医師の不動産投資、1棟目は新築か中古か?6年前に戻るなら私が買う物件の「正解」

「1棟目は都心近郊の築浅アパートが手堅い。5000万円くらい、利回り6〜7%で安定した物件を買いましょう」——YouTubeや書籍で、こんなアドバイスを見かけたことはないでしょうか。一見、論理的で安全な選択に聞こえます。しかし私は、はっきり言い切ります。この「安全策」こそが、資産拡大のスピードを著しく落とす遠回りになりかねないのです。この記事では、1棟目に新築と中古のどちらを買うべきかという結論とその理由、そして私がもし6年前に戻って1棟目を買い直すなら狙う物件のスペックまで、数字を使って具体的にお伝えします。

私は整形外科医として働きながら不動産投資を続け、現在は週1勤務まで本業を減らし、アパート9棟・戸建て5軒、年間の家賃収入は3000万円を超える規模になりました。毎月200名以上の医師に勉強会やコンサルティングを行うなかで見えてきた「1棟目の選び方」を整理します。

目次

なぜ1棟目がこれほど重要なのか

不動産投資を始める上で誰もがぶつかる、最初にして最も重要な問いが「1棟目に何を買うか」です。理由は2つあります。

  • 1棟目が2棟目以降の融資の土台になる:きちんと収益の出る物件を持っていれば、銀行はその実績を評価して次の融資に応じてくれます。逆に収益の出ない物件を高値掴みすると、借入だけが重くのしかかり、与信(銀行から見た借入余力)を毀損して拡大が止まります。
  • 「大崩れしない」と「資産が拡大する」は別物:業者に勧められるまま「安心そうな物件」を選ぶと、大きくは崩れない代わりに手残りがほとんど出ず、10年経っても2棟目に進めない、という状態になりがちです。

つまり1棟目は、単体の損得だけでなく「その後の拡大速度を決める起点」として選ぶ必要があります。この視点で見ると、世間でよく言われる「正解」がかなり違って見えてきます。

結論:1棟目は「新築」ではなく「中古の一棟もの」

先に結論を言います。1棟目に買うべきは、区分マンションや新築アパートのような利回りの低い物件ではなく、中古(築古)の一棟アパートや戸建てなど、利回りを高く確保できる物件です。新築や築浅を選んでいい場面もありますが、それは後述する条件を満たしたときに限られます。この結論の背景を、動画でも詳しく話しています。

新築プレミアムは必ず剥がれ、家賃は下がっていく

新築の家賃には「新築だから住みたい」という上乗せ分——いわゆる新築プレミアムが含まれています。これは最初の入居者が退去した瞬間から剥がれ始め、その後も築年数とともに家賃は下がっていくのが普通です。

だから私は、新築や築浅を検討する方には必ずこうお願いしています。同じエリア・同じ間取りで、築5年・10年・15年・20年・30年の物件がいくら家賃を取れているか、賃貸ポータルサイトで実際に調べてくださいと。スマホでSUUMOやHOME’S、アットホームを見るだけでできます。この作業をせずに「今の家賃」を前提に収支を組むと、数百万円、場合によっては数千万円単位の見込み違いになります。

なお、広めの間取りで周辺の供給が少なく、家賃が落ちにくい物件も確かに存在します。それなら検討の余地はありますが、5年後・10年後に周辺で新築の供給が増える可能性は誰にも読めません。「このエリアは下がらなさそうだから大丈夫」と考えるのは安直です。

出口で効いてくる——収益物件は「利回りからの逆算」で売れる

家賃下落が本当に怖いのは、月々の収入が減ることよりも売却価格を直撃することです。ここは本でもYouTubeでもあまり語られませんが、絶対に押さえておくべきポイントです。

収益物件を買う投資家は、「家賃収入÷期待する表面利回り」で価格を逆算します。たとえば年間家賃650万円の物件を表面利回り6.5%で買うなら、650万円÷6.5%=1億円です。ところが10年後に家賃が年600万円まで下がっていたらどうなるか。同じ表面利回り6.5%で逆算しても、600万円÷6.5%=約9200万円。さらに築年数が経った物件には買い手がより高い利回りを求めるので、「表面7.5%でないと売れない」となれば600万円÷7.5%=8000万円です。

このとき、仮にローンの残債がまだ9000万円残っていたら、売却額が残債に届かず、自己資金を持ち出さないと売ることすらできない状態になります。これが低利回りの新築・築浅を買った人が陥る、いちばん怖いシナリオです。家賃の下落を見込んだ上で、出口(売却)でいくらになるかまで逆算して初めて、その物件の本当の姿が見えます。

「都心近郊・築浅・5000万円・表面6〜7%」では拡大できない理由

よく「手堅い」とされるのは、都心から電車で30分〜60分のベッドタウン(埼玉・千葉・神奈川など)で、築10年以内、表面利回り5〜7%程度のアパートです。確かに大崩れはしにくい。しかし電卓を叩くと、この物件が極めて厳しいことが分かります。

まず断っておくと、ここで言う利回りはすべて「表面利回り」(年間家賃÷物件価格の見かけの数字)です。そこから引かれるものを具体的に並べます。金利は投資用ローンでよくある2%前後を前提にします。

  • 金利:1億円をフルローンで借りれば、金利2%なら年間約200万円。表面6%(家賃600万円)の物件なら、家賃収入の3分の1が金利だけで消える計算です。もちろん別途、元金の返済も進めます。
  • 固定資産税・都市計画税:物件の規模・評価によっては年100万円を超えることもあります。
  • 仲介手数料:物件価格の3%+6万円(税別)が上限で、1億円なら約306万円。これが買うときと売るときの両方で発生します。低利回り物件では、この往復6%強を家賃収入で取り返すのに何年もかかります。
  • 火災保険・地震保険:規模が大きくなれば年20〜30万円程度かかることもあります。
  • 空室損と広告料:退去すれば家賃はゼロになり、次の入居者を決めてくれた仲介業者には広告料として家賃の2〜3ヶ月分を支払うのが相場です。
  • 修繕・原状回復:築10年を過ぎればクロスや床の張り替え、設備更新が始まります。

さらに見落とされがちなのが入居者層の違いです。築浅の物件に住みたいのは、若くて所得もそれなりにある、目線の高い入居者です。結婚・転勤・家族が増えた、といった理由で入退去のサイクルが速く、退去のたびに「クロスは全部張り替えないと決まらない」といった水準の原状回復を求められます。築浅=手間いらず、では必ずしもないのです。

表面6%からこれらを全部引いて、返済と税金まで払った後の手残り(キャッシュフロー)がいくら残るか。計算してみると、5000万円・表面6〜7%の築浅アパートが「悪くはないが、資産拡大のエンジンにはならない」ことが分かるはずです。

ちなみに、業者がそれでも新築・築浅を勧めてくる理由は単純で、手数料ビジネスだからです。同じ3%でも、5000万円の物件なら約150万円、1億円なら約300万円。価格の大きい新築を売りたくなる気持ちは分かりますが、その論理に乗せられる必要はありません。

私が6年前に戻って1棟目を買うなら、このスペックを狙う

では、もし私が6〜7年前に戻って1棟目を買い直すならどうするか。医師をはじめとする高属性の最大の武器である「融資力」をフルに活用して、次のスペックを狙います

  • エリアと利回り:関東近郊、または地方の中核都市。目安として千葉・埼玉・神奈川なら表面8%以上、地方の政令指定都市なら表面9〜10%以上を確保できる物件。
  • 間取りは広く:広さは正義です。古くても広い物件には需要が残りますが、狭くて古い物件は本当に需要がなく、政令指定都市でも家賃1万円台〜2万円台前半まで落ちることがあります。ファミリーが住める広めの間取りは入退去も少なく、経営が安定します。
  • 駐車場:地方都市では駐車場の有無が入居付けを左右します。敷地内になければ、近隣に月極駐車場の空きがあるかまで歩いて確認します。
  • 接道と再建築:前面道路の幅は4m以上か。なければセットバックで再建築できるか。幅4m以上の道路に2m以上接していれば再建築は可能なので、ここは必ず確認します。
  • 周辺環境:墓地やゴミ屋敷などの嫌悪施設、崩れそうな擁壁がないか、現地を歩いてチェックします。

駐車場については、私自身こんなこともやりました。自宅用の駐車場を探したとき、周囲を歩き回って車が置けそうな空きスペースを見つけ、そのお宅に直接「近くに引っ越してきた者ですが、お金を払うので駐車場として貸してもらえませんか」と交渉したのです。駐車場シェアのアプリに自宅の駐車場を出している方に月極契約を持ちかける、という手もあります。そこまでやらなくても、「近隣で駐車場を確保できるか」を自分の足で確かめる姿勢は物件選びでも役に立ちます。

「融資を10〜15年で返しきれる収益性」が盤石さをつくる

なぜここまで利回りにこだわるのか。目指すのは、家賃収入で融資を10〜15年で返しきってしまえる収益性だからです。私は2019年に不動産投資を始めましたが、この方針で買い進めてきた結果、あと数年で融資の返済が終わる物件が出てきます。返済が終われば、家賃がほぼまるごと手元に入ってくる。そうなればもう不安はほとんどありません。そのまま持ち続けてもいいし、古くなった建物を解体して更地にし、新築を建てて家賃収入をさらに増やす選択肢も生まれます。これが築古・高利回りから入る戦略の到達点です。

実際に私の物件の例を挙げると、築50年の長屋6戸を1200万円で購入して月18万円・表面利回り18%、21万円で買った築40年超の戸建てを再生して月5.3万円・表面利回り30%超で稼働しています。もちろん表面利回りは見かけの数字であり、修繕や空室を引いた手残りで判断する必要がありますが、この水準の収益性があれば、多少の修繕費は家賃収入の中で誤差の範囲に収まります。低利回り物件との違いはここです。

私は戸建て再生も、土地を仕入れて事業者に貸す借地も、新築戸建ても、築50年超の平屋やアパートも、ひと通り経験してきました。その上で、収益性・安定感・手間のバランスが最も良いと感じるのが中古の一棟アパートであり、だからこそ1棟目にもこれをお勧めしています。

1棟目で避けるべきもの

最後に、1棟目で手を出すべきでないものを整理します。

  • 業者に言われるままの新築・築浅・区分マンション:ここまで見てきた通り、低利回りではランニングコストに耐えられず、家賃下落と出口で二重に苦しみます。将来、築古物件の融資を完済して更地にした土地に新築を建てる、といった展開は大いにありですが、それは基礎ができてからの話です。
  • 狭い間取りの築古物件:築20年以内ならまだ戦えても、築30年・40年と経つほど「狭くて古い」は家賃下落が止まらなくなります。安くても手を出さないほうがいい典型です。
  • 内容を理解しないまま結ぶサブリース契約:サブリースは「空室でも一定の家賃を保証します」という契約ですが、仕組みを知らないまま結ぶと、修繕や内装の発注が割高でも気づけない「取られ続ける構造」に組み込まれがちです。大手でもサブリース中心の会社は多いので注意してください。
  • 運営の丸投げ:不動産投資は経営です。管理を任せるのは構いませんが、何にいくら払っているのか、それが割安か割高かを自分で把握した上で任せるのと、分からないまま任せきりにするのとでは、結果がまったく違います。

補足すると、サブリースが合理的な場面もあります。築20〜30年の狭い間取りで周辺の競合が増え、広告料を家賃の半年分払わないと決まらない——そんな状況まで来たら、満室想定家賃の7〜8割でも保証してもらってストレスから解放される、という選択は実際にありです。サブリース会社は自社の利益になる物件を優先して埋めるので、決まりにくい物件ほど満室になりやすいという面もあります。私の知人の大家さんにも、この条件で契約した方がいます。要は「仕組みを理解した上で、自分の状況に合わせて使うかどうか」です。

もう一つ、覚えておいてほしいことがあります。資産規模の拡大と、利益が出ることは別物です。利回りの高い5000万円の物件のほうが、利回りの低い1億円のアパートより利益が出ることは普通にあります。「何億円分持っているか」ではなく、その物件に割安さ(歪み)があるかどうかで利益は桁違いに変わります。規模を追うこと自体を目的にしないでください。

まとめ

  • 1棟目はその後の融資と拡大速度を決める起点。「大崩れしない」だけの物件では2棟目に進めない
  • 結論は新築より中古の一棟もの。新築プレミアムは剥がれ、家賃は築年数とともに下がる。買う前に同じ間取りの築5〜30年の家賃相場を必ず調べる
  • 収益物件の売値は家賃÷利回りの逆算で決まる。家賃下落は売却価格を直撃し、残債を下回れば自己資金を入れないと売れなくなる
  • 「都心近郊・築浅・表面6〜7%」は金利・税・保険・広告料・修繕を引くと手残りが薄く、資産拡大のエンジンにならない
  • 私が6年前に戻るなら、医師の融資力を活かして、関東近郊で表面8%以上・政令指定都市で9〜10%以上、広い間取り、駐車場と再建築可を確認した中古一棟を狙う。融資を10〜15年で返しきれる収益性が盤石さをつくる
  • 避けるべきは、言われるままの新築・区分、狭い間取りの築古、理解しないままのサブリース、運営の丸投げ

不動産は、厳選した良い物件を買って初めて利益が出るものです。プロの業者や専業大家がひしめく世界で勝つには、自分の属性という武器を活かし、自分が有利に戦える土俵で勝負すること。医師や高年収の方には、そのための戦略があります。始める前にしっかり勉強し、実際に結果を出している人の視点を取り入れてみてください。

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