アパート投資は、区分マンションや戸建てと比べて桁が一つ大きい「数千万円」の勝負になります。融資を使ってレバレッジをかけられる分、リターンも大きくなりますが、物件選びを一つ間違えると、その大きさがそのまま損失として跳ね返ってきます。「5,000万円で買った物件が、実質的に無価値になってしまう」——そんなことが本当に起こり得るのが、この世界の怖いところです。
私は現役の整形外科医として週1日勤務を続けながら、2019年から不動産投資を始め、現在はアパート9棟・戸建て5軒、年間の家賃収入はおよそ3,000万円になりました。今は毎月200名以上の医師の方に不動産投資をお伝えする活動もしています。この記事では、私自身が実際にアパートを買い進めてきた経験をもとに、「初めてアパートを買う方が、これだけは絶対に確認してほしい」というポイントを、投資家目線でかみ砕いて解説します。
なぜ「初めてのアパート投資」で失敗が起きるのか
戸建てや区分の失敗は、金額が数百万円で収まることも多く、リカバリーが効きます。ところがアパートは投資額が大きいため、判断ミスがそのまま数千万円規模のダメージになりやすい。だからこそ、感覚や営業トークではなく、チェックすべき点を一つずつ潰していく作業が欠かせません。
今回は、ある不動産会社が「アパートを買うならこの3つを見よ」と挙げていた条件を出発点にしつつ、では医師である私、あるいは私が伴走している受講生ドクターならどう判断するか、という視点で検証していきます。業者がすすめる条件をそのまま鵜呑みにするのではなく、「投資として手元にお金が残るか」で考え直すのがポイントです。
業者がすすめる「3つの条件」を投資家目線で検証する
| 業者がすすめる条件 | いなせの判定 |
|---|---|
| ①バス・トイレ別 | ◎ 賛成。3点ユニットは避ける |
| ②駅から徒歩15分以内 | △ こだわりすぎない。地価と需要で判断 |
| ③20平米以上 | ○ ただし30平米以上を推奨 |
①バス・トイレ別か(これは私も賛成)
いわゆる「3点ユニット」(浴槽・洗面・トイレが一室にまとまったタイプ)は、入居者から敬遠されやすい傾向があります。狭い間取りをたくさん詰め込んだ古いアパートに多く、いくらパネルを貼ってホテル風に見せても、生活の快適さでは分が悪い。日本人は湯船に浸かって疲れを取りたい人が多く、そこが満たされない部屋は暮らしの満足度を下げてしまいます。
私自身も、私がお伝えしている医師の方々も、基本的にはバス・トイレ別の物件しか買っていません。ここは業者の指摘の通りで、素直に「別」を選ぶべきポイントです。
②駅から徒歩15分以内か(ここは条件つきで反対)
「駅徒歩15分以内」という条件については、私は正直そこまでこだわらなくてよいと考えています。近いに越したことはないのですが、そこにこだわりすぎると、紹介される物件がどうしても高くなり、利回りが下がってしまうからです。
私が重視しているのは「立地」ですが、それは駅からの距離ではなく、地価が下がりにくく、需要が長く見込めるエリアかどうかという意味です。50年後・100年後を考えれば駅近の方が有利なのは確かですが、その将来価値を打ち消してしまうほど利回りが低ければ、投資としては意味がありません。
私は利回り10%以上の物件を中心に買い進めてきました。この水準なら、10〜15年ほどで投資資金を回収でき、その後は物件が実質的に「タダで手に入っている」状態に近づきます。一方で、30年後に人口が半減する、あるいはゼロに近づくような限界集落や、区画は整っているのに生活インフラのない「なんとかニュータウン」の外れは、相当な高利回りでない限り私は避けます。大事なのは「駅から近いか」ではなく、「地価が下支えされ、そこに住みたい人が続くか」です。
③20平米以上か(私は30平米以上をすすめる)
業者は「20平米以上」を目安にしていましたが、私の感覚では20平米はやや手狭で、25平米でもまだ物足りません。私がおすすめしているのは30平米以上、できれば35〜40平米以上です。このあたりから1LDK以上の間取りになり、供給が少ない分だけ差別化ができます。
広い部屋は、入居者が「自分の家」のように長く住んでくれます。入居年数が延びれば空室になる回数が減り、これが手残りに直結します。空室は、家賃が入らないだけでなく、原状回復の修繕費や、次の入居者を付けてもらうための広告料といった出費を伴います。回転が速いほど費用がかさむのです。加えて、空室が続くのは精神的にもこたえます。だからこそ、多少古くても広くて間取りに魅力がある物件のほうが、トータルの実質利回りは高くなりやすい、というのが私の考えです。
私が追加で必ず確認する3つのポイント
ここからは、業者の3条件には入っていなかったものの、私が物件を見るときに必ずチェックしている点です。特に最後の「接道」は、初心者が一番だまされやすい落とし穴です。
構造は「RCから入らない」
私は原則としてRC(鉄筋コンクリート造)の物件を避け、受講生の方々にも最初は避けてもらっています。理由は主に2つ。一つは、水漏れや解体にかかる費用が大きいこと。私は「土地を買うイメージ」で物件を選ぶので、いずれ建物を解体する費用まで織り込んで判断します。RCは解体費が高くつくため、その分だけ土地としての妙味が薄れます。
もう一つがエレベーターです。保守点検の費用が継続的にかかるうえ、故障すれば交換に数百万円、規模によってはさらに大きな出費になることもあり、コストが読みにくい。突発的な修繕が起きやすいのがRCの怖さです。慣れてくればRCも選択肢になりますが、最初は軽量鉄骨・木造・重量鉄骨といった、修繕費が比較的読みやすい構造から入ることをおすすめします。
構造は融資の面でも効いてきます。銀行の融資年数は法定耐用年数(税務上の減価償却期間。木造22年、軽量鉄骨19〜27年、重量鉄骨34年、RC47年が目安)を一つの参考にします。耐用年数を超えた築古は、その分だけ融資年数が短くなりやすく、毎月の返済が重くなって手残り(キャッシュフロー)が出にくい——ここを理解しておくと、「高利回りなのに融資が付かない」という現象の理由が見えてきます。
駐車場は「1戸に1台」が理想
地方や郊外では、駐車場の有無が入居の決め手になります。理想は1戸につき1台。立地が多少弱くても、駐車場という差別化ポイントで戦えることは多い。実際、戸建てを買った受講生の先生には、「塀を壊せば駐車スペースを作れませんか」といった形で、どうにか1台を確保できないかを一緒に検討することもあります。募集条件に直結する、地味だけれど大切な項目です。
接道——「1番大事」と言っても過言ではない
物件の前の道は、本当に重要です。建築基準法では、敷地は幅員4m以上の道路に2m以上接していることが原則として求められます(接道義務)。これを満たさないと、建物を壊しても新しく建て直せない「再建築不可」の物件になってしまい、資産価値が大きく毀損します。
ここで初心者が引っかかりやすいのが、物件資料の「約2m接道」という表記です。「約」がついているということは、実測すると2mに足りないケースがあり得るということ。銀行が一度は見逃して融資を出してくれたとしても、いざ売却しようとした出口の段階で、たとえば実測が190cmしかなかった、となれば再建築不可と判断されかねません。そうなると、買い手が付かず、資産価値はゼロに近づいていきます。
もう一つ注意したいのが「私道」です。物件の前の道が、公道ではなく私道(複数の個人が持ち分を分け合って所有している道路)であること自体は問題ありません。ただし、その私道の持ち分を自分が取得できるかは必ず確認してください。持ち分がないと、その道路を使う権利がないことになり、最悪の場合、再建築も解体もできない。裁判で争えば通ることもありますが、費用も時間もかかり、何よりストレスが大きい。避けられるリスクは、最初から避けるに越したことはありません。
こうした細かな点を「ごまかして」売ってくる業者は、残念ながら存在します。知識がないまま、あるいは相談できる相手がいないまま買うと、5,000万円が無価値になる——それが現実に起こり得るのが不動産です。
「表面利回り」と「実質(手残り)」を必ず分けて考える
物件広告に載っている利回りの多くは「表面利回り」(年間家賃 ÷ 物件価格)です。ここから、返済・経費・税金を差し引いた後に手元へ残るお金が「実質利回り(キャッシュフロー)」で、投資家が本当に見るべきはこちらです。差し引かれる主な経費には、次のようなものがあります。
表面利回り
年間家賃 ÷ 物件価格
広告に載る「見た目」の数字
実質(手残り)
家賃 − 返済・経費・税金
投資家が本当に見るべき数字
- ローンの返済(元金+利息)
- 修繕費・原状回復費
- 入居付けの広告料(客付け業者への費用)
- 固定資産税・都市計画税
- 共用部の水道光熱費などのランニングコスト
- 家賃収入にかかる所得税・住民税
だからこそ、私は数字の「見た目」ではなく、「買った後にいくら残るか」で判断します。参考までに、私自身が保有している物件の実例を挙げると——21万円で買った築40年超の戸建てを再生して月5.3万円、利回りは30%超。築50年の長屋6戸を1,200万円で取得して月18万円、利回り18%。築38年のアパート8戸を3,480万円で買って月29万円、利回り10%。地方の築古で高い利回りを取りにいくのは、まさに「表面」ではなく「手残り」で戦うためです。
| 物件 | 取得価格 | 月の家賃 | 表面利回り |
|---|---|---|---|
| 築40年超 戸建て(再生) | 21万円 | 5.3万円 | 30%超 |
| 築50年 長屋6戸 | 1,200万円 | 18万円 | 18% |
| 築38年 アパート8戸 | 3,480万円 | 29万円 | 10% |
もちろん、これらはあくまで私のケースであり、同じ利回りが誰にでも再現できるわけではありません。エリア・構造・間取り・入居者属性、そして出口(売却)の設計まで含めた総合判断が必要です。土地の値が下支えしているか、広さや間取りで差別化できているか——そこまで見て初めて、「買っていい物件か」が決まります。
まとめ:初めてのアパート投資で押さえるチェックリスト
- バス・トイレ別を選ぶ(3点ユニットは敬遠されやすい)
- 駅徒歩15分より、地価が下支えされ需要が続くエリアかを重視する
- 広さは30平米以上を目安に(長く住んでもらい空室を減らす)
- まずはRCを避け、木造・軽量/重量鉄骨など修繕費の読みやすい構造から
- 地方・郊外は駐車場1戸1台を確保できるかを確認
- 接道を最優先でチェック(幅員4m以上に2m以上/「約2m」表記に注意/私道は持ち分を取得できるか)
- 広告の表面利回りに惑わされず、手残りで判断する
アパート投資は、正しく選べば人生の大きな味方になりますが、独学や表面的な知識だけで挑むと、失敗も大きくなります。不動産は、同じものが二つとない「唯一無二」の商品です。だからこそ、物件資料をきちんと読み込み、信頼して相談できる相手を味方につけたうえで進めることを、私は強くおすすめします。
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