「人の行く裏に道あり花の山」——相場の格言ですが、不動産投資ほどこの言葉が刺さる世界もありません。みんなが群がる新築・築浅は価格が上がりきって旨味が薄く、逆にみんなが敬遠する「オンボロ(築古)」にこそ、他人が取りにくい果実が残っています。ただし、その果実を手にできるのは「特定の条件」を満たした人だけです。
不動産投資メンターのDr.いなせです。私は整形外科医として週1勤務を続けながら、現在アパート9棟・戸建て5軒を保有し、年間の家賃収入は3000万円を突破しました。もともとは勤務医としてごく平均的な年収で、莫大な時間を不動産にかけて拡大してきた立場です。今回は、私がよく質問される「築40年・築50年を超えるような古い物件も買っていいのか?」というテーマに、投資家目線で正面から答えます。
なぜ今、新築・築浅は「勝ちにくい」のか
まず前提として、東京・神奈川・千葉・埼玉や大阪・京都といった立地の良いエリアの新築・築浅は、家賃÷価格で見た表面利回りが4〜5%程度まで下がってきています。ここは完全にレッドオーシャンです。背景には、次のような構造的なコスト上昇があります。
- 建築資材の高騰
- 最低賃金の上昇による人件費増
- 内装・建築・土木といった現場職人の深刻な不足(若い担い手が集まらない)
その結果、新築は「作っても採算が合わない」レベルまで来ています。それでも人が殺到するのは、新築・築浅は融資年数が30〜35年と長く取れ、自己資金が少なくても買えるからです。年収がそれほど高くなくても、自己資金が薄くても手が届く——つまり参入障壁が低い。ですが、参入障壁が低い市場で戦うと旨味は薄くなります。私自身、株や別事業も含めていろいろ経験してきましたが、「参入障壁が低いところで戦うと本当にしんどい」というのは痛感してきたところです。
耐用年数切れの築古が「お宝」に変わる条件
一方で、築30〜40年を超えて法定耐用年数を過ぎた古い戸建てやマンションは、自己資金が乏しい人・与信が弱い人には手を出しにくい市場です。だからこそ、参入障壁が高いところに強い信用力で殴り込める人にとっては、勝ち筋になります。
ここで、医師や高属性の方が強い理由が「融資」です。木造の法定耐用年数は22年で、これを超えると銀行の融資年数(返済期間)が短くなりがちです。新築・築浅なら30〜35年組める一方、築が古くなると10〜15年まで縮む、というのが実務の感覚です。返済期間が短いと毎月の返済が重くなり、手残りのキャッシュフローが出にくくなる——これが「高利回りの地方築古なのに融資がつかない・回らない」と言われる正体です。
ところが、医師の与信はここで効いてきます。私は毎月200名以上の医師に不動産を教えていて、皆さんがどんな条件で融資を引けたかという情報が集まってきます。開業医の先生はCTやMRIといった設備投資で1億〜2億円規模の借入をしていて、金融機関との関係がすでに出来上がっている。そこで引いた融資は金利も低く、返済年数も驚くほど長く出ることがあります。勤務医でも、私自身が平均的な勤務医の年収で拡大してきたように、信用力を「差別化できる武器」として使えば、耐用年数切れの物件を有利な条件でお宝に変えられる余地があるのです。
誤解のないように補足すると、これは「地方のボロ戸建てを最初の一歩に」という話とは別です。平均年収くらいの方が最初にやりがちな地方の激安ボロ戸建ては、また別の難しさがあります。あくまで厳格な条件をクリアした築古が、高属性の信用力と組み合わさったときに最強の武器になる、という条件付きの話です。
「古くて安い=高利回り」に飛びつく前に
ここが今回いちばん強調したい注意点です。古くて安くて表面利回りが高いから良い物件、とは限りません。投資家として見落としてはいけない3つの視点を挙げます。
1. 表面利回りと実質(手残り)は別物
家賃÷価格で出る数字はあくまで表面利回りです。ここから、次のような経費を引いた「手残り(キャッシュフロー)」で判断しないと現実を見誤ります。
- 修繕・原状回復・リフォーム費用
- 入居付けの広告料(客付け)
- 固定資産税・都市計画税
- 共用部のランニングコスト
- 所得税・住民税
- そして融資の返済(元利)
表面18%でも、返済期間が短ければ手残りが薄い、ということは普通に起こります。
2. 時間単価で見ると、安い戸建てが最適とは限らない
年収1000万円を超えるドクターが、200〜300万円の築古戸建てに取り組むのは、時間単価の面で必ずしも合理的ではありません。物件を1件買うには、融資審査・リフォームの見積り・現地調査・銀行が開いている平日の決済(有給を取る)など、諸々の時間を捻出する必要があります。そして私の感覚では、この手間は戸建てでもアパートでもほとんど変わらないのです。
やることは同じ——広めの間取り、駐車場、差別化できる内装といった「武器」を作り込むこと。だとすれば、同じ手間なら300万円の戸建てではなく、1000万〜5000万円のアパートから始めるのも十分ありだと私は考えています。差別化できるコンセプトを付けられれば、アパートでも入居は決まり、長く住んでもらえます。
3. レバレッジは「両刃の剣」
融資を引いて買う以上、レバレッジ(てこ)が効きます。たとえば5000万円の物件なら、価格の2割前後にあたる1000万〜2000万円ほどの自己資金を入れて購入するイメージです。良い物件なら利益が莫大に膨らむ一方、変な物件を掴むとマイナスまで倍加し、数百万〜1000万・2000万の赤字になることもあります。効かせ方次第で、良い方向にも悪い方向にも増幅される——ここは本当に注意してください。だからこそ、表面上の知識だけで数千万〜1億・2億という金額を動かすのは危険で、独学ではなく、実際にやっている人・メンターに伴走してもらうことを私は強く推奨します。
私の実例で見る「築古再生」の妙味
数字で語ります。私が実際に保有・運営してきた物件の一部です(誇張なしの実データです)。
- 21万円で買った築40年超の戸建て:再生して月5.3万円・表面利回りは30%超。地方高利回りの実例です。
- 築50年の長屋6戸を1200万円で取得:月18万円・表面利回り18%。古くても、間取りと再生と入居者付けが噛み合えばこの水準は狙えます。
いずれも「古い=ダメ」ではなく、耐用年数切れの物件を、条件を見極めたうえで再生した結果です。ただし前章のとおり、これは表面利回りの数字であり、経費と返済を引いた手残りで最終判断している点は強調しておきます。
2026〜2027のトレンド=築古の「出口」をインバウンドに置く
最後に、今後のトレンドとして注目している築古の活用法を一つ。私は今、都内でインバウンド需要の拡大を見越して、築52年の戸建てをフルリノベーションし、旅館業(インバウンド向け宿泊)として立ち上げています。リフォームには800万円ほどかけました。立地が良く、旅館業・民泊としての需要がある物件なら、通常の賃貸として貸すよりも運営型のほうが収益性は高くなり得ます。これはまさに「耐用年数切れの築古を、別の出口で蘇らせる」発想です。
ただし、良いことばかりではありません。実際に立ち上げてみて痛感したのは、宿泊運営の大変さです。
- リフォームが終わってからが本当のスタート(備品・掲載準備・写真・文言)
- 複数の予約サイトへの掲載と差別化、価格設定の毎日レベルの微調整
- 海外ゲストからのメッセージへの即レス対応
副業として片手間にやるにはかなりハードで、私はスタッフと協力して本気で取り組む体制を作っています。裏を返せば、良い立地の築古を持っているなら、賃貸だけでなく「旅館業・民泊にシフトする」という選択肢を頭の片隅に置いておくことが、これからの築古投資では大事になる、ということです。
まとめ:人の行く裏に、条件付きの花の山
- 新築・築浅は参入障壁が低く、表面利回り4〜5%のレッドオーシャン。旨味は薄い。
- 耐用年数切れの築古は参入障壁が高い。だからこそ、医師・高属性の信用力(融資)を武器にできる人にとって勝ち筋になる。
- ただし「古くて安くて高利回り」に飛びつくのは危険。表面利回りと手残りを区別し、時間単価・レバレッジの両面性まで見て判断する。
- 同じ手間なら、安すぎる戸建てより差別化できるアパートも選択肢。良い立地の築古はインバウンド旅館業という出口も。
- 数千万〜億単位を動かす以上、独学は避け、実践者・メンターの伴走を。
オンボロ不動産は、誰にとってもチャンスなわけではありません。しかし、信用力という武器を持ち、正しい知識で条件を見極められる人にとっては、人が敬遠する裏道の先に確かな花の山があります。数字の表面だけで判断せず、融資・再生・出口までを総合的に設計していきましょう。
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