新築建売が売れない「建売氷河期」は買い時か?不動産投資家が取るべき2つの戦略

いま、郊外の新築建売住宅が歴史的なレベルで売れ残り、在庫の山になりつつあります。業界ではこの状況を「建売氷河期」と呼ぶ声もあるほどです。「マイホームを買う予定はないから関係ない」と思われたかもしれませんが、それは少し違います。新築が売れないという変化は、中古市場や融資、そして私たち不動産投資家の戦略にまで波及してくるからです。この記事では、なぜ建売が売れなくなっているのか、その構図を整理したうえで、この変化のなかで資産を守りながら着実に拡大していくための戦略をお伝えします。

私は整形外科医として働きながら不動産投資を続け、現在は週1勤務まで本業を減らし、アパート9棟・戸建て5軒、年間の家賃収入は3000万円を超える規模になりました。毎月200名以上の医師に勉強会やコンサルティングを行うなかで見えてきた、いまの市況の読み方をお話しします。

目次

なぜ新築建売が売れなくなったのか——3つの要因

売れ残りの理由は複合的ですが、決定的なのは次の3つだと私は見ています。

1. コロナ特需の終了と「出社回帰」

コロナ禍では「郊外で広々とテレワーク」という需要が生まれ、郊外の戸建てが飛ぶように売れました。しかしその特需は終わりました。多くの企業が「テレワークでは生産性が落ちる」と判断して出社に戻し、働く場所の重心は再び都心へ。郊外に広い家を求める層そのものが減ったのです。地方都市ではいまも一定のテレワーク需要が残っていますが、市場全体を支えるほどの力はありません。

2. 建築コストの高騰と、実需層の年収との乖離

これがいちばん大きい要因です。木材も鉄骨も本当に高くなり、職人の人件費も高騰しています。その結果、郊外のごく普通の建売住宅でも価格が大きく上がってしまいました。一方で、その家を買うはずの実需層(自分が住むために買う方々)の年収は、価格ほどには上がっていません。「建売の価格」と「買い手の年収」の差がどんどん開いていき、誰も手が届かなくなって在庫が積み上がる——これが建売氷河期の基本構図です。

3. 住宅ローン金利の上昇と様子見心理

住宅ローンの金利も少しずつ上がってきています。不動産投資向けの融資(おおむね2%前後が目安)に比べれば、住宅ローンはまだ1%前後かそれ以下と十分に低いのですが、実需の方にとっては0.2%、0.4%の差でも毎月の返済額に効いてきます。「金利が落ち着くまで様子を見よう」という心理が広がり、「何でも買える・何でも売れる」という空気から一転、買い控えが起きやすくなっているのです。

デベロッパーのジレンマ——値下げしたくても原価が下げられない

売れ残った在庫を抱えるデベロッパー(分譲業者)は、いま苦しい立場にあります。在庫を処分するために値下げをしたい。しかし建築費が高騰しているため原価が高く、簡単には下げられない。まさに板挟みです。

それでも、決算はやってきます。在庫を抱えたままだと決算書の見栄えが悪くなり、銀行からの評価が下がって来期の融資に響きかねません。だから決算を迎える前に、赤字覚悟でも売り切ってしまうという苦渋の決断をすることがあるのです。

実需にとっては「高くて買えない」市場でも、この構図を理解している投資家にとっては、条件次第でバーゲンセールになりうる——ここが今日いちばんお伝えしたいポイントです。

戦略1:値下がりした新築建売を「地価上昇エリア×利回り」で拾う

売れ残った新築建売の価格は、段階的に下がっていきます。たとえば3000万円だったものが2800万円になり、2600万円になり——そして決算のタイミングで一気に2300万円まで下がる、ということが実際に起こります。

ここまで下がって、新築の戸建てで表面利回り7〜7.5%(年間家賃÷物件価格の見かけの利回り)に乗るのであれば、検討に値すると私は考えています。ただし条件があります。私は自分が買う物件も、皆さんにおすすめする物件も、一貫して「地価が上昇傾向のエリアで買う」ことを条件にしています。地方でも、東京・千葉・埼玉・神奈川でも構いません。土地の価値が下支えしてくれるエリアで利回り7%が取れるなら、新築建売も十分に投資対象になりうるのです。

私自身、こうした状況で購入した経験があります。大きな工場の建設が予定され、再開発で人口も需要も増えていく見込みのエリアで、売れ残っていた新築戸建てが500万円下がった価格で売りに出たのです。新築なのにほぼ土地値プラスアルファで買えるという「歪み」のある物件で、利回りも7%に乗る水準でした。業者側が苦渋の決断で赤字覚悟の売却に踏み切った案件だったのだと思います。

注意点もあります。「安くなったから買う」のではなく、収益還元(家賃収入から見た物件の価値)、土地の価値、建物の価値をきちんと見定めたうえで買うこと。値下げ幅の大きさに目を奪われて、そもそも需要のない立地の物件を掴んでしまっては本末転倒です。

戦略2:建築費高騰の影響を受けにくい「中古」の安定感

新築の価格には、高騰した建築費・人件費・材料費がそのまま乗っています。いま新築を建てること自体が本当にしんどい時代で、新築のアパートも建売も「原価高」を背負った価格になりやすい。裏を返せば、すでに建っている中古物件は、この建築費高騰の影響を直接は受けません

私は2019年に不動産投資を始めてから、築30年代から築50年を超えるものまで古い物件を複数保有していますが、正直なところ修繕費はほとんどかかっていません。かかっている例を挙げると、浄化槽(下水道につながっていない物件の排水処理設備)のある物件で数ヶ月に1回ほど排水が詰まり、高圧洗浄に2〜3万円かかる程度。その物件は表面利回り17%ほどで毎月20万円以上の家賃が入ってくるので、このランニングコストは誤差の範囲です。

さらに、築40年、築50年を超えるような物件は土地値以下で購入しているので、極端な話、建物がどうなっても困りません。古くなれば土地として売却してもいいし、更地にして新築を建て、キャッシュフローを回す選択肢もある。出口(売却時の逃げ道)が複数あるというのが、土地値で買った築古物件の強さです。こうした物件はキャッシュマシンになりやすく、精神的にもとても楽です。

インカム重視かキャピタル重視か——タワマン過熱への見方

不動産投資の利益には、大きく2種類あります。

  • インカムゲイン:家賃収入による利益。毎月コツコツ積み上がる
  • キャピタルゲイン:土地や建物の値上がりによる利益。売却時にまとめて得る

いま話題のキャピタル狙いの代表が都心のタワーマンションです。数年前に買った方には数千万円の含み益が出ているケースもあり、それに目がくらむ気持ちは分かります。ただ、すでに一般の実需では買えないレベルの価格になり、海外の投機的なマネーが流入している状況で、実際の価値と価格が離れてきていると私は見ています。あと数年は上がるかもしれませんが、このまま上がり続けるとは私には思えません。実際、足元では1割ほど値引きされる区画が出るなど、調整の動きも見え始めています(あくまで私の相場観です)。

だからこそ私は、メインの戦略にはインカムゲイン重視をおすすめしています。家賃収入は相場の熱狂に左右されにくく、リスクを抑えながら本業を少しずつ減らしていく(私自身が週1勤務まで減らせたのもこの型です)のに向いているからです。キャピタル狙いをポートフォリオの一部に入れるのは構いませんが、その場合は誰が見ても間違いのない立地——学区の良さや海外からの需要の底堅さなど、複数の需要に支えられた場所——に限定すべきです。「山手線の内側だから大丈夫」といった単純な線引きではなく、その立地が本当に選ばれ続ける理由があるかで判断してください。ちなみに私は、自宅だけはキャピタルゲイン狙いの投資と位置づけて、立地に徹底的にこだわって購入しました。

まとめ

  • 郊外の新築建売は「建築コスト高騰×実需の年収が追いつかない」構図で歴史的な売れ残りに。コロナ特需の終了と金利上昇による様子見も追い打ち
  • デベロッパーは値下げしたくても原価が下げられないジレンマ。ただし決算前には赤字覚悟の在庫処分が起こりやすく、投資家にはチャンスになりうる
  • 値下がりした新築建売は、地価上昇エリア×表面利回り7%以上が検討ライン。収益還元・土地値・建物価値の見定めが前提
  • 建築費高騰の影響を受けない中古・築古は安定。土地値以下で買えば出口が複数あり、キャッシュマシンになりやすい
  • メインはインカムゲイン重視が堅実。過熱するタワマンなどキャピタル狙いは、やるなら間違いのない立地に限定を

時代によって市場の景色は変わりますが、「土地の価値に支えられた物件を、収益がきちんと回る価格で買う」という原則は変わりません。市況の変化を恐れるのではなく、構図を理解してチャンスに変える——そのための知識と目線を、ぜひ身につけてください。

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