結論から言います。医師が新築ワンルーム投資を安易に始めてはいけません。失う可能性があるのは、毎月数千円から数万円のお金だけではないからです。長年の勤務実績によって築いた医師としての信用力を、収益性の低い物件に使ってしまいます。
医師は高年収で社会的信用が高く、融資を受けやすい職業です。一方で本業が忙しく、不動産を勉強する時間を確保しにくい傾向があります。そのため、新築ワンルームを販売する業者から狙われます。
私は現役の整形外科医として、2019年に不動産投資を始めました。現在はアパート9棟・戸建て5軒を所有し、年間家賃収入は3,000万円です。毎月200名以上の医師に不動産投資を指南するなかでも、ワンルームを買った後に困っている先生から相談を受けています。
医師が新築ワンルーム投資を勧められる理由
営業電話では「節税になる」「毎月わずかな負担で資産を持てる」「35年後には無借金のマンションが残る」と説明されます。しかし、営業担当者が物件そのものの収益力より、医師の年収や融資の通りやすさを強調しているなら注意が必要です。
新築ワンルームは、土地の持ち分がわずかです。それでも数千万円の融資が出るのは、必ずしも物件の担保価値が高いからではありません。銀行は医師である購入者の返済能力や将来性を評価しています。つまり、物件を買うために使っている最大の資源は自己資金ではなく、医師の信用力です。
その信用力を、業者の利益が乗った低利回りの物件と交換してよいのか。この視点を持たず、融資が出ることを購入理由にしてはいけません。
初年度の所得税還付は利益ではない
新築ワンルーム営業では、所得税の還付が節税効果として示されることがあります。しかし、不動産を買った初年度には、不動産取得税、仲介手数料、司法書士への費用、登録免許税などの諸経費が発生します。
これらの費用によって帳簿上の赤字が生じ、その赤字を所得と相殺した結果、払い過ぎた所得税の一部が戻ることがあります。支出によって生じた赤字の一部が還付されただけであり、還付額そのものが利益になったわけではありません。
節税という言葉だけで判断せず、購入価格、家賃、管理費、修繕費、融資返済、売却価格まで含めて確認する必要があります。見るべきなのは還付額ではなく、保有から売却までの収支です。
新築ワンルームが信用力を消耗させる仕組み
新築ワンルームは、購入直後こそ新築プレミアムを含む家賃で入居が決まることがあります。しかし、退去後も同じ家賃で貸せるとは限りません。周辺に新しい物件が供給されれば、狭くて差別化しにくい間取りは競争力を失い、家賃が下落します。
家賃が下がっても、融資返済や管理費などの負担は残ります。月々のキャッシュフローがマイナスになり、売ろうとしてもローン残高を下回る価格でしか売れない場合があります。
実際に、ある先生は3,500万円で購入した区分マンションを2年後に売却しようとしました。しかし、複数の方法を検討しても査定水準は3,000万円程度でした。保有中は月1万円の持ち出しがあり、売却すれば約500万円の差額が生じる状態です。
さらに区分マンションを複数購入すれば、借入額が積み上がります。その後、本当に購入したい一棟アパートや一棟マンションが見つかっても、銀行から追加融資を受けにくくなります。これが、私が新築ワンルーム投資を信用力の無駄遣いと考える理由です。
すでに購入している場合も、無計画に売る必要はありません。残債、毎月の収支、売却価格を確認し、売却時期と保有期間を決めます。詳しくは不動産投資は出口戦略で決まる|「買う前に売り方を決める」究極の考え方でも解説しています。
医師の信用力は土地付き一棟物件に使う
医師の信用力を使うなら、私は土地付きの一棟アパートや一棟マンションを優先します。区分マンションとは異なり、土地を所有権として持てるからです。利回りの高い物件を適切に選べば、年間で数百万円単位のキャッシュフローを生み出せる可能性もあります。
融資返済が進めば、時間とともに残債が減ります。物件の価値を見極めて買えていれば、残債の減少によって安全性も高まります。ただし、一棟物件なら何でもよいわけではありません。新築一棟アパートでも、業者の利益が大きく乗り、利回りが低く、狭い間取りで差別化できない物件は避けます。
立地、土地、間取り、家賃の下限、入居需要、修繕費、融資条件、出口を総合的に分析します。判断基準については資産価値が下がらない物件とは?医師の不動産投資で「負けない物件」を見極める4つの基準も参考にしてください。
失敗の入り口にある構造については、不動産投資はやめとけと言われる理由と、医師がカモにされる構造で詳しく書いています。
まとめ
新築ワンルーム投資の問題は、毎月の持ち出しや売却損だけではありません。医師が持つ貴重な信用力を消耗し、将来の融資選択肢を狭めることです。
融資が通ることと、買う価値があることは別です。節税額ではなく保有中の収支と出口を確認し、家賃下落後にも成り立つ物件かを判断してください。すでに所有している先生は、現状を数字で把握して売却時期を設計すれば、リカバリーの方法を検討できます。
医師の信用力は強力な武器です。低収益の区分マンションで使い切らず、土地と収益性が残る物件に振り向けるべきです。不動産投資の基本を体系的に学びたい方は、初心者からはじめる医師の不動産投資(Amazon不動産投資部門1位)もご覧ください。
よくある質問
なぜ医師は新築ワンルーム投資を安易に始めてはいけないのですか?
失う可能性があるのは毎月の持ち出しだけでなく、長年の勤務実績で築いた医師としての信用力だからです。収益性の低い物件に信用力を使うと借入額が積み上がり、本当に購入したい一棟物件が見つかっても追加融資を受けにくくなります。
新築ワンルーム投資の初年度の所得税還付は利益になりますか?
利益にはなりません。不動産取得税や登録免許税などの諸経費で帳簿上の赤字が生じ、それを所得と相殺した結果、払い過ぎた所得税の一部が戻るだけです。還付額ではなく、保有から売却までの収支を確認して判断する必要があります。
医師が信用力を使って不動産投資をするなら、どのような物件を選べばよいですか?
土地付きの一棟アパートや一棟マンションが優先されます。土地を所有権として持て、利回りの高い物件を適切に選べば年間数百万円単位のキャッシュフローを生み出せる可能性もあります。ただし立地、家賃の下限、修繕費、出口などを総合的に分析することが必要です。
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