結論から言います。1億円、表面利回り6.5%の新築アパートは、保有中に年間約100万円のキャッシュフローが出ても、売却まで含めると損失になる可能性があります。
見るべきなのは、購入直後の手残りだけではありません。新築プレミアムがなくなった後の家賃と、その家賃から逆算される売却価格まで計算する必要があります。
私は現役の整形外科医として不動産投資を実践しています。医師は融資を受けやすい一方、1億円という融資枠を収益性の低い物件で使うと、その後の投資にも影響します。今回は、1億円の新築アパートを具体的な条件でシミュレーションします。
1億円の新築アパートを購入した場合の収益
シミュレーションの条件は、物件価格1億円、自己資金1,000万円、借入額9,000万円です。金利は1.6%、返済期間は30年、構造は法定耐用年数22年の木造、保有主体は法人とします。
満室想定賃料は年間650万円です。表面利回りは6.5%になります。平均入居年数は3年とし、入居者募集費用と原状回復費用は、それぞれ家賃1カ月分で計算します。
年間の主な支出は次のとおりです。
- 空室による損失:約34万円
- 管理費:約30万円
- 入居者募集費用:約17万円
- 原状回復費用:約17万円
- ローン元金返済:約235万6,000円
- ローン金利:約142万5,000円
- 固定資産税:約55万円
初年度は仲介手数料や不動産取得税などの初期費用があるため、キャッシュフローはマイナスです。2年目以降は年間約93万〜112万円、平均すると約100万円のプラスになります。
年間100万円が残るなら悪くないと感じるかもしれません。しかし、この計算には年間650万円の家賃を維持するという重要な前提があります。
新築プレミアムがなくなると家賃と売却価格が下がる
新築アパートの募集賃料には、新築プレミアムが含まれます。築年数が進むにつれて家賃は下落し、築20年程度まではその影響を受けやすくなります。
立地が良ければ家賃を維持できる場合もあります。ただし、好立地で表面利回り6.5%の新築物件を取得できるとは限りません。建売りの新築アパートは間取りで差別化しにくく、周辺物件との競争では家賃を下げざるを得ないことがあります。
さらに、建物がある状態で売却する場合、価格は家賃と利回りから逆算されます。築5年、築10年と進めば、買主は新築時より高い利回りを求めます。家賃が下がり、求められる利回りが上がれば、売却価格は二重に押し下げられます。
医師が高額物件を勧められやすい背景は、医師が不動産投資でカモにされる構造でも解説しています。物件価格や新築という言葉ではなく、収益構造で判断することが必要です。
5年後の売却で自己資金はいくら戻るのか
今回の試算では、諸費用を含めて投入する自己資金は約1,500万円です。
5年後も年間家賃650万円を維持し、利回り6.5%で1億円のまま売却できれば、投入した自己資金は1.39倍になります。ただし、これは家賃も売却利回りも新築時と変わらない前提です。
より厳しく、年間家賃が600万円まで下がり、利回り7%で売却するとします。売却価格は約8,500万円です。この場合、自己資金のマルチプルは0.52となり、約1,500万円を投入しても戻る金額はおよそ半分になります。
仮に9,000万円で売却できても、マルチプルは0.85です。投入した自己資金は約85%となり、約220万円の損失が残ります。保有中に毎年キャッシュフローが出ていても、売却損で消える構造です。
融資の使い方については、不動産投資の融資枠1億円をどう使うかも参考になります。目先の自己資金の少なさだけで物件を選んではいけません。
新築アパートで利益を出すための条件
新築そのものが悪いわけではありません。自分で土地を仕入れ、中間マージンを抑え、賃貸需要に合う建物を企画できるなら収益性を高められます。
差別化の例として、ボルダリング設備、ガレージハウス、内装の統一などがあります。事務所利用を可能にする方法も有効です。法人の経費として家賃を支払える入居者には需要があり、住居のみの場合より賃料を1.1倍から1.2倍にできる可能性があります。
一方、完成した建売り物件を低い利回りで購入する場合は、家賃下落と売却価格を厳密に織り込む必要があります。市況が良くなり、1億円で買った物件を1億1,000万円で売れれば利益は出ます。しかし、市況は誰にも正確に読めません。値上がりだけに依存する投資は再現性が低いと判断します。
表面と実質の違いを含めて、表面・実質・ROI・CCRという4つの利回りの使い分けも併せてどうぞ。
まとめ
1億円、利回り6.5%の新築アパートは、2年目以降に年間約100万円のキャッシュフローが見込めます。しかし、家賃が650万円から600万円へ下がり、売却利回りが7%になれば、5年後の売却価格は約8,500万円です。保有中の手残りだけを見て購入を決めてはいけません。
新築プレミアム消失後の家賃、売却時の利回り、戻ってくる自己資金まで計算する。これが1億円規模の新築アパート投資で欠かせない判断基準です。
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よくある質問
1億円・表面利回り6.5%の新築アパートは儲かりますか?
保有中は2年目以降に年間約100万円のキャッシュフローが見込めますが、新築プレミアムの消失で家賃が下がると売却価格も下がるため、売却まで含めると損失になる可能性があります。購入直後の手残りだけでなく、売却時に戻る自己資金まで計算して判断する必要があります。
1億円の新築アパートを5年後に売却すると自己資金はどれくらい戻りますか?
試算では諸費用込みで約1,500万円の自己資金を投入します。家賃650万円と利回り6.5%を維持できれば1.39倍になりますが、家賃が600万円に下がり利回り7%で売却すると価格は約8,500万円となり、戻る金額は投入額の0.52倍と約半分にとどまります。
新築アパート投資で利益を出すにはどんな条件が必要ですか?
自分で土地を仕入れて中間マージンを抑え、賃貸需要に合う建物を企画できることが条件です。ボルダリング設備やガレージハウス、事務所利用の許可などで差別化すれば賃料を高められる可能性があります。建売り物件を低い利回りで買う場合は、家賃下落と売却価格を厳密に織り込む必要があります。
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