この記事の結論
- 不動産投資を節税目的で始めてはいけません。
- 節税を入口にすると、事業性の無視・売却時の税負担・割高購入の3つの罠に。
- 第一目的は利益。節税は収益物件を適切に運営した結果にすぎません。
結論から言います。不動産投資を節税目的で始めてはいけません。
減価償却を使い、不動産所得の会計上の赤字を給与所得と損益通算すれば、所得税や住民税が還付されることはあります。この仕組み自体は事実です。しかし、節税を物件購入の目的にすると、収益性の低い物件や割高な物件をつかみやすくなります。
私は現役の整形外科医として、2019年から不動産投資を始めました。現在はアパート9棟・戸建て5軒を所有し、年間家賃収入は3,000万円です。この実践を通じて断言できるのは、不動産投資の第一目的は利益であり、節税は結果にすぎないということです。
不動産投資で節税できる仕組み
不動産投資の節税で中心になるのが減価償却です。建物の価値が年々減っていくという考え方に基づき、その減少分を会計上の経費として計上します。
減価償却の特徴は、その年に実際の現金支出がなくても経費にできる点です。減価償却などによって不動産所得が会計上の赤字になり、その赤字を給与所得と合算できれば、課税所得が圧縮されます。確定申告後に税金が戻る場合があるため、所得税と住民税の負担が重い医師には魅力的に見えます。
ただし、税金が戻った事実だけを見て、投資が成功したと判断してはいけません。物件そのものが損失を生んでいれば、還付額以上の問題を抱えることになります。
節税目的の不動産投資に潜む3つの罠
1.物件の事業性を無視してしまう
最大の罠は、目的が「利益を出すこと」から「赤字を作ること」に変わる点です。
赤字を増やすことに意識が向くと、利回りが低い、キャッシュフローが出ない、空室リスクが高いといった物件にも手を出しやすくなります。しかし、赤字は利益ではなく損失です。私たちが所有すべきなのは、赤字を作りやすい物件ではなく、継続的に収益を生む物件です。
物件を判断するときは、節税効果より先に利回りを確認します。利回りの基本は不動産投資の利回りとは?4つの種類と計算式・目安で詳しく解説しています。
2.売却時に税負担が生じる
減価償却を計上すると、その分だけ建物の帳簿上の価値は下がります。将来物件を売却した際には、売却価格と低下した帳簿価額との差が売却益と見なされ、譲渡所得税が課される可能性があります。
つまり、保有中に節税できたように見えても、実際には税金を将来へ先送りしている場合があります。所有期間によって譲渡所得の税率は変わりますが、その差だけを理由に物件を買うべきではありません。売却価格、残債、税負担まで含めた出口の設計が必要です。
3.割高な節税物件を買ってしまう
節税効果を前面に出して販売される物件には、業者の利益が大きく上乗せされていることがあります。購入時は節税できても、売却時には市場の適正価格でしか売れません。
その結果、購入価格と売却価格の差による損失に加え、譲渡時の税負担まで生じます。節税額だけを見て契約すると、この二重の負担を見落とします。融資や出口で行き詰まる物件の特徴は、アパート経営で失敗する物件4選も参考にしてください。
医師が優先すべきは節税ではなく利益
正しい順番は明確です。まず、インカムゲインとキャピタルゲインを狙える収益性の高い物件を選びます。そのうえで、減価償却や税務を最適化します。
具体的には、次の観点を先に確認します。
- 家賃収入から経費と融資返済を差し引いてキャッシュフローが残るか
- 立地や人口動向を踏まえて賃貸需要を維持できるか
- 購入価格に対して十分な利回りがあるか
- 売却価格と融資残債を踏まえた出口を描けるか
利益が出る物件を運営すれば、返済が進み、金融機関からの信用も積み上がります。実績によって融資条件が有利になれば、次の物件取得にもつながります。これが不動産賃貸業としての資産形成です。
最初の物件は、自宅から車または電車で1時間以内を目安に探すことも重要です。修繕の前後を確認し、管理会社や業者と関係を築き、良い物件が出たときにすぐ現地へ行けるからです。地方であっても、県内の中心部や地価が上昇傾向にあるエリアなど、立地を細かく判断すれば投資機会はあります。
その典型例を実際の数字で追ったのが不動産投資の節税は嘘か、ワンルームマンションの実例数字で検証した記事です。
まとめ
不動産投資による節税は、収益性の高い物件を適切に運営した結果として得るものです。節税を入口にすると、事業性の無視、売却時の税負担、割高な購入価格という3つの罠にはまります。
利益を生む物件を選び、出口まで設計し、その後に税務を最適化する。この順番を守ることが、医師の不動産投資における最短攻略です。
物件選びと資産形成の考え方は、拙著初心者からはじめる医師の不動産投資(Amazon不動産投資部門1位)でも体系的に解説しています。
よくある質問
不動産投資で本当に税金は安くなるのですか?
減価償却で会計上の赤字を作り、給与所得と合算して所得税・住民税が還付される仕組み自体は事実です。ただし税金が戻った事実だけで投資の成功と判断してはいけません。物件そのものが損失を生んでいれば、還付額以上の問題を抱えます。
節税目的の不動産投資はなぜ失敗しやすいのですか?
3つの罠があるからです。目的が「赤字を作ること」に変わり収益性の低い物件を買ってしまう、減価償却で下がった帳簿価額との差に売却時の税金がかかる、業者の利益が乗った割高な節税物件をつかむ、という流れで損失が重なります。
高収入の医師は物件選びで何を優先すべきですか?
節税より先に利益です。家賃から経費と返済を引いて手元にお金が残るか、賃貸需要を維持できる立地か、十分な利回りがあるか、売却まで含めた出口を描けるかを先に確認し、税務の最適化はその後に行う順番が大切です。
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