「融資額の3〜5%を、保証料とは別に手数料として先に支払ってください」——最近、こんな融資条件を提示される場面が増えてきています。1億円借りるなら300万〜500万円。この数字を聞いて「そんなものか」と受け入れてしまうか、「それは避けられる」と知っているか。この差が、これからの不動産投資の成否を分けます。
こんにちは。不動産投資メンターのいなせです。私は整形外科医として働きながら不動産投資を続け、現在は週1勤務まで本業を減らし、アパート9棟・戸建て5軒、年間の家賃収入は3000万円を超えています。この実績をもとに、毎月200名以上の医師に向けて不動産の勉強会や個別のコンサルティングを行っています。今回のテーマは、2026年の銀行融資はどう変わるのか。そして、医師の与信という「特権」が使えるうちに何をすべきかです。
なぜ2026年、融資の入口が狭くなるのか——現場で起きている3つの変化
「不動産投資はもう厳しいのでは」という声を耳にしますが、大げさな話ではなく、融資の現場では実際に変化が起きています。私が感じている変化は、大きく3つです。
変化①:金融庁の監視強化
かつてスルガ銀行の問題が話題になったように、不正融資は今も完全にはなくなっていません。その温床になりやすいとされる信用金庫・信用組合など、地元に根付いた金融機関に対して、金融庁が監視を強めています。
その結果、金融機関側の審査は明らかに慎重になりました。事業に実態があるか、運営はきちんと回っているか。代表者や関連会社の決算書、過去の口座の取引履歴まで求められるケースが増えています。少しでもリスクがあると見なされた事業、あるいはリスクのある人が関わる案件は、融資が通りづらくなっているのです。
変化②:地方銀行の再編で「相見積もり」が効かなくなる
もうひとつが、地方銀行の統合・再編です。大手の地銀が小規模な地銀を実質的に吸収する動きが進んでいます。
これが投資家にとってなぜ問題か。融資は本来、複数の金融機関に打診して条件を比べる「相見積もり」ができるものだからです。たとえば5000万円の物件に対して、A銀行は融資額4000万円・金利2%、B銀行は4500万円・金利2.5%、C銀行はフルローンだが金利3%以上——。金利だけでなく、融資年数、保証料の有無、連帯保証人が必要かどうかまで含めて、条件を天秤にかけて選ぶのが本来の姿です。
ところが銀行の数が減れば、この競争が働かなくなります。その地方に事実上一行しか選択肢がなければ、金利が高くても、融資期間が短くても、融資額が伸びなくても、受け入れざるを得ない。貸し渋りや条件の悪化を、借り手の側から覆す手段がなくなっていくのです。
変化③:審査基準の引き上げ——医師も例外ではない
3つ目が、審査基準そのものの引き上げです。象徴的なのが、遠方の物件にも融資が出ることで投資家の強い味方だったオリックス銀行です。同行は、都内在住のままでも札幌や仙台といった政令指定都市の物件に融資してくれる点が大きな特徴でした。
そのオリックス銀行の基準が、以前は「年収700万円・自己資金500万円」がひとつの目安だったのに対し、現在は「年収800万円・自己資金1000万円」あたりが貸す・貸さないの分かれ目になりつつあると、現場では言われています。しかもこれは同行に限った話ではなく、他の金融機関にも同じ引き締めの流れが広がってきています。
つまり、「ある程度お金を持っている人にしか貸さない」方向へ、市場全体が狭まっているということです。これまで医師は、医師免許と高い年収があれば、銀行が積極的に貸してくれる立場にありました。しかしこの波は、医師や高属性の方にも確実に及んできます。「医師だから大丈夫」という前提そのものが、揺らぎ始めているのです。
見落としがちな融資条件の罠——「先払い手数料500万円」
もうひとつ、必ず知っておいてほしい話があります。一部の大手地銀で導入され始めている、コベナンツ融資(財務制限条項付きの融資)にかかる手数料です。ざっくり言えば、融資額の3〜5%を、保証料とは別に、先に支払ってくださいという条件です。
1億円を借りるなら、最初に300万〜500万円を銀行に支払う計算になります。頭金や物件購入の諸費用とは別枠の出費です。せっかく利回りが良さそうに見えた物件でも、この手数料を織り込むと実際の収益性は下がりますし、温存しておくはずだった自己資金が最初に大きく削られてしまいます。この動きは地銀だけでなく、信用金庫・信用組合にも少しずつ広がってきています。
大事なのはここからです。この手数料は、すべての金融機関にあるわけではありません。手数料を取る銀行と取らない銀行がある。私自身は基本的に手数料のない金融機関で融資を引いてきました。金利は2%前後、保証料も不要。その代わり自己資金は多めに入れる必要がありましたが、トータルで見れば条件の良い付き合い方ができています。
不動産投資の知識がないと、「融資とはこういうものか」と思って言われるがまま支払ってしまいます。手数料の有無、金利、融資年数、保証料、連帯保証人——こうした条件の全体像を把握したうえで金融機関と付き合うかどうかで、手残りは大きく変わるのです。
ピンチはチャンス——ただし「暴落を待つ人」には情報は回ってこない
「金利が上がり、地価も建築費も人件費も上がって、都心の利回りは下がる一方。今から参入すべきですか?」——これもよく聞かれる質問です。
正直に言うと、この議論は私が不動産投資に参入した6年半前からずっと続いています。「今は高い、入り時ではない」という声は昔からあり、おそらく今後も永遠に議論され続けるでしょう。
仮に、融資の蛇口が完全に締まり、誰も融資を引けない状況になったとします。そのとき、投げ売りされる物件は確かに出てくるでしょう。高値圏にあった物件が、相場より安く市場に出てくる場面もあるかもしれません。
しかし、そのバーゲンセールで川上の情報を掴み、良い物件を買えるのは誰か。すでに不動産投資の世界に足を踏み入れ、金融機関や業者さんと信頼関係を築いてきた人たちです。私や、私が教えている先生方の多くはすでに投資を始めており、金融機関とも業者さんともつながりがあります。市況が崩れたときにこそ、良い物件情報が真っ先に入ってくる状態をつくれているのです。
これは意地悪な話ではなく、売る側の合理性です。危機的な状況で物件を渡した相手が破産したりトラブルになったりすることは、金融機関にとっても業者にとってもリスクです。だからこそ、実績があり、真摯に不動産投資へ向き合ってきた人へ先に情報が渡る。「暴落したら買おう」と外で待っている人の順番は、いつまでも回ってきません。だから私は、参入の時期は正直、本質ではないと考えています。大事なのは、その業界の中にいて、情報が入ってくる状態をあらかじめつくっておくことです。
配偶者を説得できないなら、まだ始めるべきではない
最後に、少し厳しい話をします。「奥さん(配偶者)に反対されて動けない」という相談をよく受けますが、私はこう考えています。配偶者に反対されるくらいの熱意と知識量なら、正直、不動産投資はやめておいたほうがいい。
不動産投資は、数千万円、ときには1億〜2億円という融資を引いて行うものです。良い物件を買えば家族に良い影響をもたらしますが、影響が及ぶこと自体は避けられません。メリットもリスクもリターンも、自分の言葉で説明できないまま——つまり、一番身近で自分を理解してくれている配偶者ひとり納得させられないまま始めて、うまくいくはずがないのです。
逆に言えば、不動産投資は仕組みそのものはシンプルで、きちんとやれば自分だけでなく配偶者やお子さんまで含めて家族を豊かにできる手段です。まずは自分がどう生きたいか、家族としてどうありたいかを話し合い、その手段として不動産投資があるなら、本気度が伝わる形で学び、動くこと。その熱が伝われば、配偶者もきっと納得してくれるはずです。
まとめ:扉が閉まる前に、実績と関係をつくっておく
- 金融庁の監視強化・地銀再編・審査基準の引き上げにより、融資の入口は狭くなりつつある。医師の与信という「特権」も無条件ではなくなっていく
- 銀行の数が減れば相見積もりが効かず、金利・融資年数・融資額の条件悪化を受け入れざるを得なくなる
- 融資額の3〜5%を先払いする手数料付きの融資が広がりつつある。手数料の有無は金融機関によって違う——知らずに払うのはもったいない
- 市況が崩れたとき、良い物件情報が回ってくるのは「すでに業界の中にいる人」。暴落を外で待っていても順番は来ない
- 配偶者に説明し納得してもらえるだけの知識と熱意を持ってから始める。それが家族を巻き込む投資への最低限の礼儀
医師の不動産投資を、正しい順番で学ぶ

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