「インフレ対策なら、価値が下がらない都心の不動産一択だ」——最近、こうした声をよく耳にします。しかし私は、この一見正しそうな常識こそが、投資家を「儲からない投資」へ導く落とし穴になり得ると考えています。この記事では、インフレ時代に不動産がなぜ有効なのかという基本から、「都心一択」が正解とは限らない理由、そして私が実践している戦略までを整理してお伝えします。
私は整形外科医として働きながら不動産投資を続け、現在は週1勤務まで本業を減らし、アパート9棟・戸建て5軒、年間の家賃収入は3000万円を超える規模になりました。いまは毎月200名以上の医師に不動産投資を教えています。その経験をもとに、本質の部分をかみ砕いて解説します。
インフレ時代、現金と給与の価値は静かに目減りしている
ここ数年、インフレと円安が進み、私たちの資産は静かに目減りしています。分かりやすいのは「20年前の1万円と今の1万円は、買えるものが違う」という感覚です。物価が上がるのに給与や預金残高がそのままなら、その価値は相対的に落ちていく。一生懸命働いて得た給与も、銀行に預けた現金も、持っているだけでは守れない時代になっています。
この環境で不動産が注目されるのは、大きく2つの理由があります。
- 実物資産であること:土地や建物はモノそのものなので、物価が上がる局面では価格や家賃もそれに追随しやすい。現金のように「額面は同じなのに価値だけ減る」という形にはなりにくい。
- 借入の実質的な目減り:不動産投資は銀行融資を使って買うのが基本です。借入額は金額が固定されているため、インフレでお金の価値が下がると、返済の「実質的な重さ」も少しずつ軽くなっていきます。インフレ局面では、現金を貯める人より、実物資産を持ち適切に借入をしている人のほうが有利になりやすい構図です。
だからこそ多くの人が不動産に向かうのですが、ここに冒頭の罠があります。「インフレに強い不動産=都心」と短絡してしまうことです。
不動産市場で進む「二極化」という現実
まず市場で何が起きているかを直視する必要があります。いま不動産市場は、はっきりと二極化しています。
一方の極は、高騰し続ける都心です。海外の富裕層や投資マネーが流入し、都心のタワーマンションや一等地は、日本人の実需とはかけ離れた水準まで上がっています。海外の方にとって「渋谷」は、日本人にとってのニューヨークのような象徴的な存在で、渋谷・新宿などの人気は強烈です。エリアによっては、1〜2年前と比べて大きく値上がりしたと感じる物件も出てきています。
もう一方の極は、価値が下がり続けるエリアです。人口減少が進む限界集落や、かつて造成された地方のニュータウンなど、スーパーやコンビニが遠く生活利便性の低い地域は、買い手がつかず資産価値がゼロに近づいていくケースもあります。
この現実を見て「だから都心一択だ」と結論づける人が多い。ですが、私はその考え方には賛成できません。
「都心一択」が正解とは限らない理由——事業として成り立つか
理由はシンプルで、高騰しきった都心の物件は、賃貸事業として成り立ちにくいからです。
いま都心の収益物件の表面利回り(年間家賃÷物件価格の見かけの数字)は、3〜4%程度まで下がっているものが目立ちます。ここから融資の返済、修繕費や広告料・固定資産税などの経費、税金を引いた「手残り(キャッシュフロー)」で考えると、金利が上昇局面にある今、ほとんど残らないどころか赤字もあり得る水準です。
しかも、こうした低利回りの都心物件は融資も簡単ではありません。自己資金を物件価格の半分近く求められるケースもあり、たとえば1億円の物件に5000万円の現金を入れる、といった買い方になりがちです。それだけの自己資金を寝かせて、手残りがほぼ出ない——これでは資産形成のスピードは上がりません。
「それでも都心は値上がりするから」という反論は当然あるでしょう。ただし値上がり益(キャピタルゲイン)狙いの投資は、上がるか下がるかを事前に当てられない以上、投機的な要素が強くなります。仮に将来、海外投資家の不動産取得に何らかの規制がかかるようなことがあれば、市場が冷え込む可能性もゼロではありません。医師のように本業がある方は、売却益を当てにするのではなく、家賃収入(インカムゲイン)を軸に据えるほうが安全だというのが私の考えです。
私が実践する第3の道——地価が上昇する地方中核都市の高利回りアパート
では、都心はギャンブル性が高く、衰退エリアは無価値化していくなら、どこへ向かえばいいのか。私が一貫してお伝えしているのが、地価が上昇トレンドにある地方中核都市で、利回りが高く、間取りの広い優良アパートを狙う戦略です。
私が扱う物件は表面利回り10〜12%、なかには16%というものもあります。こう言うと「事故物件では」「人口減少地域では」と思われるかもしれませんが、まったく逆です。私は土地を仕入れるような感覚で不動産を買っています。土地の価値を重視し、地価が上がっていくエリアを選んでいるので、2000万円で買った物件の土地だけで3000万円、場合によっては4000万円の価値になっているものもあります。建物で家賃を稼ぎながら、足元の土地もインフレとともに値上がりしていく。これがインフレに強い、という意味です。
実際、私の保有物件には築50年の長屋6戸を1200万円で買い、月18万円の家賃(表面利回り18%)を生んでいるものや、21万円で買った築40年超の戸建てを再生して月5.3万円・利回り30%超になっているものもあります。派手さはありませんが、数字は堅実です。
この戦略の強さは、高い利回りがリスクの緩衝材になることです。
- 金利が上がっても、修繕費がかさんでも、利回りに余裕があるので吸収できる
- 融資期間が10年・15年と短くても返済に耐えられる。完済すれば、その物件は実質タダで手に入ったのと同じで、あとは家賃を生み続けてくれる
- 都心と違って買い手の競争相手が比較的少なく、割安に仕込める余地がある
もう一つ、時間の話をさせてください。80歳で10億円あっても、正直使い道は限られます。30代で1億円、40代で2〜3億円ある状態のほうが、人生の選択肢としてはるかに価値が高い。20〜30年後の値上がりを待つ投資より、いま毎月の家賃が積み上がる投資のほうが、若いうちに資産をつくるという目的に合っているのです。
都心を全否定はしない——「ピンを置く」という考え方
誤解のないように補足すると、私は都心を全否定しているわけではありません。ポートフォリオの一部として、時代の流れに乗るための「ピン」を都心に置いておくこと自体はありだと思っています。
実際、私自身も住宅ローンという形で、都心部に土地から新築を建てています。投資利回りに換算すれば3.5%前後ですが、住宅ローンは金利が非常に低く、地価が上昇しているエリアなので、20〜30年後に今より価格が下がりにくいだろうという判断です。土地の仕入れ値や建築費を投資家の目線で精査し、割安に組み立てられるなら、こうした「ピン」は資産防衛として機能します。あくまで、事業の主軸は高利回りの収益物件に置いたうえでの話です。
まとめ:インフレ時代の不動産投資で押さえるべきこと
- インフレ下では現金・給与の価値が目減りする。実物資産である不動産と、実質負担が軽くなっていく借入の組み合わせは有効な防衛策
- 市場は「高騰する都心」と「無価値化するエリア」に二極化。ただし都心一択は事業として成り立ちにくい(表面利回り3〜4%・自己資金過大・金利上昇でCFが出ない)
- 値上がり益頼みの投資は投機に近づく。本業のある医師は家賃収入(インカムゲイン)主軸が安全
- 第3の道は、地価上昇トレンドの地方中核都市×高利回り×土地値の下支え。高い利回りが金利・修繕リスクを吸収し、短期融資の完済後はキャッシュを生み続ける
- 不動産は数百万〜数千万円が動く世界。知らずに参入して業者に言われるまま買うと、大きな損失もあり得る。信頼できる第三者の目線を持つこと
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