不動産投資の失敗と聞くと、「ちょっと損をした」程度を想像するかもしれません。しかし実際に私のもとへ相談に来られる方の中には、そんなレベルでは済まない状況の方がいらっしゃいます。1億、2億の借金を抱え、売ろうにも売却額が借金の残りに届かず、毎月の赤字を給料から補填し続ける——物件の価格が大きいぶん、失敗したときの傷も大きいのが不動産投資です。この記事では、医師をはじめとした高属性の方が嵌まりやすい失敗パターンをランキング形式で整理したうえで、それらの9割に共通する根本原因と、負けない投資のための回避策までまとめてお伝えします。
私は整形外科医として働きながら不動産投資を続け、現在は週1勤務まで本業を減らし、アパート9棟・戸建て5軒、年間の家賃収入は3000万円を超える規模になりました。毎月200名以上の医師に勉強会やコンサルティングを行うなかで、たくさんの失敗相談も受けてきました。その経験をもとに解説します。
不動産投資の失敗は「ちょっと損」では済まない
まず、失敗したときに何が起きるのかを具体的にイメージしてください。不動産投資は借入で買うのが基本です。収益の出ない物件を高値で買ってしまうと、家賃収入だけでは返済と経費をまかなえず、毎月のマイナスを本業の給料から補填することになります。それでも「売ればいいのでは」と思うかもしれませんが、高値掴みした物件は売却額が借金の残り(残債)に届かないため、売るには数百万円単位の手出しが必要になります。手出しができなければ売るに売れず、赤字を垂れ流し続けるしかない——これが失敗の典型的な構図です。
そして医師は、年収と社会的信用の高さから大きな融資が通ってしまいます。知識がないまま業者の言うとおりに買えば、1億、2億という規模で上記の構図に嵌まりうる。「融資が通る」ことと「買っていい物件である」ことは、まったくの別問題です。
医師が嵌まりやすい失敗パターン ワースト5
ここからは、相談を受けるなかで実際によく見てきた失敗パターンを、ランキング形式で紹介します。詳しい事例ストーリーはこちらの動画でも話しています。
第5位:海外不動産の高値掴み
「マレーシアのコンドミニアム、完成すれば必ず値上がりします」——こうした夢のような話は、東南アジアの物件に多く見られます。海外不動産の多くは、建物が完成する前に契約してお金を払い、完成後に引き渡しを受ける方式です。ところが途中で開発会社が倒産し、お金だけ取られて更地が残ったというケースが実際にあります。海外では日本の法律が通じないため、訴訟を起こそうにも、お金を回収しようにも思うようにいかず、相手と連絡が取れなくなることさえあります。現地に足を運び、信頼できる開発会社・仲介会社を見極めたうえで買うなら別ですが、何も確かめずに買う海外不動産は、高値掴みと回収不能の二重のリスクを抱えた投資です。
第4位:新築ワンルーム(区分マンション)投資
「節税になります」「年金代わりになります」という営業トークの定番です。最近は突然の営業電話を警戒する方が増えたぶん、「信頼できる先輩からの紹介」という入口が増えています。お世話になっている先輩の紹介だから、と警戒を解いた時点で業者のペースです。
節税トークにはからくりがあります。建物の価値を毎年少しずつ経費にできる仕組み(減価償却)で帳簿上の赤字を作り、税金の還付を受ける——という説明ですが、経費にした分は売却時の税金計算で取り返される構造になっており、トータルで見ると思ったほど得をしません。そもそも毎年赤字が出るほど経費がかさむということは、収益性が低い物件を高く買わされているということです。赤字を作ることが目的になる投資は、構造そのものがおかしいと思いませんか。
実際、私の周りで営業を受けてこの種の区分マンションを買った方は、10人中9人が1戸あたり数百万円の赤字です。「売ろうとしたら200〜300万円の赤字になる、どうにかならないか」という相談も繰り返し受けてきました。戸建て、一棟アパート、一棟マンション、区分といろいろな種別がある中で、ワンルーム区分は最も損をする確率が高い投資だと私は考えています。学んだうえであえて選ぶならまだしも、最初の一歩には正直おすすめできません。
第3位:サブリース契約(家賃保証)の罠
「空室でも家賃を保証します」という甘い言葉にも注意が必要です。サブリースとは、業者が物件を一括で借り上げ、オーナーに一定の家賃を払う仕組みですが、契約内容は業者側に有利に作られていることがほとんどです。周辺に競合物件が増えて家賃相場が下がれば、「保証」されているはずの家賃も業者の言い値でどんどん減額されていきます。
しかも一度結ぶと外すのが大変です。弁護士に100万円単位の費用を払ってようやく解除できたケースもあれば、実質的に解約できないまま塩漬けになるケースもあります。サブリースが付いたままだと売値にも響き、たとえば5000万円で売れるはずの物件が4500万円でしか売れない、ということも起こります。中古物件にサブリースが付いていることもありますが、私はできるだけサブリースを外した状態で買うことをおすすめしています。
第2位:現地確認をサボった代償
私が提唱しているような、利回りが高く立地もそこそこ良い地方のアパートや戸建てでも、失敗は起こります。典型は「写真で見ても綺麗でしょう」という業者の言葉を信じて、一度も現地に行かずに契約してしまうパターンです。買った後に現地へ行ってみると、周辺はゴミだらけ、共用部は放置車両の山、夜は治安が悪くて入居者が定着しない、隣にゴミ屋敷がある——。崖の上に立つ物件で、崖を支える壁(擁壁)が崩壊寸前だったというケースもあります。擁壁の補修や、建て直しの際の費用は非常に大きく、こうした物件は避けるべきです。
ネットの情報や写真は、都合よく切り取られています。ポータルサイトの物件情報を見るときは、「空欄になっている項目」にこそ注意してください。前面の道路の状況、間取り、外観の写真がないなど、業者は自分に不利な情報をわざわざ載せません。空欄の裏にネックが隠れていることが多いのです。
第1位:業者・営業マンとの向き合い方の失敗
意外に思われるかもしれませんが、1位は物件そのものではなく「人」との向き合い方です。ここには2つの側面があります。
1つ目は付き合う会社・営業マン選びの失敗です。不動産業界は弱肉強食の世界で、良い業者と悪い業者が本当にピンキリです。怖いのは、悪い業者ほど感じが良いこと。2500万円の価値の物件を3000万円、3500万円で売る業者は、500万円上乗せして売れるなら営業マンに50万、100万のインセンティブを払っても十分に元が取れます。だから優秀な営業マンを揃え、熱心に接待し、プライベートの話までしながら距離を詰めてくる。人柄の良さに心を許して「信頼できる人だ」と感じたときが、いちばん危ないのです。
2つ目は自分の希望条件を業者とすり合わせる努力の不足です。良い業者と出会えても、最初から自分の希望どおりの物件が送られてくるとは限りません。私自身、今も付き合いのある業者さんから、最初は希望と違う条件の物件ばかり紹介されていました。そこで「なんでこんな物件を紹介するんだ」とイラッとして返信をやめてしまうと、業者との縁はそこで切れ、物件を紹介してくれる先がどんどん減っていきます。「ご紹介ありがとうございます。ただこの物件は、こういう理由で見送ります。私が求めているのはこういう条件です」と、丁寧に目線をすり合わせ続けること。地味ですが、良い物件情報が集まる人とそうでない人を分ける、決定的な差です。
なぜ医師・エリートほど嵌まるのか——心理メカニズム
ここまでのパターンを見ると、「自分はそんな単純な話には引っかからない」と感じるかもしれません。しかし実際には、優秀な方ほど嵌まりやすい心理の穴があります。
- 多忙ゆえの「プロに任せよう」という思考停止:本業が忙しいからこそ、判断を業者に丸投げしてしまう。この油断が最大の隙です。
- 「紹介」という信用のショートカット:先輩や資産家からの紹介だと、その時点で相手を信用してしまう。実際に相談を受けた先生の例では、「資産家の方がアドバイスをくれている」というので詳しく聞くと、その資産家が紹介した業者から節税目的でワンルームマンションを3戸まとめて契約させられており、すでに手付金30万円を払った後でした。紹介した側が業者から見返りを受け取っている、典型的な構図です。
- 与信が大きいゆえに、身の丈を超えた融資が通ってしまう:普通なら借りられない金額が借りられてしまうため、失敗の規模も1億、2億と大きくなります。
- 本業の成功体験からくるショートカット志向:勉強で結果を出してきた自負があるからこそ、「1棟目から1億超の物件を買いたい」という方が時々いらっしゃいます。しかし自分の知識と経験に見合わない規模から始めるのは危険です。まずは数千万円規模の物件で不動産投資のノウハウを身につけてから、規模を上げていくのが着実です。
失敗の9割に共通する根本原因は「独学で、1人で判断すること」
ここまで個別のパターンを見てきましたが、失敗事例を並べて眺めると、根本原因はもっとシンプルなところに行き着きます。知識が不十分なまま、誰にも相談せずに、1人で買う判断をしてしまうこと。海外不動産も、ワンルームも、サブリースも、現地確認サボりも、突き詰めればすべてここに帰着します。
ワンルーム区分の危うさは、書籍やYouTubeで発信している人も多いので気づきやすくなりました。しかし一棟アパートや戸建てにも罠は隠れています。前面の道が狭くて建て直しがほぼできない物件。擁壁の上に立っていて、建て直すなら1000万、2000万円の追加費用がかかる物件。修繕費がかさみやすい構造なのに、それを伏せたまま仲介される物件。業者もビジネスですから、「売ってしまえばおさらば」というスタンスの人も残念ながらいます。
そして良い物件は、待っていても回ってきません。プロの業者や、時間の有り余った専業投資家と競り合って買っていく世界です。知識ゼロの状態から独学で戦うことも、膨大な時間を注ぎ込み、試行錯誤と失敗を重ねる覚悟があれば不可能ではありません。しかし本業のある医師にとって、それは現実的な戦い方ではないと私は思います。
負けない投資のための回避策
では、どうすれば失敗を回避できるのか。ここまでの内容を裏返せば、やるべきことは明確です。
- 自分の購入基準を紙1枚にまとめて業者に渡す:希望する物件種別・価格帯・利回りの目線・買い方などを1枚にまとめた「物件購入依頼書」を業者に渡し、紹介された物件には見送る理由まで添えて丁寧に返信する。私の書籍でも特典としてひな形を用意している方法です。
- 現地に必ず行く:写真と現地は別物です。周辺環境・共用部・地形(擁壁の有無)まで自分の目で確かめる。ポータルサイトの「空欄」も要チェックです。
- 「節税になります」は出口まで検算する:毎年の還付だけでなく、売却時の税金まで含めたトータルで損得を確かめる。毎年赤字が出る前提の投資は、その時点で疑ってかかる。
- 規模は段階的に上げる:1棟目から億超えを狙わず、数千万円規模で経験を積んでから次へ。自分の与信と自己資金を生かせる手法を、自分の生活に合った形で選ぶ。
- 信頼できる経験者を味方につける:物件の良し悪しに確証が持てないとき、第三者の目線で判断を仰げる相手がいるかどうかで、成功確率と学習スピードは大きく変わります。自信過剰にならず、誰もがゼロからのスタートだと謙虚に構えることが、結局いちばんの近道です。
まとめ
- 不動産投資の失敗は「ちょっと損」では済まない。高値掴み+大きな借入で、売るに売れず給料から補填し続ける構図に陥りうる
- 典型パターンは、海外不動産の高値掴み/新築ワンルーム/サブリース契約/現地確認サボり/業者との向き合い方の失敗。共通するのは業者任せの思考停止
- 医師は「紹介への信用」「大きな与信」「成功体験からくる自信」ゆえに、かえって嵌まりやすい
- 失敗の9割に共通する根本原因は独学で1人で判断すること。自分の基準を持ち、現地を見て、信頼できる経験者の目線を借りることが最大の回避策
不動産投資は、正しく学んで正しく買えば、時間とお金の自由を手に入れられる世界です。逆に、知識ゼロのまま1人で飛び込めば、その大きなレバレッジがそのまま傷の深さになります。大きなお金を動かす前に、実際に結果を出している人の視点を取り入れてみてください。
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