突然ですが、質問です。先生は医師免許を取るために、どれだけの時間と労力を費やしてきましたか。医学部受験、大学6年間の勉強、国家試験、専門医試験、そして日々の勤務——数千時間、人によっては数万時間という膨大な積み重ねだったはずです。ところが不動産投資となると、なぜか多くの先生が「業者さんに勧められたから」「信頼できる先輩からの紹介だから」「会食で会ったら誠実そうな人だったから」という理由だけで、ほとんど勉強せずに数千万円、ときには1億、2億円の借金をしてしまいます。この記事では、なぜこの逆転現象が起きるのか、そして不動産投資で資産を積み上げていける人と破産してしまう人を分ける「5つの違い」を整理します。
私は整形外科医として働きながら不動産投資を続け、現在は週1勤務まで本業を減らし、アパート9棟・戸建て5軒、年間の家賃収入は3000万円を超える規模になりました。毎月200名以上の医師に不動産投資を教えるなかで、成功していく先生とつまずく先生の差を数多く見てきました。その経験をもとにお伝えします。
なぜ医師は、勉強ゼロで「億」の借金ができてしまうのか
医師は「根拠に基づく医療(EBM)」を日々実践しています。エビデンスのない治療を患者さんに勧めることは、まずありません。それなのに、自分の人生を左右する億単位の投資では、根拠を確かめないまま契約書にサインしてしまう——この矛盾には、医師特有の事情があると私は考えています。
- 借りられてしまうから:医師という属性は金融機関からの評価が高く、自己資金ゼロのフルローンが通ってしまうことすらあります。「銀行が貸してくれるのだから大丈夫だろう」という誤解が、勉強を飛ばす言い訳になります。
- 紹介文化に慣れているから:医療の世界では先輩や同僚からの紹介は信頼の証です。その感覚のまま「先輩がやっている業者だから」と、物件そのものを検証せずに買ってしまいます。
- 忙しくて時間がないから:日々の診療で手一杯のなか、「手間なく資産形成できます」という営業トークは魅力的に聞こえてしまいます。
しかし、はっきり言います。不動産は「投資」という名の、人生を懸けた事業です。医師免許のために数千時間を投じた先生が、億の借金にはゼロ時間——この非対称こそが、医師が不動産で失敗する最大の入り口だと私は思っています。
不動産は「事業」。ただし、ゼロから起業するよりずっと再現性がある
「事業」と聞くと身構えるかもしれませんが、私自身、事業の難しさは身をもって知っています。以前、整形外科医としての知見を生かして骨を強くするサプリメントの開発・販売に挑戦したことがあります。集客の設計、決済システム、広告、ターゲットの分析——考えることは無数にあり、結果は約600万円の赤字でした。需要のリサーチをせず「こんな商品があったらいいのでは」という自分発想で始めてしまったことが敗因です。ゼロから商品をつくって売る事業は、それほど難しいのです。
一方、不動産は「投資と事業の中間」に位置します。業者さんや内装業者さんとお互いに利益のある関係を築く、内装費用のかけどころを経営判断する、といった事業的な要素はもちろんあります。しかし核心はシンプルで、「安く買って、高く売る(貸す)」という商売の基本に尽きます。そして、どうすれば安く買えるか・高く売れるかには体系化された知識があり、学べば再現できる。ここがゼロからの起業との大きな違いです。
土地と建物は「唯一無二」——だから価格に歪みが生まれる
では、なぜ不動産では「安く買う」ことが可能なのか。それは、土地と建物が世界に一つしかない唯一無二の存在だからです。上場株式のように市場で毎日値段がつくわけではないので、値付けにはどうしてもブレが出ます。収益物件の評価に慣れていない業者さんも多く、「この価格でいいの?」という物件が実際に出てくるのです。
しかも不動産は1件あたりの金額が大きいので、そのブレも大きくなります。本当は6000万円の価値がある物件が5000万円で買える、逆に6000万円の価値の物件が7000万円で売れる——そういうことが普通に起こります。知っているだけで数百万円、ときに数千万円の差がつく。これが不動産の面白いところであり、同時に、価値を見抜けない人が業者の「歪んだ値付け」の側に回ってしまう怖さでもあります。
成功する人と破産する人を分ける5つの違い
そのうえで、不動産投資で着実に資産を積み上げていける人と、破産に向かってしまう人の「わずかな、しかし決定的な違い」を5つに整理します。
違い①:目的が明確か、ブレブレか
破産する人には「軸」がありません。新築がいいと聞けば新築に飛びつき、流行りの投資が話題になればそちらに流され、「節税になります」という甘い言葉に乗って、キャッシュフロー(手残り)が出ず買った瞬間に含み損を抱えるような物件を買わされてしまいます。
成功する人は逆です。「5年後に当直をなくしたい」「10年後に勤務を週5から週4にしたい」——まず理想の生活を決め、そこから逆算して、どんな物件をどんな順番で買い進めるかという自分なりの戦略を持っています。軸があるから、戦略に合わない流行りや業者の誘いには見向きもしません。目的への最短ルートを外れる投資は、どれだけ話題でも遠回りでしかないのです。
違い②:「銀行が貸してくれる=安全」と思っていないか
失敗する方に多いのが「銀行が貸してくれるのだから大丈夫だろう」という考えです。医師の属性なら、自己資金なしのフルローンが引けてしまうことも珍しくありません。しかし、融資が通ることと、その物件で儲かることは全くの別問題です。銀行は先生の返済能力を見て貸しているのであって、物件の収益性を保証してくれているわけではありません。
典型的な破産パターンはこうです。返済比率(家賃収入に占める返済額の割合)がカツカツの高値掴み物件を、それと気づかずフルローンで購入。金利上昇や突発的な修繕、家賃下落で赤字に転落し、業者に言われるがまま区分ワンルームを10戸、20戸と買い増して、気づけば売却しようにも大きな損失が確定する状態になっている——。リスクとリターンを自分で計算できないまま借入を重ねることが、破産への最短ルートです。
違い③:目先の「価格」ではなく、将来の「価値」を見ているか
「5000万円の融資は怖いから、2300万円くらいの区分にしておこう」——このように価格だけでリスクを判断するのも失敗する人の特徴です。5000万円の物件でも価値が下支えされていれば安全ですし、2300万円の物件でも将来価値が半分になるなら危険です。金額の小ささは安心の根拠になりません。「新築だから安心」「フルローンが出るから安心」も同じ誤りです。
見るべきは価値です。不動産の本質は土地と建物であり、その価値は2つの方法で確かめられます。1つは家賃収入(利回り)から逆算する方法(収益還元法)、もう1つは土地の値段と建物の値段を積み上げて計算する方法(積算法)です。土地なら前面の道路の状況まで含めて自分で価値を出せるようになること。そして建物がいずれ寿命を迎えたあと、更地で売るのか、土地を分けて戸建て用地にするのか、アパートを建てるのかという出口まで考えたうえで買うこと。ここまでやって初めて「高値掴みしない、むしろ安く買う」が実現します。
なお、ここ数年の市況上昇で「数年前に買った物件に含み益が出ている」という方も多いはずです。ただしそれは、市況の変化で偶然得られた利益であって実力ではありません。価値を見ずに買う習慣のまま次の物件に向かえば、風向きが変わったときに逆の結果が待っています。
違い④:データで判断しているか、希望的観測か
破産する人は、どこかギャンブラー気質です。「今は利回りが低いけれど、このエリアは将来値上がりするはずだ」——根拠のない期待で億の買い物をしてしまいます。
私たち医師は、EBM(根拠に基づく医療)を実践しています。不動産も同じです。どんな間取り・条件なら入居がつきやすいか、築年数が進むと家賃はどう下がるか、修繕費はいつ・いくら発生しそうか。将来の収支を数字で予測してから買うのが成功する人のやり方です。もちろん不動産には、入居者がいて内見できない、配管の傷み具合が分からないといった「見えない部分」が必ず残るので、最後は決断力も必要です。しかしそれは、データを尽くしたうえで残る不確実性を引き受けることであって、最初から根拠なしに賭けることとは全く違います。
違い⑤:増えたお金を浪費するか、再投資するか
最後は、お金の使い方です。家賃収入が入り始めたり年収が上がったりした途端に生活水準を上げてしまう人は、種銭が貯まらず、そこで成長が止まります。
私自身は、ブランド物の服や車にはほとんど興味がなく、コンビニのご飯もカップラーメンも普通に美味しいと感じる性分です。その代わり、次の物件への再投資と自己投資には惜しみなくお金を使います。学びたいことがあれば、教えてくれる人に何十万円を払ってでも教わります。理由はシンプルで、自分の人生の理想に近づくための投資は、回収できるリターンが最も大きいからです。浪費がすべて悪いわけではありませんが、「これは消費か、投資か」を意識して使えるかどうかが、10年後の資産規模を分けます。
まとめ:医学と同じように、不動産も「学んでから」始める
- 医師免許には数千〜数万時間を投じたのに、億の借金は勉強ゼロで——この非対称が医師の失敗の入り口。不動産は投資という名の事業と心得る
- 土地と建物は唯一無二だからこそ値付けに歪みがあり、価値を見抜ける人だけが安く買える
- 違い①:理想の生活から逆算した自分の戦略があるか、流行りに流されるか
- 違い②:融資が通ること=安全ではない。リスクとリターンを自分で計算する
- 違い③:目先の価格ではなく、収益と土地建物の両面から将来の価値を算出し、出口まで考えて買う
- 違い④:希望的観測ではなく、EBMと同じように数字とデータで判断する
- 違い⑤:増えたお金は浪費ではなく、次の資産と自分への再投資に回す
不動産投資は、医師の先生方が理想の働き方や家族との時間を手に入れるための、強力な手段になり得ます。ただしそれは、医学を学んだときと同じように「学んでから実践する」ことが前提です。勉強せずに買うことだけは、どうか避けてください。
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