サブリース契約で確認すべきは、保証期間の長さではありません。「賃料の見直し条件」と「解約条件」の2つです。「家賃保証」「35年一括借り上げ」という言葉だけで判断すると、収支と売却価格の両方に影響が出ます。
現役の整形外科医として不動産投資を実践している私も、本業が忙しい医師にとって毎月一定の家賃が入る安心感は大きいと考えています。空室のたびに収入が変わる状態より、一定額が入る仕組みに魅力を感じるのは自然です。ただしサブリースは、空室リスクが消える契約ではありません。リスクの一部をサブリース会社に引き受けてもらい、その対価を家賃から払い続ける契約です。この記事では、仕組み、法律で業者に課された義務、契約前に確認する3つのリスク、それでも選択肢になるケースまでを整理します。
サブリース契約とは——空室リスクを買い取ってもらう仕組み
通常の賃貸経営では、大家が入居者に部屋を貸し、入居者から家賃を受け取ります。6戸のアパートが満室なら家賃収入は月30万円、1戸空けば月25万円というように、空室状況によって収入が変わります。
サブリース契約では、大家が管理会社やサブリース会社に部屋またはアパートごと貸し、その会社が入居者へ転貸します。大家が受け取るのは、サブリース会社との契約で定めた賃料です。そのため空室が出ても、一定の収入を受け取れます。
ここで押さえておきたいのは、サブリース会社から受け取る金額は、満室時の家賃収入より少なくなるのが基本だという点です。その差額が、空室リスクを引き受けるサブリース会社の収益になります。保証してもらう分の費用を、毎月の家賃から払っていると考えてください。
2020年のサブリース新法で、業者に3つの義務が課された
サブリースを巡るトラブルが相次いだことを受けて、2020年6月に「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」(いわゆるサブリース新法)が成立し、同年12月15日に施行されました。この法律で、サブリース会社と勧誘者には次の義務が課されています。
- 誇大広告の禁止 家賃が下がる可能性があるのに「家賃保証」とだけ表示するような、著しく事実と異なる表示は禁止されています
- 不当な勧誘の禁止 賃料の減額リスクなど、判断に影響する事実を故意に伝えない勧誘は禁止されています
- 契約前の重要事項説明 契約を結ぶまでに、賃料や契約期間などの条件を書面で説明する義務があります
実務上の意味は単純です。契約前に重要事項説明書が出てくるはずなので、それを必ず受け取り、賃料の改定と解約に関する条項を自分の目で読むということです。口頭で「ずっと30万円です」と言われても、書面にその根拠がなければ意味がありません。逆に言えば、この書面を渋る相手とは契約しないという判断ができます。
契約前に必ず確認する3つのリスク
①保証賃料は、将来も同額とは限らない
家賃保証と説明されても、当初の賃料が契約期間中ずっと維持されるとは限りません。契約が2年更新であれば、更新のたびに保証賃料が見直される場合があります。
たとえば月30万円だった保証賃料が、入居付けの難しさを理由に2年後に28万円、次の更新で26万円、4年後には25万円へ下がっていく、という展開があり得ます。空室を避けるために結んだ契約なのに、保証賃料そのものが下がれば、想定していた収支は崩れます。収支計画を立てるときは、契約開始時の金額だけを見てはいけません。賃料の見直し条件と、その時期まで確認します。
②大家の側から簡単には解約できない
サブリース契約では、大家が貸主、サブリース会社が借主という関係になります。契約後に「条件が合わないからやめたい」と考えても、大家の都合だけで一方的に打ち切れるとは限りません。
解約には相手との交渉と着地点の調整が必要で、すぐ動き始めても半年から1年ほどかかることがあります。すでに契約している場合は、更新時期、賃料の改定条件、解約の通知期限を確認したうえで、どの程度の賃料減額を判断基準にするのかを決め、早めに話し合いを始めてください。
③売却価格が伸びにくくなる
収益物件の価格は、家賃収入と利回りから逆算されます。サブリース賃料が市場の家賃より低ければ、実際には入居需要がある物件でも、その低い収入を基準に売却価格を見られる可能性があります。
裏を返せば、サブリースを解約できれば物件価格が100万円、200万円と上がる余地があるということです。解約に費用がかかる場合もありますが、費用の額だけで判断せず、解約後の家賃収入と想定売却価格まで並べて比べてください。出口まで含めて物件を判断する考え方は、安い築古アパート投資の注意点3つでも解説しています。
それでもサブリースが選択肢になるケース
私はサブリース契約をすべて否定しているわけではありません。空室が続いていて、大家自身が強い精神的な負担を感じている場合には、収入を一定にする手段になります。
ある大家さんが所有する郊外のアパートは、ワンルームや1Kが中心で、3戸、4戸と空室が増えていました。そこで満室8戸分ではなく、6戸から7戸分の家賃を受け取るサブリース契約を結びました。サブリース会社は、大家へ支払う賃料と満室時の家賃との差額が利益になるため、空室対策や入居付けに取り組む動機があります。多少の収入を手放しても、家賃の変動と空室のストレスを減らしたい人には合理性があります。
契約前・契約中にやること
安心感だけで決めるのではなく、次の5つを並べて比べてください。数字と契約条項で判断すれば、迷いはかなり減ります。
- 自主管理または通常の管理委託で得られる想定家賃
- サブリース会社から支払われる保証賃料
- 賃料を見直す時期と、その条件
- 解約の条件と、解約までに必要な期間・費用
- その契約が売却価格に与える影響
空室への不安を減らす価値が、失う家賃と契約上の制約を上回るなら選択肢になります。本業が忙しいという理由だけで決めてはいけません。
この手の失敗が医師に集中する理由は、不動産投資はやめとけと言われる理由と、医師がカモにされる構造に整理しています。
まとめ
サブリースの問題は、家賃保証という仕組みそのものではありません。保証賃料が下がる可能性と、解約の難しさを理解しないまま長期契約を結ぶことが問題です。
契約前なら、重要事項説明書を受け取り、賃料の改定と解約に関する条項を必ず確認します。すでに契約しているなら、すぐ解約できると考えず、交渉に必要な期間、費用、解約後の家賃収入、想定売却価格を並べて判断してください。知っているかどうかで、毎月数万円、売却時にはさらに大きな差が生まれるのが不動産投資です。
本業と両立しながら不動産投資を進める基本は、拙著初心者からはじめる医師の不動産投資(Amazon不動産投資部門1位)でもまとめています。サブリースを使うかどうかは、物件ごとの収益性と出口戦略から決める。それが私の結論です。
よくある質問
サブリース契約で契約前に最も確認すべきポイントは何ですか?
保証期間の長さではなく、「賃料の見直し条件」と「解約条件」の2つです。サブリースは空室リスクが消える契約ではなく、リスクの一部を会社に引き受けてもらい、その対価を家賃から払い続ける契約だからです。契約前に重要事項説明書で該当条項を自分の目で確認してください。
サブリースの家賃保証があれば、保証賃料はずっと同じ金額を受け取れますか?
同額とは限りません。契約が2年更新であれば、更新のたびに保証賃料が見直される場合があり、月30万円が28万円、26万円と下がっていく展開もあり得ます。収支計画では契約開始時の金額だけでなく、賃料を見直す時期とその条件まで確認することが必要です。
サブリース契約は大家の側から簡単に解約できますか?
簡単には解約できません。大家が貸主、サブリース会社が借主という関係になるため、大家の都合だけで一方的に打ち切れるとは限らず、交渉には半年から1年ほどかかることがあります。更新時期、賃料の改定条件、解約の通知期限を確認し、早めに話し合いを始めてください。
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