
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